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54、明智秀頼は礼儀正しい

「明智の記憶がこんなに飛んでると親御さんがビックリしちまうだろ?」

「まぁ、そりゃあ驚くでしょうね……。わたくしだって驚いているんだから……」


親御さんがビックリするなんて単語、なんかゲームのグラフィックに対するコメントであったよなぁと真面目な話をしているヨルと学園長先生の横で関係ないことに気付いてしまった。

記憶がごちゃごちゃしている当人は俺なのに、周りの方が焦っていて逆に自分は冷静になっていた。


「おい、悠久!記憶を操作するギフトの持ち主はこの学園に居ないのかよ!お前のギフトで該当する奴見付けられないのか!?」

「去年の卒業生に記憶に関するギフト能力者が1人いたけど彼女は進学したから関係ないはずだし……。別に今の在学生で記憶を操作出来るのは……。…………秀頼?」

「確かに!」

「え?俺?」


学園長先生のギフトって『人を視界に入れるとどんなギフトがわかる』みたいな能力だったはずだ。

その彼女から真っ先に俺の名前を挙げられれば驚きはする。

まぁ、確かに『命令支配』ならやりかねないが……。


「あとは、深森美月さんのギフトでもどうにかなりそうだけど発動条件が厳しいし……。あとは『人の好感度を自由自在に操れる』ギフトの五月雨茜さんなんかは記憶を弄ることも可能なのかも……」

「五月雨……?あぁ、あの新入生か」

「そういえば同じ部活だったわね。なんかわかるのヨルちゃん?」

「そういえばあいつ、さっき部室に不在だったな……。それに五月雨はギフト狩りだったはずだ」


五月雨?

五月雨茜のことだろうか?

先ほど出会ったあの天使ちゃんって、やっぱり五月雨茜本人で間違いないのだろうか?


「なんでヨルちゃんがギフト狩りのメンバーとか知ってるの?ソースは?」

「ゆりかと一緒に『歩くカタストロフ』の討伐しに行った時に実際会ったからな。ギフト狩りをしている五月雨にな!」

「歩く……なんですって?」

「『歩くカタストロフ』だっての」

「真顔で言われてもわからないわよ」


実際にギフト狩りだからなぁ……。

口出しすると面倒なことになりそうだと思い、俺はわざと口を挟まずに傍観者でいることにした。

因みに、『歩くカタストロフ』ってなんだ?

字面のインパクトが凄くて、ヨルの会話が頭に入ってこない。

俺も来栖さんと同じで横文字NGなのかもしれない……。


「まぁ、後で五月雨に聞き出してみるしかないか……」

「あと、勝手にわたくしのギフトを広めたりしないでね?わたくしの壮大なギフトはトップシークレットなんだから」

「わーってるよ」


うわぁ……。

学園長先生相手に結構遠慮なしにヨルは会話出来てて凄いなぁ。

まるで親友かなんかにしか見えない。

一生徒の俺は(そもそも生徒の自覚が薄いが……)、『先生相手にそんなにタメ口聞いて大丈夫?』と不安になる。


「といっても五月雨さんが簡単に口を割るとは思えないけどね……」

「そん時は拷問があるじゃないか」

「やめなさい。絶対やめなさい」

「ちぇー……」


こわっ……。

拷問ナイフ女のメインヒロインは悪い顔をしていた。

本気でヨル・ヒルは宮村永遠ルートだと佐々木絵美にマジモンの拷問を仕掛けるからシャレにならない。


「ま、じょーだんよじょーだん。よっぽど性根が腐った外道なクズ相手にしか拷問なんかしねぇての」


つまり、宮村永遠ルートの佐々木絵美は性根が腐った外道なクズ相手だったということが判明したようだ。

俺の記憶が戻った瞬間、この女から拷問されないか不安になってきた……。


「はぁ……。では、秀頼については今日はわたくしが引き取ります」

「え?俺は学園長先生の自宅に連れて行くんですか?」

「仕方ないけど、そういうこと……。生徒にそういうギフト絡みでイレギュラーなことが起きれば手助けしなくてはいけない義務があるんだから。男子寮という選択肢もあるんだけど、部屋がないのよね……」

「で、でも学園長先生の家なんて……。俺、男ですし……」

「うわっ、こいつ悠久を女として見てるぞ……」

「そりゃあ見るよ!?」


ヨルからジト目でぼそっと呟かれる。

いやいやいや、年の差はあれど気にするってそんなの……。


「大丈夫よ。わたくしは秀頼を男として見てないから」

「そ、そうですか……」


学園長先生がそれで良いのなら良いのだけれど……。

な、なんか緊張する……。


「言い訳としては絵美に『タケルの家に泊まるって家族言っといて』という感じで伝言してもらうことでどうだ?」

「そうね。そんな感じで」


トントン拍子でヨルと学園長先生で取り決めを考えていく。

本当に十文字タケルの家に泊まった方が良い気もするが、よくよく考えれば妹の理沙がいるんだったな……。

俺がシスコンの十文字タケルから、十文字理沙に明智秀頼なんか近付けたくないって考えるという当たり前なことに納得したのだった。


色々と打ち合わせを終えたヨルは「とりあえずみんなに記憶障害があるって伝えとくからー」と言い残して学園長室から出て行ってしまった。

ヨルが立ち去ると、学園長先生と2人っきりになり、改めて言葉をかけた。


「すいません、学園長先生……。今日はよろしくお願いいたします」

「あらあら。ずいぶん礼儀正しくなっちゃってやりにくいわね……」

「す、すいません……。そ、そんなに俺って普段の礼儀ないですか?」

「皆無ね。わたくしを舐め腐ってるし」

「も、申し訳ありません!」

「気にしちゃいないわよ……」


あ、悪魔の明智秀頼ぃぃぃ!

お前は学園君先生にどんな態度取ってたんだよ!?

記憶を思い出すことが怖くなってしまうことが1つ増えてしまった……。

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