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79、明智秀頼の脅迫

朝、悠久先生から借りた目覚ましコレクションの黄色の時計がアラームを鳴らす。

ジリジリジリ、と脳に直接ダメージを与えるような音に精神がやられそうになって目を覚ます。


「うるせぇな……。もっと静かな目覚ましあんだろうが……」


でも、それじゃあ悠久先生じゃ意味ないのか……。

全然寝た気のしない一夜は明けたようだ……。

マジで眠いな……。


悠久先生を寝かし付けて、ちょっとドキドキしていたら目がギンギンになっていた。

スマホのシリに『しょーがくせぇ?ざーこ!』と夜遅くまで馬鹿にされていたので、ロクに寝ていない気がする。


「ふぁぁぁ……。俺は寝起きは悪いんだ……。このまま学校休みたい……」


元の俺はどうだったのかはわからないが、豊臣光秀としての俺は夜型人間であった。

夜更かしギャルゲーをしながら、宮村永遠と十文字タケルのイチャイチャを眺めるのが最高に目の保養で幸せだった。

恥ずかしいながらも自分とタケルを置き換えて、宮村永遠とイチャイチャする妄想に浸っているのも楽しかった……。

脳内再生で宮村永遠から名前で呼ばれる妄想だけでご飯3杯はいけたものだ。

そして、朝の通学時間になって、現実に戻り夢が覚める。


そんなことが当たり前のような日常だった。


「ふわっ……。クソッ、起きるか……」


2度目のあくびを噛み殺しながら、目覚まし時計のスイッチを切る。

悠久先生の目覚ましは全部5分起きにアラームが鳴るモノばかりなので、これも例外ではないようだ。


「まず、最初は悠久先生を起こすか……」


俺だって眠いのに、それ以上に眠い人を起こす作業がはじまる。

それはまるで、老人がそれ以上の年の老人の介護をする老老介護のようではないか。


部屋のドアを開けて、悠久先生の私室へノックする。

「悠久せんせーっ!!」と大声を上げるも、その反応はない。

部屋を数回、拳のようにしながらドアを叩く。

ガンガンと部屋を強くノックする度に俺が拳を痛めているのだが、残念ながらまたもや反応がない。

変わりに複数の目覚まし時計が一気に大合唱をはじめたがシュバババババ!という勢いで一斉に音が鳴り止む。

起きる気はないが、寝る気はあるようだ。


「悠久先生!起きますよ!」


そうやって声をかけて、ドアを開ける。

ほとんど昨日と同じ状況で目覚まし時計に囲まれたベッドの上で悠久先生が眠っていた。


「ほら、悠久先生!朝ですよ!悠久先生っ!?」

「あ、あと5時間……」

「昼じゃないですか!普通そういうの5分でしょ!?」

「じゃあ5分……」

「妥協させるために呼んだわけじゃないんですよ……」


手をパーにさせている辺り、意識はあるようだ。

まぁ、あんなに手際良く目覚ましを消す動きが出来るなら当然か……。


「じゃあ、50分でいいからっ!」

「全然妥協になってないじゃないですな!?なんで10倍になるんですか!?おかしいでしょ!?」

「おかしいのは社会……。今日頭痛い……。休む……」

「起きろー、悠久先生!悠久センコー!近城悠久!悠久!UQモ●イル!」

「今日はUQ使うから……。しゅぴー、しゅぴー」

「学園長って有給あるんですか!?寝息を立てないでくださいよ!」


昨日以上に頑固な悠久先生は起きる気配がない。


「だってさっき起きたもん!」

「知らない、知らない。今起きてくださいよ」


悠久先生の周りに並べられてある目覚まし時計のスイッチを切っていく。

これで今朝はもうアラームは鳴らず、起きざるを得ないはずだ。


「やだやだやだぁ!頭痛いから休むーっ!体調不良!」

「ただの二日酔いでしょ!?」

「未成年は二日酔いになったことないから苦しみがわからないんだぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁ!」

「そ、それを言われると……。それはそうですが……」

「あと、今日生理」

「取って付けたような嘘っぽいカミングアウトですね」

「男は苦しみがわからないんだぁぁぁぁ!」

「わかったから。みっともないのでやめてください……。めっちゃ元気じゃないですか」


最後の1つの目覚まし時計のスイッチを切る。

これで彼女の眠りを覚ますアラームは部屋に鳴らなくなった。

あとは、俺がしっかり悠久先生を起こすだけだ。

こういうのを見越して、昨日よりも早めの時間に悠久先生を起こす行動をしていた。


「良いなー。童貞はなにも痛くならなくて。あー、気持ち悪いなー。女の子の日で死にたいなー」

「怒りのあまり卓上目覚まし時計を全部倒してしまいましたー」

「殺すぞー!」

「俺を殺すんなら起きないといけませんね。じゃあ、はい、俺を殺してください」

「殺されそうになってんのに、なんでそんなに堂々としてるの?」

「よく生徒に向かって殺すとか言えましたね。PTAに告発しますよ?」

「あんたがふざけて卓上目覚まし時計を全部倒したからでしょうが。息を吸うように脅迫してきて、怖いよ君……。こんなに部屋を散らかして……」


悠久先生は飛び起きて、目覚まし時計を元の位置に戻していく。

凄い手際良く元の並び順を再現させていく。


「元の秀頼だったらずっとずっと寝かせてくれただろうに」

「そ、そうですか……。元の秀頼じゃなくてごめんなさい」


そんなに元の俺は悠久先生に甘い人だったのかな?

なんとなく、もっと当たりが強い気がするのは気のせいだろうか……。

知るのが怖い……。

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