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81、佐々木絵美はお姉ちゃん

「むむむむ……」

「どうしたの秀頼君?難しい顔して?」

「あ、佐々木絵美!」

「絵美、ですよ。秀頼君」

「わ、わりぃ……。つい……」


ヨルや悠久先生なんかはもう本名呼びじゃなくても慣れてしまったが、まだそんなに仲良くなってない十文字タケルや佐々木絵美など他の子らにはまだ親しいということに慣れていないので本名呼びになってしまう。

うー……、永遠ちゃんのようなアダナがない大体のキャラクターに対しては本名で呼ぶ癖があるので慣れない自分がいる。


「さ、ほら!」

「な、なにが……?」

「絵美だよ。えーみっ!」


にっこり笑いながら自分を指す栗色の美しい髪をツインテールにした可愛い少女の顔と目を合わせて向き合いボッッッと顔の体温が熱くなる。


こ、こんな可愛い子と付き合っているのかよ俺……!

役得なんて言葉があるが、なんでこんなに尽くすような可愛い子に対して無理矢理犯罪を起こさせたりするのか理解に苦しむ。

こういう可愛い子は明智秀頼みたいな男と関わりを持ってはいけない気がする。

──でも、関わりたい下心もあったりなかったりするジレンマに悩まされる。


「え、絵美……」

「よく出来ましたねー!流石秀頼君ですっ!」

「や、やめろよ……。恥ずかしい……」

「お姉ちゃんだと思ってわたしに甘えてください!」


ふんっ!と鼻息を荒くして、ない胸を張る佐々木絵美ちゃん。

お、お姉ちゃん……?

悠久先生を姉のようとは思えるが、佐々木絵美ちゃんは無理でしょ……。

付き合ってるっぽいし、見た目子供だし……。


「そういうちょっとバカにしている目は変わりませんね」

「えっ!?」

「ちょっと心でディスたでしょ?」

「そ、そんなことは…………」

「ないこともないんでしょ」

「…………」


十文字タケルといい、なんでそんなに俺のことをわかったように心が読めるんだろ……?

明智秀頼の中にいたのは、俺と大差がない奴なのか……?

わからないことが、頭の中でまるで水車のようにくるくるとまわりだす。

ヨルからも谷川咲夜からも、色々と怪しまれていたんだよな……。

津軽円からは、来栖さんと明かされて俺が豊臣君だと言ってくれた。

わからない、それは本当に俺だったのかな……?


「だ、大体なんでえ……、え、絵美がお姉ちゃんなんだよ!」

「うわっ、わたしの名前呼ぶだけで緊張するとか新鮮!かわいーっ!」

「お、男に可愛い言うな……」

「むっふふふ……。なんか、最近は新鮮な秀頼君ばかりで胸がドキドキしちゃう!でも、忘れられて心がキュッっと苦しくもなる!」

「そ、そう……。ご、ごめん……」


ここ数日、まったく記憶に関する進捗がない。

昨日の喫茶店で思い出せた記憶は、どれもこれも変なものばかりであった。


「もう!わたしの方が秀頼君より誕生日が早いからお姉ちゃんなんだよっ!」

「暴論だなそれ……」


そうだっけ……?

佐々木絵美の誕生日祝いイベントなんてゲーム本編にそんな描写が1回もなかったので、意識したことがなかった。


「秀頼君が7月7日!わたしは5月30日!ほら、わたしの方がちょっぴり年上なんだから」

「でも同い年なんでしょ?」

「今は!でもほら、もうすぐ誕生日でしょ!」

「あ、本当だ」


もう5月も中旬。

佐々木絵美の誕生日がもうすぐそこだということに気付かされる。


「どうせ記憶障害なるならゴールデンウィーク前が良かったぁぁぁぁぁ……」

「ダメですよ。そんなことになったら秀頼君と全然遊べなくなるじゃないですか」

「それはそうかもだけどぉ……」


佐々木絵美の誕生日が近いのか。

なにかしてあげたいところだが、どうせだったら記憶を取り戻してから祝ってあげたいものだ。

偽物の俺なんかじゃなく、本物の俺に彼女だって祝われたいはずだ。


「えっ、絵美はさ……。俺と普段、どんな遊びするの?」

「ふふふーっ、内緒」

「え?」


彼女が含みを持たしながら、右手の人差し指だけ伸ばして口元に置く。

しーっと秘密を表すようなジェスチャーを見せてくる。


「な、なんだよそれ!?めっちゃ気になるじゃんか!?」

「えー?気になっちゃう?」

「気になるじゃんよ、そんなの!」


うんうんと10回以上頷いて見せると「今日はやたら食い付きがいいね!」と絵美も嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ触りの先っちょだけ」

「触りの先っちょって……。おいおい……」


微妙になんかエロいな!

先っちょって表現に嫌らしさを見付けてしまった自分にちょっとだけ罪悪感が沸く。


「そうだなー……、どんなことしてるかなー」


ニヤニヤ、ニヤニヤと笑っている。

本能なのか、それとも記憶を失う前の俺が佐々木絵美を熟知していて身体が覚えているからなのかはわからないが、嫌な予感だけはひしひしと伝わってくる。

それを楽しそうに手玉に取る絵美。

……あれ?ちょっと喜んでいる俺がいる。


本当に俺はマゾだったのか?

タケルの言葉が深く突き刺さる。


「よく、夜に秀頼君の部屋に出入りしてたなー」

「…………ファッ!?」

「家、もだけど部屋だよ部屋ぁ!朝にもベッドの中にわたしが居たりね」

「ま、マジか……!?」


お、俺……!

完全に絵美とやってんだろ!

なんてこった!

知らない内に俺の童貞は卒業してしまっていたのだった……。


「もう、しょっちゅう秀頼君の部屋に出入りしてまーす!」

「へ、へぇ……」


しかもやりまくりのようだ……。

どんな人生送っているんだ俺よ……。

やっぱり明智秀頼は明智秀頼であった。

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