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72、近城悠久のタイミング

「なんで電気消すのよ。酒飲みするのに暗い部屋にしないわよ」

「あ、あぁ……。そういうことですか……」


悠久先生の相手って酒飲みの相手か。

てっきり夜の営みとかの話かと思い、焦った……。

流石に教え子とそんな関係持ってるわけないかと冷静になる。


ゲームでも、悠久先生は独身みたいだったな……。

彼女と暮らしていても彼氏の影も形も無さそうだ。


悠久先生のことは信頼しても、明智秀頼については信頼出来ないからな。


「だいたい優しくしてってなんだっての!わたくし、だいたいみんなに優しいわよ。だって、わたくしは壮大な名前の通り悠久に相応しいのだから」

「はー、そうですか」


よっぽど悠久という自分の名前が好きな人のようだ。

キレイな響きで良い名前だと俺も思う。


豊臣光秀とか、明智秀頼とか謎に武将と武将を混ぜたようなやっつけ仕事の名前よりよっぽどセンスのある名前に思う。


「そうですか、酒飲みですか」

「うん」

「…………俺、未成年ですが?」

「知ってるわよ。未成年に酒飲ますの強要させたらクビになるっての。ただ、酒飲むから注ぎなさいってことよ。ほらほら、わざわざあんたのためにコーラ買ってきたんだから付き合いなさい」

「わ、わかりました……」


酒飲ますのは強要したらクビになるのは確かだろう。

だが、酒を注がせるのを強要するのは果たしてクビにならないのか……。

気にはなったが、本人がそれで良いのならセーフラインだろうと思い込むことにする。


「じゃじゃーん!アサイの瓶ビールよ!」

「ずいぶん本格的だな……」

「ほらほら。ジョッキに注いで注いで」

「わかりましたよ……。やりますから栓抜き貸してください」

「そうこなくっちゃ!」


色褪せてもないし、染みなどもない結構真新しい栓抜きを受け取り、瓶のフタに当てる。

テコの原理を使うようにして、すっと力を入れてフタを開ける。

スポッ、という小気味良い音と共にフタがテーブルに落ちていく。


「よく瓶コーラまで用意しましたね」

「近所に安く売ってる店があるのよ。缶コーラとかペットボトルのコーラよりも瓶に入っている方が美味しく感じちゃうのよねー」

「めっちゃわかります!ぬるかったり、炭酸薄く感じるのに、なんか美味しいんすよね」

「あんた、わかってるじゃない!」

「ははっ、そうですね」


俺の両親もよくそう言ってたな。

『瓶の方が美味しいのよー』とよく口にしていて、俺もそれに洗脳……ではなく教育されてしまったのだ。

悠久先生もその口のようだ。


「じゃあジョッキ持ってください悠久先生」

「あー、わりぃね。なんか新入生社員みたいなことさせちゃって。それに、なんか注ぐの強要させたみたいで」

「強要させましたよね?」


自分の都合良く記憶を改竄されているようだが、真面目に突っ込まさせていただく。

あの流れで悠久先生が自分で注ぐことはしなさそうだった。


「それも記憶障害じゃない?」

「あれ?俺の記憶飛びましたかね!?」

「うるさいわねー、あんた……。就職口に困ったら秘書として雇ってあげる」

「窓際族になれるなら喜んで雇われますよ」

「なにをバカ言ってんのよ。仕事は忙しいけど、高給は約束するっての」

「考えておきます」


高給なら全然ありだ。

……しかし、悠久先生は近い将来はタケルやヨルをまとめてギフト狩りに対抗するレジスタンスのトップになる。


無事にギフト狩りの脅威を退けたら、その未来の悠久は何になるのかは一切わからない。

メインキャラクターだが、ヒロインではないので地味に後日談が不明な人物である。


「じゃあ注ぎますね」

「おっとととと……」

「まだそんなに注いでないじゃないですか。背伸びしないでくださいよ」

「言葉キツイなお前……。やりたいんだから良いじゃん」


まだジョッキの4分の1も満たされていないのに溢れそうみたいなことを言うので腕を止めてしまう。

よくドラマのサラリーマンがビールを注がれているところに泡が溢れそうになる時によく言うアレを実際にしたいらしい。

可愛いなこの人。


「ほらほら。続き、続き!」

「もうちょっと我慢してくださいね?泡がジョッキを抜かすかどうかくらいで言うんです」

「OK、OK!さぁ、もう1回やるわよ」


両手で瓶を持ちながらコココココ……と音を立ててビールの液体がジョッキに吸い込まれていく。

それから勢いよく泡が上に上昇していく。


「…………っ!」

「今です!今!」

「……っとととと」

「タイミング逃しましたね……」

「あーっ!チキショー!」

「次はタイミング見図り過ぎなんですよ」

「む、難しいわね。もう1回!」

「まずジョッキの飲んでからにした方が良いですよ」


次注いだところで、すぐに泡が満杯になるだろう。

それはなんかちょっと違う気がする。


「仕方ないわね。じゃあ、秀頼。次はわたくしが注いであげるわ」

「ありがとうございます」


氷入りのコップを差し出すと、瓶ビールよりも一回り小さい瓶に入ったコーラを注がれていく。


「おっとととと……」

「あ、ずるい秀頼!なに成功してんのよ!?」

「悠久先生がヘタクソなんですよ」

「あんたは剣道強いんだから反射神経高くて羨ましいわね!」

「関係あるかな?」


こうして、お互いにビールとコーラが入ったジョッキとコップを手に取ったのだ。

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