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83、山本大悟の彼女ってどんな子?

「おーい、明智先生!ギフト総合の『ギフト原理』のことについて教えてくださいよぉぉぉぉ!」

「だからギフトの授業の内容なんか知らないって言ってんだろうがっ!」

「ぎゃははははは!よっしゃ、明智!次の中間テストまで記憶障害になっててくれや!」

「ざっけんなよ!不正、やめろ」

「いや、なにも不正なんかないが……」


顔も名前もよく覚えてないクラスメートの奴から勉強が遅れまくっていることに突っ込まれまくる。

この馴れ馴れしい感じは親しかったのだろうと思う。

男子の中で俺の次の出席番号らしい阿波君という奴だと山本とかいうイケメンに昨日紹介されていた人だ。

顔にニキビが多く、ちょっと中学時代の自分を思い出す。

ちなみに女子込みの出席番号だと、俺の次はアリアらしい。


誰だよ、阿波君……。

でもこれくらい馴れ馴れしいなら、よほど俺と仲が良かったのだろう。

何回目になるかわからない申し訳ない気持ちが阿波君にも積もる。

そこへ、阿波君と一緒に俺を弄る斉木君という奴が絡んできた。


「じゃあ、明智先生!数学の因数分解を教えてくださいよぉ!」

「OK。因数分解なら余裕でわかるわ。さぁ、どこ?」

「ど、どこって……。どこがわかんねーかな……」

「あ!何がわかってないかもわかってないってやつか」

「そ、そういうことじゃなくて……。え?因数分解はわかるの?」

「数学は大体わかる」


下手に前世で進学校に通っていたわけではない。

因みに学力は30位内とそこそこ出来たわけである。

学力でモテたかどうかで言えば、お察しである。


「ひぃぃぃ、阿波!こいつ、学年10位内の学力まだ残ってるぞ!」

「わ、忘れるなら中途半端に忘れるなぁ!」

「理不尽かよ、お前ら……」

「この存在が理不尽なのが……」

「明智先生だよなぁ……」


阿波君と斉木君がお互いにため息を吐く。

酷い言われ様だ、と相当舐められているのか、バカにされているのか、呆れられているのか、はたまた全部なのか、色々な彼らの感情がそこにある気がする。

よくわからなくて覚えてない2人だけど、記憶が戻ったら阿波君と斉木君との楽しい思い出があれこれ思い出せるようにがんばるよ。


(誰だよ、こいつら?)


しかし、中の人はまったく彼らのことは知らないらしい。

薄情な奴である。


「まぁ、がんばれや。次の授業はギフト倫理観だ」

「げっ!?」

「ぎゃははははは!ギフトのない世界から来たみたいな奴になったなお前!」


阿波君に笑われながら彼らは席に戻っていった。

地味に阿波君に正解を言い当てられてドキッとする。


「え?秀頼ってギフトのない世界から来たの?」

「そ、そ、そ、そんなまさか……」


その会話を聞いていたらしい、アリア様から突っ込まれる。

盗み聞きとは感心出来ないことである。


「まぁ、あるわけないかそんなの」

「そうそう」

「最近そういうの流行っているんでしょ?トラックに理不尽に轢かれて異世界転生ってやつ。そんな非現実起きるわけないのにね!阿波ったらウケるー」

「そ、ソウダネ……」


なんか根本的に俺の存在を否定された気がする……。

そんな酷い話、ある……?

そのまま固まっていると、休み時間終了のチャイムが鳴る。

ギフト理論感とかいうよくわからない授業の準備をしながら置き勉されていた教科書の準備をしていた。







─────







「ギフトの授業、わけわかんねーよ……」


3連続ギフトの授業に、単純に苦手な化学の授業を終えた昼休み。

俺は燃え尽きていた……。


「明智先生が出来ない姿晒すのギャップあるわぁ」

「あ、山本……」

「そのギャップ、なんか可愛いな」

「え?……ほ、惚れてる?」

「鈍感野郎が勘ぐるなアホ」


「普通の女の彼女いるわ」と軽く頭にチョップをされる。

やっぱり彼女いたのかこのイケメン……、と童貞の恨みの怨念オーラが自然と発生しそうだ。

まぁ、山本も俺同様に彼女がいたってことらしい。

文句は言えない。

今朝、コンビニで買ったパンを取り出しながら山本とやり取りをする。


「山本の彼女ってどんな子?」

「ギャルだよギャル」

「名前は?名前?」

「長谷川雛乃」

「長谷川?あー、知らねぇ!」

「学校違うし、知ってるわけねぇだろ」

「あ、そうなん?」

「記憶あっても知り合いじゃねぇからな」


残念。

山本の彼女を見るためなら、違うクラスに潜入するつもりだったのにとがっかりしながらパンを開けた。


「んじゃ、なんか買ってくっかー」


そうやって手を振りながら、山本は教室を出ていった。

なんでサッカー部のイケメンって彼女持ち率高いんだろ……?

剣道より、サッカーを覚えた方がリア充になれるなら俺もサッカーを覚えたかった……。

心で悔しい涙を流しながら、パンをかじる。

これは中々、やたらしょっぱいジャムパンである……。


「もさもさする……。喉渇いた……」


口の中の水分がパンに持っていかれてしまった。

だが、残念なことに水筒の持参をしているわけもないので飲み物がない状況だった。

コンビニで買っても良かったが、ぬるくなるなら自動販売機の方がマシだろうと考えて今朝は買わなかったのだ。

面倒で時間はかかるが、なんかお茶でも買ってこよう。


自販機のある場所までは迷わずに歩けるようになったので、自信満々でギフトアカデミー内を歩いて行く。


さすがに3日目にもなると、徐々に景色に慣れてしまった学校内。

あ、この辺は島咲葵が十文字タケルと出会った背景に似てる!と気付いたポイントがあった。

聖地巡礼とばかりに心の中で手を添えてお参りをしておく。

それからすぐに自販機の並んだコーナーに着いた。

無難にウーロン茶にしようかと硬貨を財布から取りだそうとした時だ。


「あ!天使ちゃん!」

「っっっ!?あ、明智先輩!?」

「よく会うねー。運命みたいだね!」

「う、うんっ!?運命っ!?」


明智先生じゃなくて、彼女は明智先輩なんだ。

先生に呼び慣れて、違和感が出てしまっていた。

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