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64、なんの師匠?

「ヒュー、初対面時にナイフ持って脅すなんて中々バイオレンスだねバイトちゃん!俺だってそんな経験ないぜ」

「や、やめてくださいよ達裄さん……!」

「若いねぇ……。まぁ、ヤンチャはするもんさ」

「達裄さんもマスターもヤンチャしてそうな人生っすもんね……」


ヨルが成人男性2人に弄られて、恥ずかしそうにしていた。

でも、ヨルがナイフを持って脅すというのはゲームのヨル・ヒル像と解釈一致する。

やはりこの世界は脱線の許されない新幹線のように、すべてレールの上を走るように出来ているようだ。


つまり、そのレールの果ては明智秀頼のデッドエンド。

こんなにのんびりとコーヒー飲みながらオムライスを食べている余裕はもしかしたら無いのかもしれない。


「ごちそうさま。美味しかったよ」

「おぅ!とりあえず微妙に記憶が思い出しただけでOKか。やはり味か。こいつの思い出の味をたくさん食べさせたら全部の記憶思い出しそうだな」

「俺、そんなに食いしん坊キャラなの?」

「出されたらなんでも食いそうじゃん」

「まぁ……」


お腹いっぱいになるまでは食べ続けるとは思う。

空になったコーヒーカップと、オムライスの皿を引っ込めてヨルは厨房へ消えていく。


「…………」


というか、まともに注文していないのにちょっとした軽食しただけでコーヒーとオムライス代で1300円が消えたわけだが、俺の財布にいくらお金が入っているのかちょっと開くのが怖い……。

さすがに2000円程度は財布に入っていると信じたい。


「はい。お代わり」

「あ、ありがとうございます……」


マスターが気を効かせて2杯目のエスプレッソを用意してくれた。

これのお代わり代は別なのかな……?

これで1800円……?

恐ろしくなりつつ、彼のご好意を無下にも出来ずにミルクと砂糖を混ぜて味の調整をしていた。


「にしてもなぁ!記憶失ってちょっと大人しくないかお前ぇ?」

「お、大人しいですか俺……?」

「もっと生意気坊主じゃねぇか。な、マスター?」

「そうだね。あとは、人の領域とか簡単に踏み込むのよね」

「ご、ごめんなさい……」

「良いんだよ、良いんだよ。年寄りってのは可愛い子供よりタメ口きいてくれる子供の方としゃべる方が楽しいのよ」

「はぁ……」


イケメンとイケオジの2人に対する普段の接し方がわからないので萎縮する。

みんなして、記憶失う前の俺を求めてきて豊臣光秀としての居場所は無いんだなぁと悲しくなってくる。


「悠久先生にも似たこと言われてました……。そんなに普段と今の俺は違いますかね?」

「悠久先生って……。ずっと悠久呼ばわりしてたじゃないか」

「悠久呼ばわり……?」


やっぱり悠久先生の言い分は間違いなかったようだ……。

なんで学園長先生を呼び捨てる仲なんだよ俺……!


「そういえば秀頼君。家に帰るのかい?」

「家に帰るどころか家の場所知らないです……」

「ここから歩いて15分程度じゃないか……」

「ち、近いな……」


わりとすぐそこに実家があるようだった。

このマスターさんと交流が多かったようだし、近所なのかな?とか思っていたら案の定近所だった……。


「今は……。記憶障害の間だけ悠久先生の自宅に泊めてもらってます……」

「ヒュー、やるぅ!あいつ、朝弱いだろ?」

「弱すぎでしたね……」


イケメンから「ガンバ!」と励ますように言われて背中をトントンと優しく叩かれる。

あ、そういえば『達裄さん』と周りから言われてるこの人が悠久先生や俺をお兄ちゃんと呼ぶ謎の子の口から出た人だとようやく気付く。

へぇー……、この人が悠久先生の思い人か……。

面食いだなあの人。


「えっと……。た、達裄さんで良いんですよね?」

「おう。遠野達裄だ」

「俺と達裄さんってどんな繋がりなんですか?どういった知り合いなんでしょうか?」

「どういった知り合い、とか言われても……。なんだと思うマスター?」

「師匠と弟子なんじゃない?」

「そんな感じ……。あんまりそういうこと言わせんなよ。恥ずかしい……」


照れたように達裄さんが後ろ髪をかいて、誤魔化すようにしてコーヒーを口に運ぶ。

マスターさんもそれが当然のような態度だ。


「し、師匠と弟子ですか……!」


斜め上な人間関係が構築されていて、驚きを隠せない。

佐々木絵美と彼氏・彼女の仲だったと知った時よりも違うベクトルの驚きだ……。

当然ながら、この感じだと達裄さんが師匠のようだ……。


「け、剣道の師匠とか?」

「剣道に限定はしてないが……。第3者のマスターから見て、俺は秀頼になんの師匠をしていると思う?」

「人生の師匠」

「じゃあそれ」

「ファッ!?」


人生の師匠!?

斜め上の表現がマスターさんからの口から出てきて、変な声が口から出た。

しかし、2人共真面目な表情をしていて冗談を言っているようには見えなかった……。


「そ、そういえば俺にも弟子がいたような……」


師匠って呼ぶすっげー美人な子が部活で一緒だったっけ……?


「あー。そういえばみんなにメイド服貸した時会ったな。ゆりかちゃんだっけ?」

「上松さんね。数回しか見たことないけど咲夜と仲良くしている面白い子だよね」

「今度秀頼の弟子ちゃん連れて来いよ。なんか会ってみたいわ」

「は、はぁ……」


ゆりかちゃんと上松さんと呼ばれているが、あの人が上松ゆりかという名前なのかな?

ラインにそんな名前があったような気もしてくる。


髪の長い美人であり、俺の弟子?の子の名前が一致した時だった。

カランコロンと新たに来客を告げるベルが鳴るのであった。

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