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49、明智秀頼は孤独

時間が止まりそうなくらいの衝撃だった。

十文字タケルをゲーム媒体、アニメ媒体と見てきたが、何故か彼本人が本物だとすっと理解出来てしまう。

散々無能だのなんだのとツイッターやら掲示板でネタにしてきたが、なんやかんや愛しているから弄ってきたところがある。

キ●肉マンビ●グボディとかヤ●チャとか嫌いだからでなく、大好きだからこそネタキャラを弄りまくるファンのアレである。


それこそ、憧れのあの人と出会えたような感動さえ覚えてしまう。

…………が、それ以上に俺が秀頼?

なんで俺がタケルから秀頼と呼ばれているのか。

『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズから連想出来る秀頼なんてそれこそ明智秀頼しかいない。

本名である豊臣光秀な俺は最初こそシンパシーを覚えたものだが、やることなすこと全部がクズ・ゲス過ぎて顔を見るのすら嫌になったあいつだと言うのか……。


「か、鏡貸してくれないかな?」

「鏡?理沙、手鏡ない?」

「はい、どうぞ明智君」

「あ、ありがとう」

「いえいえ。明智君の役に立てて嬉しいです」


十文字タケルといったら、その実妹の十文字理沙も忘れてはならない。

黒髪美人で中性的なタケルをより女らしくした整った顔の女性が微笑みながら赤い手鏡を貸してくれた。

キ●ィちゃんのデザインの可愛らしい手鏡で自分の顔を覗くとハッとした。


「…………」


明智秀頼の厳つい顔が写し出されていたのだから。

キ●ィちゃんと明智秀頼というサ●リオもぶちギレ案件のコラボだとか馬鹿みたいなことを考えて現実逃避してしまう。

国民的愛されメーカーサ●リオと、ギャルゲーメーカーのスカイブルーのコラボとか見てみたいけど、絶対に叶わない組み合わせ過ぎた……。


「さ、さっきからどうしたの秀頼君……?」

「え?」

「変だよ?」


栗色の髪を短めのツインテールにして、左目の下に黒子のある女性は不安げにこちらを見つめていた。

えっと……、彼女は誰だっけ?

見覚えのあるヒロインみたいな可愛い容姿から、モブ以上に活躍がないキャラクターだったはず……。

秀頼に殺される…………佐々木絵美だっけ?

朧気な記憶しかないが、宮村永遠ルートを回想してなんとなくそれっぽい名前を検索させた。


「へ、変?お、俺は変なのか?」

「別に秀頼君が変じゃなくて、態度が変だよ……?」

「た、態度?」


明智秀頼らしくオラオラした態度にしろってことか?

普段の明智秀頼は一体どんな態度なんだよ。

わからないことだらけである。

確かクラスだとちょっと口が悪い下ネタ好きの猫被りで、夜になると女を道具としてしか見ていないゲス野郎しかイメージがない。

『舐めてると這いつくばらせてぐちゃぐちゃに犯してやるぞ』とか発言するイメージである。

というか、日常パートで津軽円に対してそんな秀頼の発言あったけな……。

そういう悪ぶった口調が正解なのかな……。


「な、舐めてると……その……。は、はい…………つく……」

「え?」

「いや、なんでもない……」


恥ずかし過ぎて真顔でそんなこと言えないよ……。

どうせ明智秀頼に憑依するならせめてここに至る仮定は記憶に残せよ馬鹿野郎がっ!


「なんかごもごも言って秀頼君らしくないなぁ……。普段の君はもっと堂々としてるでしょ!」

「あ、あぁ!」

「胸を張って!」

「はい!」


絵美ちゃん?の胸無いねと感想がポワーンと浮かんだが口には出さないようにする。

下ネタ大好きなオリジナル明智秀頼なら笑ってからかいながら指摘しそうだが、人のコンプレックスを刺激するなんて出来ない。


「なんか目で馬鹿にしてるよね」

「え?そ、そんなことないよ!?」

「秀頼君、そういうとこあるからなぁ」


お、俺自身が明智秀頼だと思われているのもそれはそれで癪である。

複雑なんて言葉では済まされない複雑さがある……。


「…………」


あれ?

そもそも絵美ってこんなキャラだっけ?

秀頼の恋人ではあるが、彼に口出しせず2本後ろを歩くような性格だったはずだ。

顔色を伺うような目を向ける対象の秀頼にこんな虐めるような言葉を放つキャラだったかな?

特段ファンでもなんでもない絵美ではあるが、それでもそんな違和感を抱くくらいにはゲームとの性格がだいぶ変わっている気がする。

今の方がイキイキしていて可愛いと思う。


それにしてもそっか……。

絵美はギフトで操られているとはいえ、俺の恋人ということになるのか。

毎晩のように絵美をめちゃくちゃぐしゃぐしゃに犯す生活をしているなんて語られていたな……。

こんな人の良さそうな子が夜に秀頼からオモチャにされているとかめっちゃエロいんだが……。

いや、でも演技とはいえ俺にそんな犯す度胸はない。

とりあえず、なんかボロを出さないように取り繕うのが精一杯だった。


「絵美だよね?」

「うん!わたしは秀頼きゅんの絵美だよ!」

「お、俺の……!?恋人としてってことだよね?」

「当たり前じゃん!」


俺の情報はどうやら間違っていないらしい。

俺と絵美は付き合っている。

ギフトに操られている関係なんだろうが、絵美はそう信じているらしい。

来栖さんと付き合っていたのか、付き合う前だったのかは微妙な関係だが、恋人と呼べる相手がはじめて出来た俺は照れずにはいられなかった。


いや、こんな思い出も絆もない彼女はおかしいじゃないか!

絵美をいつの間にか自分の女扱いしている自分に気付き、自己嫌悪する……。

来栖さぁん……、どうせなら君と恋人になりたかったよぉ……。



──自分が死んで明智秀頼に憑依してしまった新しい人生は孤独でしかなかった……。

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