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46、岬麻衣の体当たり

「マジでここはどこなんだ?俺の通ってる学校より数倍新しいしなんか慣れねぇな……」


自分の通う学校の校舎は築50年ほどのボロボロ旧式で最悪の環境だったが、この学校は壁も真新しく築20年前後……、もしかしたら10年以内くらいでは?と推察出来る。

知らない女子高生先輩?が集まった教室から逃げ出してから、あてもなく廊下らしきところをうろついていた。

知っている顔があれば声をかけたいのだが、すれ違う人がみんな知らない顔ぶれだらけで不安感が凄い。


「…………」


俺、間違えて違う学校に来ちゃったかなぁ……。

だとしたらすげぇださい……。

来栖さんや吉田とか誰か知人は居ないのか?

なんだったら徳川部長がその辺を歩いているだけでも心強いんだけど……。

普段は俺に対してあたりが強い人だけど、ジャイアンに取り巻くのび太の如く彼の力の威光が壁になってくれるはずだ。


「もう外に出てみよっかな……」


もしかしたら近所の学校にいるかもしれない。

ここに来てしまった過程の記憶がごっそり抜け落ちてしまっているわけだが、何を思って自分はここにいるのか。


「あれ……?」


でも、不思議と感覚的には歩き慣れている気がする。

学校をどのように歩けばどんな風景になるのか、ある程度イメージ出来てしまっていた。

記憶でははじめての場所なのに、感覚は覚えている違和感。

なんかそんなアニメを見たことあるかも……。


「もしかしたら俺、記憶喪失だったりしてな!それウケるやん!」


記憶喪失の殺し屋主人公が『この手が動きを覚えている』とか言いながら銃を扱い慣れた手でバンバン撃ち殺していたアニメを視聴したことがあった。

俺が殺し屋をしているとは到底思えないが、まさにそんなアニメの主人公の気持ちを理解してしまった気がする。


「まぁ、記憶喪失なわけないか!」


寝惚けているか、夢か……。

その2択なら夢か。

多分今の俺は攻撃されてもノーダメで済むはずだ。

頬でもつねるという原始的な手段に取り掛かろうとした時だった。


『ヨリコォォォォォ!』

「ん?」


右手で頬にまで伸ばしていると、俺の後ろから猛スピードで走ってくるような圧と声が届き、足を止めた時だ。


「おりゃっ!」

「痛いっ!?」


体当たりをされて体勢を崩し、よろめいてしまう。

痛覚が走り、これは夢ではないと気付く。

なんだよ、俺の知り合いなのかよ……?と体勢を戻しながらぶつかってきた人物をまじまじ観察する。

黄色い髪に青いメッシュにしている長い髪をツインテールにした女性が目の前に立っていた。

派手な出で立ちをしていて、すぐに『マジもんのギャルだ……』と圧倒される。

俺の学校はほとんどが黒髪、チャラい人でも茶髪と金髪というのが多い中、金髪からあえて少し外した黄色に青いメッシュというのが彼女のギャルとしてのこだわりが見える。


「え、えっと……、なんでしょうか……?」

「なんでしょうか、じゃないわよ!頼子!」

「は、はいっ!…………え?なんだって?なんて呼んだ?」


勢いが強くて返事をしてしまうが、色々おかしな点しかないことに気付く。

頼子?

誰それ?

俺、豊臣光秀のあだ名だとしてもどこをどう通ったら頼子になるのか?

そもそもなんでそんな女っぽい呼ばれかたをしているのか?

てか、このギャルは誰?


「だからぁ、頼子!」

「…………?」


ペロペロと棒付きキャンディーを舐めまわしながら、びしっと指を指してくる。

口振り的には俺を知っているようだが、名前は俺のことを知らないのかな?


「お、俺のことわかりますか?」

「知ってるよー。同じ学年なら特に。剣道めっちゃ強いってよく噂……というよりは事実が蔓延しているじゃない」

「めっちゃ強いかはわかりませんが……、確かに剣道には自信ありますよ……」


剣道のことは知っているらしい。

しかし、そんな噂あっただろうか……?

サッカーや野球などは人気があるが、剣道のような地味でマイナー部活でいくら強くてもクラスメートから評価された記憶は一切ない。


「あと、頼子とばかり連呼しますけど俺のこと女に見えてます?」

「いや、頼子が男だと知っているわよ。ただお互い頼子、麻衣様と呼びあう仲じゃない」

「ま、麻衣様!?」

「呼んだ?」

「あぁ。そういうことじゃなくて……。麻衣様ということは名前も麻衣だよね?」

「当たり前!頼子は雑魚の癖にアタシを名前で呼ぶなんておこがましい!」

「えぇ!?」


なんでこんなに俺の立場が弱いのだろうか。

とりあえず俺が頼子と呼ばれているのはわかった。

しかし、不思議と頼子と呼ばれることに抵抗感が皆無なのも当たり前だ。

もう自分が豊臣光秀ではなくて頼子なんじゃないかとすら思い込んできた。


「まったく!あと、最近は全然アタシのところに来ないじゃない!ちゃんと定期的に頼子の顔を見せに来なさい!わかった!?」

「わかりました……」

「うん。頼子は素直だから許す!」


そういって俺に痛覚があることを教えてくれたギャルな麻衣様はずんずんと歩いて消えていった。

果たしてあの人はなんだったのか、よくわからない。


ただ、ここはどうやら夢の世界ではないらしく、麻衣様ときちんと話したおかげで寝惚けているわけでもないようだ。

すっかり謎の状況に巻き込まれてしまったようだ。


「うーん。最後の記憶は車に引かれたんだっけ……?あれで死んだんかね?俺?……てことはまさか、あの世!?」


死んだ世界で学校に通って、仲間の無念を晴らして成仏していくアニメなんかちょうど数年前やってたな。

今の状況、それに近いな……。

なんとなく、俺は今の置かれた状況がだんだんとわかってきていた。

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