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97、スタヴァのお姉ちゃん

悠久先生との話が思ったよりも長引き、部室に行った時には部員が全員解散していた状態であった。

トホホ……。

誰1人も俺を待っていない事実に落ち込みながら、トボトボと学園の外に出て電車に乗り込んだ。


「久し振りだなぁ……」


ラインにはさっき彼女になった五月雨から星子と遊ぶ連絡が入っていたり、星子から五月雨と遊ぶと連絡が入っていたりしていた。

重複している報告だが、どことなく微笑ましい。

他にも三島から島咲さんと遊ぶ連絡と、島咲さんから三島と遊ぶ連絡とこちらも被っている。

ゆりかはバイトに行くなど久し振りの彼女たちとのラインを楽しみながら電車の中をボッチで過ごした。

それから最寄り駅で降りると、なんかこのまま帰っておばさんと顔を合わせるには恥ずかしさがある。

もうワンクッション起きたいものだ。

ちょっとだけ悩むと、コーヒーが飲みたいという欲求が沸いてきた。

さっきのぬるくなったウーロン茶を飲み損ねてカバンに入っていることを思い出したからだ。

そうなると、やはり行き付けの店2つが思い浮かぶ。


サンクチュアリか、スタヴァか……。

考えていくといつでも会えるイケオジなんかより、大学生の童顔姉ちゃんに会いたいなぁという方へ天秤が傾く。

よくよく考えたら、こないだイケオジと会ったばかりだし。


結局、スタヴァへ行く選択肢になってしまう。

そういえば千夏さん……じゃなくてスタヴァの姉ちゃんのシフトって今日だっけ?

最近バイトの子が増えて、スタヴァのシフトが変わりつつあるのでもしかしたら会えないかもしれない。

そんなガッカリなことも視野に入れながらスタヴァの自動ドアが開いた。


「いらっしゃいま……あ!?千夏先輩のストーカー!?」

「いや、全然違うよ」


最近入ったオレンジ色の髪をした大学1年生のバイトの子であるスタヴァのお姉ちゃんからいきなり酷いことを言われてしまう。

最近知り合った子なのだが、この子苦手なんだよね。

恋人である津軽Nと似たオーラのある毒舌な子なのだ。

しかも、津軽Nのようなデレのない子なのだ。

スタヴァの姉ちゃんの高校の後輩でかなり強く千夏さんを慕っているようで、レズ?百合?に片足を突っ込むほどに大好きらしい。

そんなハズレとスタヴァで出会ったのだった。


「ここ最近店に来なかったから死んでたと思ってたのに!また来やがった!」

「客に舐めた口利いてると店長に言い付けますよ?」

「年下が生意気な!サワルナが説教されるか、バイトの時給が下がるか、クビになるかのどれかになるじゃないですか!?」


スタヴァのお姉ちゃんはそう言うと嫌そうな目を向けた。


「とりあえず注文良いですか?」

「サワルナ!」

「触ってない!触ってない!」

「メニュー表に触ってます!サワルナ!」

「面倒だな、もう!注文するよ!」


沢琉奈(さわるな)さんは千夏さんと仲良くしているのが気に食わないらしく、顔を合わせる度に狂犬のように吠える。

スタヴァの姉ちゃんはいないし、来るんじゃなかった……。


「くっ……。千夏先輩が客として来ている日に外来種が来やがった」

「客を外来種呼びした?」

「サワルナ!」


嫌々ながらコーヒーを作り、トレイごと俺に渡す。

それを受け取ると「サワルナ!」と理不尽な文句を言われながら背中を向けたのであった。


「ごゆっくりどうぞー!」と社交辞令を背中に受けながら、どこの席を確保しようかと辺りをキョロキョロしていた時だった。


「…………え?」


片手にアイスコーヒーを手にしながら、目を点にする人物が堂々と4人掛けの席でくつろぐ知人がいた。

見間違いかと思い、1回目を瞑る。

それから再び目を開けると、やはりあの人である。

リロード感覚でまばたきしたが、目の前の景色は一切変わっていなかったのだ。


その知り合いに、話し掛けるかスルーするか。

微妙な間柄の人間だ。

ただ、記憶を失っていた俺にとっては久し振りの相手なので、ちょっとくらい絡みたい方向に天秤が傾いてしまう。

その知人の方向に引っ張られるように足が動いた。


「よぉ、サーヤ」

「あら?愚民じゃない」


相変わらずのピンク色のドリル髪を優雅に揺らすサーヤ。

紅茶の方が絵になるのだが、彼女が飲んでいるのは俺と同じくコーヒーのようだ。


「あら?あなたへの憑きものがなにか落ちたみたいじゃない」

「え?わかる?」

「そう。まるでついさっき静電気が起きて、身体から帯電が抜けたみたいなオーラをしているわ」

「人のオーラを静電気で例えんなよ。安っぽいだろ!?」

「実際、安いじゃない」

「実際安いけど!」


この人を見下したところがまたサーヤらしい。

相変わらずの慣れ親しんだ彼女の態度が懐かしい。


「あれ?サーヤの目の前に飲み物あるけど……」

「っ!?」

「まさか……、1人で2杯飲み……?」

「連れのやつよ。1人でそんなに妾が飲むわけないじゃない」

「え?サーヤの知り合い……?」


このミステリアス風女と話しをする人はどんな人なのか……。

怖いもの見たさでどんな人なのか見てみたい欲はある。

だが、それはサーヤの知り合いに悪いと思い身体の向きを変えた時だった。


「あら?愚民、妾の隣に座るのを許可するわよ」

「え?だって連れがいるんじゃ?」

「4人席でまだ椅子余ってるし?ゲストってことで紹介してあげるわ」

「は?」


こうして圧の強いサーヤの隣に座ることになり、目の前のテーブルにコーヒーを置くことになり椅子に座っていた。

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