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57、近城悠久は褒められる

食事を並べたテーブルへ悠久先生と向かい合って座る。

その食事を見ながら「あらぁ!」と黄色い声を出してくれる。


「たまご焼きとチンジャオロース!きちんとサラダもご飯もあるじゃない!」

「簡単な料理ですよ」

「仕事疲れで毎日テキトーに済ませているけど、自分が何も準備しないで食事があるって素敵ね……」

「そんな感動しなくても……」


ご飯なんか今朝から準備していたらしく最初から炊かれていたし、サラダは野菜を切ってサラダチキンを乗せてゴマドレッシングをかけただけ。

チンジャオロースは野菜を切ってクックドォの味を足しただけだし、まともに作ったのはたまご焼き程度である。

よく留守番をしていると1人でなんか作ったりしてたっけ。


「秀頼のこと見直したわ……。料理作れない系男子だと思ってたよ」

「こんなの料理作れない系男子に分類されません?」

「準備出来るだけで料理出来る系男子よ。じゃあ、いただきましょうか。いただきます」

「いただきます」


まずはサラダだけを食べる。

コレステロールを気にする人はサラダだけ最初は食べろなんていうのをずっと実践していた癖が抜けない。


「あ、秀頼仲間だ。わたくしもサラダから最初に食べる派」

「健康に気を遣っているんですね」

「あんたのこと、いけすかないすかした奴だと思ってたけどこういう気の合うところがあるのね」

「なんすか、いけすかないすかした奴って……」

「顔かなー」

「顔か……」


明智秀頼はチンピラの悪人顔だからな……。

やっぱり真っ先にヘイトを買うのは顔だったか……。

サラダを食べ終わった悠久先生は、チンジャオロースに箸を伸ばした。


「あら、美味しいじゃない」

「クックドォのおかげです」

「謙虚ねー。じゃあたまご焼き食べよ」


たまご焼きを口に入れると「ふわふわじゃない!」と絶賛してくれた。

この程度、初心者レベルのものだが喜んでくれるとこちらも嬉しくなる。


「あぁ……。良いわぁ……。仕事終わったら年下男子が食事を用意してくれる生活……」

「年下男子って……。俺、生徒っすよ?」

「学校から1歩でも出ればプライベートよ」


学校の先生が教え子に手を出したニュースとか流れるが、先生が生徒を家に泊まらせることは果たしてセーフなのかどうか……。

考えないことにしよう……。


「ウチの妹もさ、戸籍上の娘もさ料理上手なのに家に居ないのよ!もう、みんなしてわたくしを嫌うんだから!」

「別にヨルは悠久先生を嫌っているわけではないと思うよ……」

「妹のフォローはしないんだ?」

「記憶ない俺に何を求めるんですか?」


ヨルは悠久先生を親というよりは、慣れた先生として見ている節がある。

原作のゲームや、さっきのヨルとの会話でそう思ったというだけだが。


「それだったら悠久先生も結婚したら良いじゃないですか?」

「結婚ねー……。秀頼ったら親みたい」

「親みたいって……」

「相手がいないのよ!惨めな28歳を笑いなさい!結婚してないのに、戸籍に娘いるのよ!?」

「お願いですからやめてください……」

「本命は別に彼女いるしさぁ……!その本命1人に対して指ではもう数えられないくらいに告白しては爆発して振られてるのよ……。わたくしには何も残ってないの……。毎月使いきれないほどのお金が貯まるだけ……」


なにか地雷を踏んだらしく、悠久先生の嘆きがはじまった。

聞いているだけで釣られ同情してしまい、ウーロン茶をちびちび飲んでいく。


「あーあ……。秀頼みたいな年下の彼氏欲しい……。専業主夫で良いからわたくしを労ってくれる夫が欲しい!」

「お、俺はまだ高校生ですよ!?」

「わたくしが30歳なら秀頼は20歳前後。ちょうど良い離れ具合じゃない?」

「え?俺が悠久先生もらうんですか?」

「そういうのもありかなぁ……。達裄さん相手にはドキドキしちゃうけど、夫婦になったらもっと依存しちゃうしー。その点、秀頼なら依存しないだろうしちょうど良いかも」

「目が本気過ぎて怖い……」

「ジョーダン、ジョーダン」

「本当ですか?」


「この秀頼からかうのおもろーい」とけらけら笑いだす悠久先生。

本当に女慣れしてないんだからからかうのはやめて欲しかった……。


「悠久先生は美人なんだから自信持ってくださいよ。記憶があやふやな俺にこんなに良くしてくれる人がモテないわけないんですから……」

「あら?わたくしのこと、美人なんて言ってくれるんだ?」

「美人だし、素敵でしたよ」

「はぇっ!?」

「あとはとてもキレイです」

「っ……!?」


さっきのブラ1枚の時にちらっと見えた悠久先生の腋は凄かった。

月並みな感想しか出ないが、無駄な毛もきちんと剃られているのか肌色一色で息子も反応したものである。


「も、もう!秀頼ったらぁ!知り合いフィルター抜いたわたくしをどれだけ褒めるのよぉ!いくら褒めても内申点も成績も上げないわよ!わたくしの評価は誰より公平なんだからねっ!」

「ふふっ。期待してませんよ。心からの感想ですから」

「なんだよ、お前!褒め上手かよっ!」

「上手、なんですかね?」


盛り上げ上手とはよく言われていたが、褒め上手とは言われたことなかったな……。

でも、悠久先生が楽しそうで良かった。


「じゃあ、皿洗いもしますか」

「良いよ、良いよ。それくらいはわたくしがしますわ!秀頼はお風呂でも入ってきなさい。ここまでさせたら客がどっちかわからないでしょ」

「客だなんて……。そんな恩ばっかり受けてるのに……」

「良い子過ぎるよ、君は!ほら、片付けはしてあげるから!」

「わ、わかりました!」

「着替えについては後で置いとくから。うん、達裄さんの男ものの服があったはず」

「あ、ありがとうございます」

「洗濯するシャツやパンツも一緒にしてあげるから」


また名前が出た達裄さん。

な、何者なんだろうかその人……?

作詞家なのかな?


「パンツはさすがにねぇ……。仕方ない。わたくしが後からコンビニに行くか」

「じ、自分で行きますよ。なんだったらお風呂前にコンビニ行きますから!」


悠久先生にパンツを選んでもらうのも恥ずかしい思春期。


「そっか。ならパンツ代あげる。レシートとおつりをちゃんと渡しなさいよ」

「は、はい」

「コンビニはここから南に歩くとすぐあるから。ほら、行ってきなさい」


悠久先生から色々と背中を押されていく。

ささっとジョギング変わりにコンビニに行って、お風呂に入るなど騒がしい夜になる。

なんか不思議な気分になりながら、ドライヤーで髪を乾かしていたのである。

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