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43、津軽円の哲学的発言

自信満々なアヤ氏ってどこかパンチがあって説得力が強いんだよなぁ。

オタク故の声の大きさと言われたらそれまでなんだけど……。

もしかしたら『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズの製作スタッフ側なのだろうか?という疑問すら沸き上がるくらいに結構色々忘れかけた情報提供もあったりする。

とりあえずアホを装っているが、地頭は凄く良いし、頭の回転も早い人なんだと尊敬すら覚えてしまう。


「……なぁ、明智氏?」

「どうした?」

「もし、アカネっちがタケル氏じゃなくて明智氏にギフトを使ってきた場合あんたはどうする?」

「俺に彼女の『人の好感度を調整する』ギフトを俺にしてききたら……?」


それがどんなギフトなのかわかっていても、直接の使用は見たことがない。

それに原作でもサラッとした描写しかないので、驚異度も測りかねているところがある。


「というか、なんで俺に五月雨がギフトを使ってくるんだよ……」

「なんか……、仲良しに見えて」

「俺と五月雨が?」

「明智氏とアカネっちが。ヒロインたちって可愛いんだけど、オレっちからすると彼女たちは娘たちを見る目なの。わかる?」

「は?娘?」

「もう実質オレっちの娘と言っても過言ではないね!そりゃあもう佐々木絵美やエニアみたいな攻略ヒロインじゃない子らも実質娘な!……あ、円氏は例外な!中身違う人みたいだし!」


『長門は俺の嫁』というヒロインを自分のものと発言する者は数知れず見てきたし聞いてきたが、『オレっちの娘』とヒロインを娘扱いする人ははじめて見た。

どの領域に辿り着けばそこまでの悟りを開けるのだろうか……?


「ヒロインはオレっちの嫁とかは考えないのか?」

「無いね!これはオレっちの前世での職業柄ってやつよ。あんまり触れてやるなよ。ミステリアスガールなオレっちの過去を暴く真似はやめてくれよ」

「そ、そうか……。今度からミステリアスガールの詮索はやめるよ。それに突然横文字が出てきて驚いたし」

「良い男だな明智氏!」


綾瀬翔子をミステリアスガールと思ったことは1度もないことは俺の胸にとどめておこう。


「ヒロインたちはオレっちの娘。だから父親目線に立ってみると、アカネっちは明智氏に心開いている気がする」

「お、おう……」

「まぁでも大丈夫っしょ。どーんと枕を高くしてファイナルシーズンに備えな!」

「ファ、ファイナルシーズンか……。ちょっとドキドキするな」


新しいヒロインも登場するし、今から出会いが楽しみである。

ギフト狩りの脅威もファイナルシーズンでは解決済みという点も見逃せない。

そんな感じでワクワクしたアヤ氏と語り合いながら昼休みを過ごしていく。

10分ほどの雑談を終えて、「また後でー!」とアヤ氏と手を振りながら別れた。


部活が終わって、スタヴァに行く予定だ。

早速円に報告してあげようと教室に戻って行く。

自分の席に座っている円を見付けると、どうやら彼女は教室で小説……ラノベを読んでいた。

堅苦しく本屋の紙のカバーをしていて周りからは表紙をバレない工夫をしているが、性格丸わかりの俺にそんな小細工は通用しないのである。


「よっ!まどか!」

「あら、明智君じゃない。教室に戻ったんだ」


いつものように声をかけると、ラノベを読んでいた円が振り返る。

本に挟まっている広告を栞代わりに挟めてラノベを机の中に放り込んだ。

きちんと話を聞く体勢になったのだった。


「今日、部活終わった後の用事ある?」

「無いわよ。なんかの誘い?」

「うん。アヤ氏が俺と円にスタヴァを奢ってあげるってさ」

「ナチュラルに後輩に奢られるのね私たち……。情けないわね……。良いわよ」

「よし、なら行こう」


奢ると言われて来ないはずがなかった。

円の予定も埋めることが出来た。


「因みに私たちが綾瀬になんか奢られる理由あるっけ?」

「セカンド完結記念だってよ!イエーイ!」

「その『イエーイ!』の言い方あれでしょ?ユーチューブで子供たちが元気そうに叫ぶ素材の真似」

「やたらマニアックなところに突っ込むじゃないか……」


意識したわけじゃないが、フリー素材音声につられてしまったようであった。


「セカンド完結記念?なにそれ?」

「教室で誰聞いてるかわからないから小声で話すが、アヤ氏的に今の状況はセカンドシーズンの終わりじゃないかってさ」

「はぁ……。別に私にはなんの影響もないから終わりなら終わりで別に良いんだけど……。明智君が終わりだと思えば終わりだし、終わりじゃないと思えば終わりじゃないと思うよ」

「て、哲学的じゃないか」


確かにそう言われたらそうでもあるな……。

仮にファーストシーズンも終わってないと思えば、まだファーストシーズンということでもあるのか……。


「まぁ、良いんじゃない。今の明智君に死亡フラグなんか立ってなさそうだし」


そうやって円が笑顔で頷く。

しかし、その言葉に違和感があった。


「死亡フラグ……」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない……」


死亡フラグと言われて頭に過った言葉があった。

サーヤからの『大事な物を失う』という忠告だ。

『それが死亡フラグだ!』なんてこじつけるつもりはないが、しかし今のこの状態が嵐の前の静けさなのではないかと、不安が過った……。

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