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96、明智秀頼の妥協

「ぐっ……。星野先生に醜態を晒すなんて……」

「星野先生以前に、生徒である俺に醜態を晒すのは良いのか?」

「秀頼ってさぁ、実は結構隠れSよね……」


Mっぽいは週1で聞くが、Sっぽいという珍しい指摘を突きつけられる。

師匠の達裄さんが移っただろうか。


「悠久に対してだけだが?」

「好きな子には虐めたくなるタイプでしょ!」

「イラッ」

「舌打ち以上に怖い!?」

「というか、悠久……先生もMでしょ」

「その取って付けたような先生やめてぇぇ!わたくしの秀頼がぁぁぁ」

「知らんよ」

「可愛かったなぁ……。純情ボーイの明智秀頼……」

「…………」


悠久の前だと、何故か豊臣光秀時代の若干悪い性格が浮き彫りになるんだよなぁ……。

記憶を失っていた頃は、わりと明智寄りでも豊臣寄りでもない変な人格・性格で動いていたと思う。


「今日は厄日だわ……。秀頼は記憶を取り戻すし、星野先生の壮大で頼れるキャリアウーマンなイメージ壊されたし……」

「星野先生、微塵も悠久先生を壮大で頼れるキャリアウーマンなイメージ持ってなかったよ」

「マジで!?」

「男の姿がない同年代の女子友感覚でしかあなたを見てないよあの人」


さっきの星野先生の口振りはそんな感じだったと思う。

上司じゃなくて、そもそも人生の後輩みたいな口振りに見えた。


「はぁぁぁ……。男姿がないの心配されてたのね……」

「ドンマイケル」

「なら尚更、秀頼を離すわけにはいかないじゃない!」

「なんで!?あなたが好きなのは達裄さんでしょ!?なんで俺を男と認識しているんですか!?」

「そこにチ……があるから」

「やめろ、マジでお前」


冗談とガチの境目がだんだん無くなってきている。

だんだんとホラー映画の中盤の山場みたいな雰囲気がひしひしと伝わってきている……。


「とりあえず、わたくしはもう秀頼を離したくない!」

「えぇ……」


座っているソファーの隣に座られて断言されてしまう。

そこまで断言されたら、丁重なお断りをしたいのに出来ないじゃないか……。


「お金ならあげるから!こう見えて稼いでいるし、実家がお金持ちなんだから!月10万出す!」

「受け取れるわけないじゃないっすか……」

「足りない!?」

「額が多いんだよ」


5000円くらいなら『まぁ、ええやろ』となるが、10万とか言われると日和る。

仕事ならともかく、そんなよくわからんお金は受け取れない。


「はぁ……。なら妥協しますよ」

「妥協?」

「たまになら悠久先生の家でお手伝いしに通います」

「本当に?」

「毎日は無理ですが…」

「最低週1!」

「わかりました……。最低週1で行きますよ」


永遠ちゃんや三島や島咲さんなど彼女なのに1回も家に行ったことがない子らよりも破格な扱いな気がする。

週1とかだと、タケルの家よりも頻度高い。

それで悠久が満足するならその要求を飲み込む。


「ありがとう秀頼!わたくし、秀頼に依存しちゃう……」

「しっかりしてくださいね。年上相手にボロスカ言うのも体力使うんですから」

「あ!今の秀頼は秀頼っぽい!」

「ずっと秀頼なんですよ」


悠久はこういう言い方が好きなのかな?

そんなに記憶を失っていた頃の俺の喋り方や接し方が好きなのならなるべく意識していこうかな?


「まったく、しっかりしてくださいね!しっかりしたら達裄さんもルアルアさんから悠久先生に目移りするかもしれないですから!」

「いやぁ、それはないかな……。って、ルアルア知ってんの!?」

「本命ですよね。あの人の」

「教え子にそういうこと突きつけられるの凄く辛いんだけど……」

「それは、すいません……」


ルアルアさんの話題はあまり悠久先生の前では出さない方が無難かもしれない。


「んー……。でも、そろそろ10年の片思いに終止符を打とうかなぁって考えててさ……」

「え?あの悠久が?」

「先生が抜けてるわよ」

「く、首を吊らないでくださいね?」

「こらこら、死なないわよ。死ぬつもりならあんたを家に通わせるわけないじゃない」


ごもっともな意見にぐうの音も出ない正論であった。


「ふふっ。今度は達裄さんみたいな完璧なイケメンはやめようかなー。ほどほどなイケメンで、年下男なんて良いわね」

「そうなんですか?」

「お金なんて無くて良いから、わたくしの愚痴を聞いてくれて、分け隔てなく話しかけて、さっと手作り料理作ってくれて、朝に弱いわたくしをしっかり起こしてくれるようなそんな普通の人を夫にしたいわね」

「そうですか。頑張ってください。悠久先生はまだまだ見た目若いんですから」

「本当……。あんたは素敵な男ね」

「え?」

「なんでもないわよ!じゃっ、週1で家に泊まりに来なさいよ。今日は終わり!」


『素敵な男』と言ったのを照れ隠しのようにしながら悠久先生はソファーを立たせる。

顔を赤くしながら学園長室を追い出す。

「し、失礼しましたー!」と最後に声を出すと廊下へ放り出された。


「ん?なんなんだよ一体……」

「出てきたわね明智」

「あ……、星野先生。廊下でなにやってんすか?」

「邪魔が入らないように学園長室の門番をしていたわ。それよりも、教師と生徒の禁断の恋、堪能させていただきました!」

「は?」


担任の先生はわざわざ盗み聞きをしていたようだった……。

それをカミングアウトされると、『素敵な男』発言を担任に聞かれてしまったことによる照れが身体を駆け巡った……。

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