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71、近城悠久は誘う

今日も昨日のように、簡単な料理をして悠久先生をもてなした。

彼女的には、お風呂上がってすぐに夕飯の準備がされていることに感動らしく、めちゃくちゃ喜んでくれた。

喜ばれると達成感も強い。

俺も夕飯を食べて、お風呂に上がって昨日と同じ悠久先生の妹さんの部屋へと行く。


「ふーっ……。慣れない生活は疲れるね……」


お風呂でセルフマッサージをこなしたが、正直そんなマッサージで疲れ全部は取れない。


それほどまでに学校の疲労はとても大きい。

ギフトの勉強なんかしても、全然理解出来ない。

ゲームでは1クリック未満のギフトを学ぶ授業描写でも、今の俺にはその1クリック未満の授業をこなす役割がある。

授業に追い付かれないように、黒板の文字をノートにまとめていた。

とりあえず記憶さえ取り戻せば理解出来ているはずだと信じて。


プログラムをかじってすらいない人間に、プログラマーの専門知識なんか理解出来るわけがないように。

俺もまったく同じ苦痛を味わっている。


そのぶん、数学や英語など既存と変わらない授業はまあまあ理解出来ている状態で安心している。


「あー!こう、剣道の素振りしてぇな!」


無意識に竹刀を持ったように左右の手が胸の前にきて、素振りする形になってしまう。

シャドーボクシングならぬ、シャドー素振りである。

せっかく右手も左手も健常なのであれば、夢半ばに終わった剣道をやりたいのも必然である。


「でもなぁ……。悠久先生の家に竹刀なんかねぇしな……」


ありがたいことに、彼女の誠意で『好きにこの部屋使っていいわよ』と妹さんの部屋に泊まっているわけだが、竹刀などあるはずもない。

マンガの趣味も典型的な少女マンガばかりで合わないし、ゲーム機もない。

テレビは面白いものもないし、無駄にスマホでユーチューブを見るくらいしか無くて暇になっていた。


知り合いにラインの返信はしたくても、そこのプライベートを開く真似はしたくなかった。


「あ……」


今もまた知らない人から連絡が入ってきた。

スタヴァの姉ちゃんという謎の人物から、『おーい!』とメッセージを受信した。


「…………」


元の俺、スタヴァの店で働いている店員さんをナンパでもしたんか?

それともなんかの比喩?

なんかのコードネームかなんかか?

学校の知り合いはともかく、こういうよくわかんない人のメッセージはもっと返す気にならない。


『最近店に来ないけど、体調悪いですかー?(´・ω・`)』とメッセージがまた視界に入る。

既読を付けずに、ごめんなさいと心の中で謝っておいた。


き、記憶が戻ったらスタヴァの姉ちゃんさんのことも思い出せると思うから。


「変な知り合いが多すぎるな……」


昨日も『探偵の人(上松えりな)』なる謎の人物からメッセージが入っていた。

せめて『上松えりな(探偵の人)』じゃないの?

自分のスマホながら突っ込みどころ満載である。


「相変わらずラインの通知を見るだけでカロリーの使うスマホだ……。通知は見ないようにしとこ」


通知バーの履歴を一斉に削除しておく。

よし、これでOK。


しかし、すぐにまたスタヴァの姉ちゃんという謎の人物から『寂しいよぉ( 。゜Д゜。)』とラインが送られる。


「…………」


スタヴァの姉ちゃん、俺のこと好きなの?

顔も名前も知らない人物ながら、客観的にそんな結論に行きつく。

顔だけは良いらしいからなこの身体……。


なんか俺自身……、豊臣光秀じゃなくて明智秀頼というギャルゲーのキャラクターとして見られていることにモヤモヤが強い。

内面じゃなくて、外面しか見られていないのでは?という恐怖である……。


「嫌だねぇ……。自分って結構面倒くさい性格なんだな……」


俺が明智秀頼だったら、それはそれで良いじゃないか……。


わかっているのに、このモヤモヤは晴れそうにない。

目を瞑りながら、今日はもう寝ようかとベッドに目を向ける。

疲れて頭がおかしくなっているんだ。

のそのそと立ち上がり、ベッドに入ろうとした時だった。


『秀頼っー!秀頼っ!ちょっと来てー!』

「あん?」


ベッドまで後2歩というところで悠久先生に呼ばれる。

何事っっっ!?

そう思いながら部屋のドアを開けて、悠久先生の声がした場所に向かっていく。


おそらくは夕飯を食べている居間のような部屋にいるとアタリを付けて、早歩きで向かう。

その間も『ひでよりぃぃぃ!』と俺の名前が呼ばれ続ける。


ガチャとドアノブを捻り、名前を呼ばれた部屋を開けた。


「お?来たわね秀頼?」

「なんですか、いきなり?」

「ちょっとわたくしの相手をしなさいな」

「わたくしの相手……?」


悠久の相手をする……?

なんのこと?

そう思うとすぐにわかった。


「あぁ!そういうことですか!」

「そういうことよ」


つまり、夜の相手をしろと。

そ、そういうことか……。

そっか。

俺、ヤリヤリの明智秀頼だもんな……。

まさか、悠久先生と関係があったなんて……。

は、恥ずかしい……。


「で、でも俺そういうの気持ち的にははじめてですよ?ま、まぁ……。やりたくないと言えば嘘になりますが……」

「はじめてとか良いのよ。愛想よーく振る舞ってくれれば!」

「そ、そうなんですね」

「わたくしがリードしてあげますわ」


おんぶに抱っこを許すとばかりにニコニコである。


「じゃあ、まずは……」

「電気を消すんですか!?」

「でんき?」

「へ、部屋の電気を消すんですよね……。や、優しくしてくださいね……」

「何言ってんだ、お前は!?」

「え?」


悠久先生の相手。

つまりセッからはじまる意味なのかと思ったのだが、彼女の反応は噛み合っていないように思える。


あれ?違うの?

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