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45、明智秀頼の異変

部室に入るなり、「なんだよ、明智氏寝てるのかよー!」と言いながら翔子は秀頼の肩をポンポンと叩く。

身体が微量だけ揺られるが、特に反応がない。


「熟睡してるな」

「お前、後輩で師匠に馴れ馴れしいぞ……」

「す、すいません……。あと、なんで上松氏は明智氏を師匠呼びしてるんですか?」

「我の師匠だからだ」

「そうですか……」


(確かにオレっち、上松って顔も名前もないモブを明智秀頼の犠牲者としてその名前出したけどなんでこんなズレた人なんだろう……?)


注意するゆりかに対して、疑問が沸き上がったが注視しないことにする。


「お疲れ様ーっ!今日も可愛く可憐に副部長の登場ーっ!」

「千姫か。相変わらず可愛いが振り切ってるな」

「ありがとねっ!サクサククッキー!」


部活が始まる時間が近付いて続々メンバーが部室に集まってくる。

そして千姫も「よ、よ、よ、ヨリ君が寝てる!?」とその存在に気付く。


「だ、だ、誰かヨリ君を起こしてよ」

「千姫がやれば?」

「あ、あたしはちょっと……(ヨリ君に声かける恥ずかしいし……)」


未だに千姫は秀頼を視界に入れると無駄にときめいてしまうため、近付けなかった……。


「ちょ、ちょっと怪しい翔子ちゃん起こしてよ」

「怪しい翔子ちゃんってなんだよ!?オレっち怪しくないよ!」

「言動大分怪しいだろ」

「オレっちなんて真顔で言うのやばいよ」

「谷川氏のウチも大概じゃないっすかね!?」


ゆりか、咲夜、翔子、千姫と珍しい4人で絡みつつ、唯一の後輩で副部長に任命された彼女が秀頼を起こしに肩を揺らす。


「ほらほら、明智氏?眠いのはわかるけど、部活終わってスタヴァのコーヒー飲んだら目覚めるだろ?起きて起きて」

「……ん?あれ、いつの間に寝てたか……」


寝惚けながら秀頼は目を開ける。

肩を揺らしている相手に「ご、ごめん……」と謝りながら首をまわす。

メガネのレンズ越しに翔子と秀頼の目が合うも、ちょっとだけ彼の動きがいつもよりも鈍い。


「…………」

「やっと起きたかよ!部活はじまる前に寝るかね?」

「…………え?部活?」

「そうそう。部活よ、部活。部活好きだろ?」

「確かに部活は好きだけど……。でも俺、部活退部したし」

「は?」

「え?」

「ん?」

「じゅ、受理してないよ!?副部長のあたし、知らないそんな話!?」


全員が知らない事実を告げられて驚愕の声を上げる。

それに、もし秀頼が退部届けを提出したのなら部長の黒幕概念か、顧問の近城悠久から副部長の千姫へ真っ先に伝えられるはずなのでそんな事実はあるはずがないのだ。


「え?受理してない?おかしいなぁ……。でも、腕怪我してんだから竹刀振れないでしょ」

「腕怪我したの!?」

「うん……。あれ?腕の違和感ねーや?どうなってんだこれ?」


秀頼の噛み合わない会話に4人全員が目を合わせる。

寝惚けているにしても、その度合いは明らかに酷い。

しかし、秀頼は自分が変なことに一切気付いていない。


「え、えっと……し、師匠だよな?」

「は?師匠?……誰が?なんの?」


秀頼はゆりかからの問いにとぼけた様子を見せる。

ただ、何故か彼の態度はわざとらしさがなくかなり素の様子だった。


「大丈夫っすか?」

「っっっ……!?」

「なんすか?どうしたんすか?」


じーっと翔子はいきなり目を反らす秀頼に駆け寄る。

でも顔が赤くなるだけで、何も答えない。

誰がどこからどうみても意識しているような反応にしか見えなかった。


「ははぁーん。オレっちに照れてるんすね!?今さらオレっちに異性感じるなんて!オレっちは、みんなのアイドルなんで恋愛なんかしないっすよ!」

「誰が意識なんかするか!するわけないよな?」

「え?え?……っ!?」

「なんだ?なんでウチからも目を反らす……」


秀頼は咲夜、ゆりか、千姫と目線を動かしていくがウブのように顔が赤くなり、まともに目が見れなかった。


「ちょ、ちょっと……」

「ど、どうしたんですか師匠!?」

「れ、れ、れ、レベル高過ぎ……」

「れべる?」


「顔面偏差値高過ぎ……。なにこれ?誰?恥ずかしくて目合わせられないんだけど……」とぶつぶつぶつぶつ1人でごにゃごにゃと口を動かしていた。


「ご、ごめんなさい……。お、俺馴れてる人にはガンガン行けるんだけど……」

「知ってる」

「知ってる」

「知ってる」

「知ってる」

「あ……。そ、そうですか……」


秀頼がみんなから即答されて言葉を失う。

今、彼の頭の中は大パニックが起きている。


(な、なんなんだよ!なんなんだよ!このレベル高い女子の人たち!?せ、先輩なのかな?で、でもウチの学校の制服着てないしマジで誰!?)


目をぱちくりとしながらマジマジと4人を観察している。


(メガネの子はメチャクチャ馴れ馴れしいじゃん!起こしてくれたってことは俺に触れたのかな……。いびきとか聞かれたらはずいって……)


翔子から順番に脳内で彼女たちの感想を述べていく。


(あっちの無口そうな子はコミュ障ながらも無理に俺に話しかけてくれてその健気さが心に来るな……)


咲夜の次はゆりかへ。


(あの人は髪が長くて身長も高くてモデルかなにかかな?すっげー先輩から言い寄られている気分でドキドキする。あと、なんで俺を師匠って呼ぶの?)


ゆりかから千姫へ。


(あの右目の下に黒子ある子は俺へあまり近付かないな……。い、意識されてるのかなぁ……。いや、自意識過剰だな。可愛い子に惚れやすい自分が憎い!)


この場4人みんながクラスで5本の指に入るレベルで顔面偏差値が高過ぎて秀頼は大パニックを起こしていた。


──実はこの男、五月雨茜のギフトがあまりにも強力過ぎて秀頼として生きてきた16年の記憶が全部飛んでしまっていた。

その変わりに、今の秀頼の中には茜のギフトがまったく影響を及ぼさなかった豊臣光秀として生きてきた記憶しかないのであった。


「あれ?なんか見覚えのある制服だね?」

「当たり前だろ」

「ご、ごめんなさい……」


咲夜は普段通りの態度で突っ込んだのだが、初対面の秀頼にはかなり不機嫌に指摘されたと勘違いしてガチの謝罪をしてしまっていた。


(制服ってかコスプレ?なんかのゲームの制服に似てるな……)


彼女らは光秀の通っている学校の制服を着ていないことには気付いていたが、どこの制服なのかの情報がまだ繋がっていなかった。


「なんか変だね。熱でもあるっすか?」

「…………う、うわわわわっ!?」

「え?明智氏?」

「すみっ!すみません!失礼します!」


翔子が秀頼の額と額を合わせて熱を図ろうとするスキンシップをしようとしたが、秀頼はその今から行われる行動に羞恥心が込み上げてきてしまい結果立ち上がり部室を飛び出してどっかに消えていった。


「……ヨリ君どうしたんだろ?」

「秀頼の荷物あるし戻ってくるとは思うが……」

「あれ?本当に師匠か?」

「…………なんか、オレっちが知らないところでなんかやばいことが起きている気がする……」


各々が秀頼の行動に驚くことしか出来ないのであった……。

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