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51、ヨル・ヒルの圧

この奇妙な部室は一体なんなんだろう……?

流されるままの状況が続く中、誰にも頼れない不安に焦燥感が刈られていく。

みんな悪い人ではないんだろうけど、俺自身が悪い人だから安易に頼るのもそれはそれで彼女らを不幸にさせてしまいそうで動けない。

みんながざわざわと俺を見つめてくる中、終始無言だった女が立ち上がる。


「おい、明智」

「え?あ、はい……。か、カツアゲですか?」

「あたしがお前にするわけねぇだろ。バカかお前?」

「はい。ごめんなさい……。バカかもしれません……」


特に明智秀頼のことを親の仇の如く嫌っているヨル・ヒルはネズミを捕まえる猫のように鋭い目付きだ。

間接的とはいえ、彼女の不幸な過去(未来?)の遠因に明智秀頼があるわけだからそりゃあ俺に対して当たりが強いよね……。

どんなルートでも、秀頼を悪人として『命令支配』のメタ役としても立ちはだかる俺にとっては最大最悪のヒロインといっても過言ではない。


「あー!もう!本当に今日のお前は体調悪そうだな!来い、保健室連れて行く!」

「あ、ちょっとヨル!?」

「わりぃな美鈴。お前は部活を続けてくれ」


抱き付いていた美鈴から俺を引き剥がすようにして、俺の腕を強引に掴み出す。


「え?お、俺をどこに連れて行くの……?」

「だからぁ!保健室だって言ってんだろうがっ!」

「は、はいぃぃぃ!」


これが保健室に連れて行く人間の圧なのか……。

恐怖で支配するジャイアニズムなスケバン女にしか見えなかった……。


「んじゃあ、タケルや絵美たちは部活続けてくれー」

「あ、待ってヨル!?私も着いていく!」

「円か……。まぁ、1人くらいはもしかしたら人手が必要になるかもだからな」


津軽円が俺とヨルに同行者として名乗り出る。

それに対して宮村永遠が「えー?ズルいですよぉ!」と抗議の声を出している。

深森姉妹も彼女の抗議に賛成なのか、無言で同調している。


「…………?」


そもそも深森美月と美鈴って最悪に仲が悪い双子だったんじゃなかったか?

仲良く部活する仲じゃねぇだろ……?

わからん。

なにもかもがわからん……。

なんなら『悲しみの連鎖を断ち切り』の世界なのかすら自信が無くなってくる。


「早い者勝ちってやつだよ。てか、お前らいつもあたしを出し抜くじゃねぇか!」

「ぐぬぬぬ……」

「確かにね。いつも私たちの知らないところで色々ヤってんでしょ」


ヨルと円が3人たちへ何か言っている。

いや、3人以外の他の人たちへの牽制でもしているのか……?

そもそもなんで宮村永遠や深森姉妹が付いて行きたがるんだ?

部活サボりたいんかな?

体育で怪我人が出た時、サボりたいから保健室に同行しますみたいなアレの感覚なんだろうね。


「よし、行くぞ明智」

「え?」

「行ってくるわねー」


円がそう言うとガラッとドアを閉めた。

そのまま、ヨルに連行されるようにして廊下を歩かされる。


「おい、何があった明智?」

「え?」

「もしかしてお前……。何があったのかすらわからないのか?」

「じょ、状況がわからないって意味では……」

「まさか、記憶を弄られたか?」

「え?記憶?」

「どういうことよヨル!?」


記憶を弄られた?

ヨルの推理らしき呟きにイマイチピンと来ていなかったが、それを聞いた津軽円がヨル問い詰めるように彼女に言葉を投げ掛けた。


「もしかしたらこいつ、なんらかのギフトの効果がかかってるかも……。予想としては記憶操作系か?」

「ギフトですって!?」

「ギフトぉ?」


え?

ギフトがある世界なのココ!?

当たり前のようにヨルと円がギフトが存在するのを前提に会話している。

マジで『悲しみの連鎖を断ち切り』世界の認識なのかな……?

それで十文字タケルやヨル・ヒルはゲームの世界って気付いていない……ような気がする。

やっぱり明智秀頼に憑依してしまったようで間違いはないようだ。


「ギフトだったらヨルの『アンチギフト』でどうにかならないの!?」

「何回か明智に触っているんだがな……。効果が出ない……。ギフトの力が強力なんだな」

「『アンチギフト』ってムラあり過ぎでしょ!仕事する時はぶっ壊れみたいに働くのにこういう時って働かないわよね……」

「この働く時は働く性能なのがタケル本人みたいだよな。……ん?おい、円?なんでお前が『アンチギフト』を知ってる?」

「え?…………あ!?」


津軽円が隠し事がバレたみたいにハッとしている。

なんかこのポンコツ具合が来栖さんみたいで可愛い……。

キッツい性格の津軽円が来栖さんと似てるなんてゲームプレイ時には今まで1回も思ったことないのに不思議だ……。


「お前も明智と同じなにか秘密があるな……」

「ギクッ!?あ、明智君に秘密なんかあるわけないじゃないの!」

「あいつ、自分から秘密あるの認めてたぞ」

「あの子はホウレンソウ(報告・連絡・相談)が滅茶苦茶なのっ!いつもいつもいっっっっっつも自分1人で考え込む馬鹿野郎なのっ!」


ジトッとこちらを責めるように恨めしそうに睨み付ける津軽円。

あまりにも不憫過ぎて泣きそうになっているのかもしれない。


「ご、ごめんなさい……。なんのことかわからないけど……」

「じゃあ言葉の意味をわかったら考え直して」

「う、うん……」


果たして、そんな日が来るのだろうか……?

それにしても、明智が俺だとして(慣れねえなぁ……)秘密ってなんだろう……?


「ほら、ここが保健室だ」と部室を飛び出して5分くらい歩かされたところに保健室とプレートが書かれた教室へと案内されたのであった。

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