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61、五月雨茜はからかわれる

ヨルにバイト先に連れて行くことを誘われて流れで了承してしまう。

面倒だが、自分の記憶を取り戻すために頑張られていると断り辛い。

とりあえず学校出る前にトイレにだけ行かせてもらうことにして、彼女を昇降口に待たせていた。

行き慣れないトイレで用を済まし、手を洗い、ハンカチで手を拭く。

それから待たせているヨルのところへ向かっていた時だった。


「あ……、君は……!」

「あ、明智先輩……」


なにか見ては悪いものを見てしまったかのように赤い目と水色の目をシュンとさせる女の子と出会った。


「君は昨日の天使ちゃん!」

「ちがっ、違いますよ!五月雨です!五月雨茜ですっ!」

「はははっ、可愛い」

「か、からかわないでください……」


白い頬を真っ赤に染めてかなり照れている。

めっちゃ可愛いな、五月雨茜!

ゲームしてる時は、パッとしないイメージだったけど、接してみると小動物のように弱々しい可愛いさがある。

どこはかとなくリスみたいだ。


「あの、ですね!明智先輩!自分は悪人なんですよ!悪人!」

「なるほど。詐欺師が善人を装うのとは逆に悪人を装う善人ということで良いのかな?」

「ちげぇです!モノホンの悪人なんですよ!自分は!」


本物の悪人は自分のことを『モノホンの悪人』なんて言わないと思う。


「あのですねっ!明智先輩は知らないかもしれませんが、自分はギフト所持者を地獄に突き落とす使者『ギフト狩り』の一員なんですよっ!」

「知ってるよ」

「そりゃあまだまだ知名度もないですが…………、知ってるんですか!?」

「まぁ落ち着けって。あ、ガムあるからガム食って落ち着け?な?」

「は、はい。ありがとうございます……」


もはや何を伝えたいのかはよくわからない天使ちゃん……ではなく五月雨茜に、今朝悠久先生からもらった未開封のガムを1粒あげる。

キシリトールなミント味で眠気覚ましとしてもらったものだ。

起きたばっかりの悠久先生本人に食べさせたい代物である。


「これ、めちゃくちゃ美味しいですね!」

「そんな……。ガムをはじめて食べたみたいな反応される方が困るんだけど……」

「自分お金無くて中々ガムとかのお菓子を買えなくて……。久し振りにガムを食べられて感動してます!」

「す、すまん……。正しい反応だったな……」


そういえば五月雨茜は細身なのに、めちゃくちゃ食べるの大好きな自覚なしナチュラル大食いキャラクターだったのを思い出す。

食べている女の子を見るのは可愛いので、これはこれでアリである。

やっぱりヒロインは色眼鏡無しでも、惹かれてしまう。


「じゃあ、また明日なー」

「はい!また明日ですー!」


ガムをくちゃくちゃ噛んでいる五月雨と別れて、ヨルが待つ昇降口玄関に早歩きで向かう。

トイレ行くだけで予想外に時間を使ってしまった……。


「おいしぃぃ……。…………あれ?なんで明智先輩は自分がギフト狩りなのを知ってるの聞き忘れましたよ!?」








─────







「お待たせ、ヨル」

「なげぇよ!もっとそういうのは早めに出しとけや!」

「違うの!違うのっ!小さい方だったの!」

「嘘付け!何分待たせんだよ!」


ヨルを待たせたことにおかんむりらしく、ピリピリしていた。

あと、女の子が出しとけとかやめて……。

さすがヨル、汚い系メインヒロイン……。

躊躇いがないぜ……。


「ちょっとそこで五月雨茜に会ってさ……」

「さみだれあかねぇ?……、五月雨茜!五月雨に会ってんじゃねぇか!そいつをあたしの前に連れて来い!絞めてやる!」

「やめろって。てんっ……、五月雨が可哀想だろ!」

「お前の記憶障害に綺麗事は要らないんだよ!どこだ、あのオッドアイのガキめっ!つーか、昇降口(ここ)で張ってたら絶対会えるじゃん!」

「めっちゃ切れるじゃん。ほら、君のバイトが始まるんでしょ?何時からか知らないけど、早く行かないと」

「ぐっ、そうだ。バイトの時間に遅れると給料が減るじゃねぇか」


なんとか五月雨茜に対してヘイトを溜めているヨルを冷静にさせて、バイト先まで一緒に行くことになる。

学校から近場の駅に行き、電車に乗ったて、それから駅前から少し歩かされた。

その時も五月雨の様子とか色々と尋ねられたが、今回も特に目ぼしいことはなにもなかったようだ。

なんかもう記憶ないままでも不便しない気がしたが、ずっと悠久先生の家にお世話になるのも悪いしなぁ……。

記憶なんか蘇ったって、しょうもない記憶しか出てきなさそう……。

それをヨルに伝えたらケツを蹴られてしまった。

それからすぐにヨルのバイト先であるこじんまりとした喫茶店にたどり着く。


「ほら、見ろ明智!お前が暇さえあるとよく通っていた喫茶店だぞ!」

「こ、ここが……?」

「ここならお前の記憶が蘇ることがあるかも!名前はサンクチュアリだ」

「さ、サンクチュアリ……?」

「な、何か思い出したか明智!?」


確かにその言葉に聞き覚えがあった。


「自分のパネル全部をホーリーパネルにするやつな!懐かしいな!」

「なんの話してんだよ!ゲームの話じゃねぇから!」

「え?違うの?じゃあ、わかんねーや」


ゲームの世界でゲームの話じゃねぇとは……。

「ほら、行くぞ」とヨルにブレザーごと引っ張られてしまい、そのサンクチュアリという店に無理矢理入店させられてしまうのであった……。

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