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39、明智秀頼は華を持たせる

楓さんがバイトをしていたミルクたいから少し歩くと、いつかに佐木茂と出会った自然公園にたどり着く。

この公園から見えるやや大きい病院は十神病院。

タケルの父親が勤務をしているところだが、ろくに入った経験はない。

彼の父親を見てみたい好奇心も多分にあるが、そんなに体調を崩すこともないので会うことは無さそうである。


「こんな広くて散歩にはうってつけな自然公園があるなんて知りませんでした。時間がゆっくり流れているみたいです」

「え?この公園でゆっくりしている1分はスターチャイルドが仕事している際の60秒と同じ長さだよ?」

「わかってます!そんな風情を壊すようなこと言わないでください!」


ちょっとスタチャをからかって遊んでいると、絵美もおかしそうにクスクス笑っていた。

「これは秀頼君が悪いよ」と指摘しつつ、特に叱り付けたりといったことは無さそうだ。


「私、街よりもこういった自然に囲まれたようなところの方が好きだなー」

「おやおや。スタチャらしかぬ言葉だね?」

「都会の空はつまらないよ。田舎とかの星の輝きとか見ちゃうと離れたくなくなるよね」

「確かに街中は光が強すぎて星が見えませんからね」

「そうだなー……」


自然に囲まれた場所の星の輝きは確かに興味がない人をも釘付けにする魔力を秘めている。

俺の前世で住んでいた場所は田舎だったし、星の輝きの魅力を堪能出来る場所だった。

それに無人島なんかでの焚き火をしながらの天体観測とか無駄に贅沢している後ろめたさを覚えるくらいに心を悠久にさせて満たすほどである。


「明智さんや絵美さんはどこか行きたいところとかありますか?」

「俺はギフにあるタイルマン像を観に行きたい!」

「え?ギフ?タイルマン?」

「わかんない?タイルマンだよ?東京駅から新幹線を博多まで押す力のある正義超人だよ。基礎体力ならウォーズマンよりあるやべぇやつの像がギフにあるのよ」

「検索したら少年マンガのキャラクターの像らしいですね。……というか、モブじゃないですか?」

「めっちゃモブだよ」


神に匹敵する相手に立ち向かい人間になったイカス奴である。

何年か前にタイルの生産量がジャパン1のところにタイルマンが建ったのを知った時から拝みに行きたいと常々考えていたものである。


「このよくわからないチョイスが秀頼君だよねー」

「でも、明智さんがそう言うならいつか行きたいですね」

「そうだね。ロマンさはあるけど、ロマンチックさは皆無だろうけど……」


タケルも山本も『タイルマンってなんだよ!?』レベルなので、まったく食い付かないのであった……。

世代が違うらしく、アヤ氏や達裄さんや悠久辺りなら共感してくれるだろうか……。


「わたしはホッカイドーとか行きたいですね!秀頼君をお腹いっぱいにさせていきたいです!」

「なんだよそれ?俺、そんなに食べるキャラじゃなくね?」

「わたしは秀頼君を連れて歩けるならどこでも良いんですよ。ずっと君と一緒に居たいの!」

「ちょっ!?や、やめろよそんな恥ずかしいこと……」


ずっと一緒にいたいとか、いきなりプロポーズまがいのことを言われる。

絵美のそんなささやかな願いは叶えてあげられたいものである。


「私も明智さんとずっと一緒に居たいです!」

「そ、そうだね。俺もずっと一緒だよ」


絵美に星子だけじゃない。

円や永遠ちゃんや他の子たちとも別れるようなことにはなりたくないよなぁ。

みんなを知れば知るほど好きになってしまっている。


「そろそろベンチあれば座ろうか。たい焼きも早くしないと冷めちゃうな」

「そうですね!早く食べたいですね!」

「ならこっちにベンチがありますよ!着いて来てください!」


絵美が慣れた足取りで自然公園内を案内していく。

噴水とか遊具とかが目に入り、小学生らの遠足にはぴったりなロケーションである。

俺も数回この自然公園に足を踏み入れているので大体のルートは頭に叩き込んでいるのだが、絵美に華を持たせようとしてあえて道案内に対して口出しをしなかった。


「撮影会とかあったらここの提案するのも良さそうだねぇ!風も心地よい強さです」


スタチャが耳を露出させるように白髪をかきあげる。

絵美のツインテールもさわさわと弱い風で揺れていた。

そのまま、俺が体調を崩した茂と出会ったベンチが複数並べられた開けたところにたどり着く。

その中の3~4人が座れそうなベンチに俺を真ん中にして腰をかける。

絵美にクリーム、スタチャに小倉、俺はスイートポテトのたい焼きをそれぞれ渡していく。

紙袋には小倉とクリームの2個がまだ残っている。


「1秒が経過する度に美味しさが逃げていくからね。早く食べようか!いただきます!」

「秀頼君、ありがとうね!いただきまーす」

「明智さん、ご馳走になります。いただきます!」

「うん。食べて食べて」


俺はたい焼きの顔からパクりと食い付くとサクサクとした皮の歯ごたえと、甘過ぎないスイートポテト味のクリームが混ざりあってめちゃくちゃ美味しいと驚愕する。

スイートポテト味のたい焼きなんて食べたことなかったから、とても新鮮だ。


「美味しいよ秀頼君!」

「あんこ好きぃ!」


3人が各々のたい焼きに感動していた。

ミルクたい、やるじゃないか……。

楓さんの手作り補正も合わさり、リピーター確定だなと決まったのであった。

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