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80、十文字タケルの勘繰り

朝の忙しいドタバタがあり、なんとか悠久先生のケツを叩いて(物理)学校に辿り着くことが出来た。

車で通学なんてのはなんて楽なんだと、快適さに慣れていく自分が怖い。


毎朝、歩いて学校に向かっていた苦労はなんだったんだろう……?


そう思わされるほどに、こっちの世界もあっちの世界も車の便利さは偉大だと気付かされる。


「おはようっす、秀頼!」

「あ、おう!おはよ、じゅ……。十文字タケル」

「タケルで良いっての。十文字って名字長いだろ」

「確かに長い」

「漢字3文字だしなぁ……。関は良いよなぁ、名字も名前もなんか漢字1文字ずつだぜ?本名2文字!テストで名前書く作業相当早いな……。俺、5文字書かないといけないのに!」

「大変だな」


十文字タケルなんて、小学1年生くらいで全部習う文字だらけの名前をしていて、何言ってんだろうか?

明智秀頼と同時に書きはじめても、十文字タケルの方が楽な気がする。


どっかズレている主人公・十文字タケルと朝の挨拶をする。

とりあえずゲームで無能だのバカだのと酷評されやすいタケルであるが、多分年相応過ぎるだけな気がしてきた。

ギャルゲー主人公としての性を無理矢理背負わされた、一般学生でしかない。


「んで、どうなんだよ秀頼!?」

「どうとは?」

「わかってるくせによぉ!クラスでは大声で言えねえから小さく言うけどよ」


こそこそと顔を近付けた十文字タケルが「学園長先生とどんな生活してんだよ!」と思春期丸出しな質問を投げ掛けてくる。


「お前は学園長先生と仲良いもんなぁ!この学校の生徒の中では、ヨルの次くらいには先生に大事にされてんだろうがっ!このこのーっ!」

「ないです」

「嘘つけよ、おまえー!な、な?やっぱり学園長先生の家ってでけぇの?」

「でけぇよ」

「すげぇぇぇ!」


悠久先生のファンかなんかなの?

十文字タケルのテンションがやたら高い。

むしろ、十文字タケルの方が悠久先生と仲良しで可愛がられているイメージあるんだけど。

それこそ、姉のような母のようは関係を築いているはずだ。


俺に対しては、可愛がるとかいうよりは悪友に対するソレである。

十文字タケルが俺向けている友達オーラと同じもののように思える。


「女教師と1つ屋根の下。エロくない?」

「エロくない」

「でも、女教師だよ?女教師?お前、そういうの好きでしょ?」

「好きじゃない」


無表情を装いながら、十文字タケルの問いかけを飄々とかわしていく。


「でもお前、女教師の腋がどうこうとか、脚がどうこうとか語るくらい好きじゃん」

「…………好きじゃないけど?」

「嘘だぁ!俺は記憶失って、性格変わっても性癖やフェチって変わらないと思うんだよね」

「変わる変わる。今の俺は仏様だから性欲とかないのよ」

「そんな高校生、嫌だよ。本当は性欲あんだろ?マゾヒストな心が残ってんだろ?」

「マゾヒストナンテコトバ、ボクシラナイ」

「急にカタコトになるなよ」


あ、脚も別に嫌いではない。

特別好きというわけでもないが……。

しかし、なんでこいつはピンポイントで腋なんて単語を!?

まさか、腋フェチに脚フェチだったというのか……?

この俺が……?


「でも、実際にサディストかマゾヒストかと聞かれたら?」

「ダカラボク、サディストモマゾヒストモヨクワカラナイヨ……」

「なーに、カマトトぶってんだよお前っ!女とか大好きなクセにぃぃ!そういう本能的なのは人間変わらないってよく言うぜ!?」

「本能的……」


俺の本能は腋と脚が好きな人物だとでも言うのか……?

当たってはないけど、外れてもいないのがなんかまた無償にむかつく。


「でも黙っていれば完璧な女教師と同じ屋根の下!ムラァァァっと来ないの?」

「や、やめてよ。お、俺はムラァァァとなんか来るわけないじゃないか。女に興味ないんだから……」

「なんで突然そんな小学生みたいにキョドってんだよ!来てるな、これムラァァァっと来てるな!?」

「だ、だから違うよ……。俺なんかが悠久先生にムラっとなんか来るわけないよ」


いけない気分には何回かなったけど、それがムラムラかと言われたらそんなんじゃない。


「わかった、わかった。秀頼には愛しの彼女いるんだし、そういうことにしてやるよ」

「なんで上から言うんだよ」

「たまには俺も秀頼を弄る側になりたいんだよ。普段のお前はよく俺を弄るんだから、たまには立場逆転しようぜ!」

「しようぜ!とかそんな良い笑顔で言われても……」


俺なんかより可愛いヒロインの好感度を独り占めしている主人公の十文字タケルが何言ってんだか……と突っ込みたくなる。


「でも、お前は腋好きだろ」

「だ、だから……。嫌いじゃないよ……」

「じゃあ大好きじゃん!」

「ちがっ、違う!嫌いじゃないんだって!?」

「じゃあ大好きってことじゃん」

「うぅ……」

「隠すなよ、秀頼。お前の女の好みはわかってんだよ。腋に挟まれて、脚で踏まれたいんだよなーっ」

「もういいよ、それで」

「記憶失っても変わらないなお前」

「なんか理不尽だなー、それ」


十文字タケルから事実であるかのようなレッテルを貼られてしまい、複雑な気分にされた朝であった……。


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