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35、佐々木絵美は持ってきたい

それから2時間ほど、一緒にスマブラで対戦をしたり、今話題のユーチューブの動画なんかを小さいスマホの画面で寄せ合って見ていたりしていた。

こんなほのぼのデートもあるんだなぁとちょっと感動していた。


「うーん。なんか腹減ったな……」

「明智さん、今日起きるの遅かったみたいだしね……。朝食も食べてないですよね?」

「うん。クッキーとウーロン茶しか口にしてないからね……。ちょうど12時過ぎだね……」


まさか朝起きて2時間で昼になるとは、やはり遅起きは時間を無駄にした感覚が強くて胸である。


「おばさんはさっき出掛けたんだっけな……。お昼行くなら食べに行く?」

「そうですね!お昼作っても良いんですけど、ちょっと歩きたくなりましたね……」

「しかし、今日のスターチャイルドは1日家にいるつもりだったんでしょ?どうするの?」

「細川星子に戻ると服のサイズが合わないしなぁ……。あ、なら!」


そうすると、スタチャは思い出したようにギフト『キャラメイク』を使用する。

キラッ☆と一瞬だけ輝くと、スターチャイルドの金髪と黒髪メッシュの色は白髪に変わる。

それから結っていた髪のゴムを外し、長い髪を下ろした形になる。


「じゃーん!スタチャスマイル☆」

「おー!結構前にスタヴァに行った時の2Pカラーのスタチャだ!めっちゃレア!」

「格ゲーじゃないんだから2Pカラーなんて呼ばないでください。たまにスタチャで歩きたい時の変装用の姿なんです」


街で白髪スタチャの時があるの?

プライベートスタチャも見てみたい気もしてくる。


「そういえばスタヴァに行った日のデートは『秀頼さん』呼びだったのに、なんで今日は『明智さん』呼びなの?」

「え?気分的に?」

「意味ないんかい」

「明智さんも意味もなく普段『絵美』と呼んでいる絵美先輩を『絵美ちゃん』とか『絵美さん』とか呼んだりするよね?私もたまにそういうのあるんだ。兄妹なんだね」

「あ、あぁ……。てかそんなのよく気付くな……」


指摘されるとなんか恥ずかしい……。

自分のことを観察されている探偵に追われているのに気付かないみたいなシチュエーションの渦中になったかのような気分だ。

…………そういえば探偵の上松えりなさんが俺と出会ったのは深森父の差し金なんだっけ?と、実は自分も探偵に追われたことのある経験者だったと思い出してしまった。


「さ、白髪スタチャで変装用のサングラスとマスクしてOK!」

「……明らかに俺浮いてない?」

「じゃあ明智さんもサングラスとメガネ装備しなよ」

「怪しいカップルとして職務質問されんじゃねーかな……」


と、言いつつちゃっかりプライベートで買ったはいいものの、まったく使い道がなく転がったサングラスを手に取った。

サングラスを付けた瞬間、自分がヤーさんになった気分になり攻撃力が10アップしたのである(ただのプラシーボ効果)。


「キャハ!なんだ、あるんじゃーん!」

「スタチャのデートの時があるかと思ってね!厳つくね、このサングラス?かけると視界が黒くなるの」

「大体のサングラスがそうじゃない?」


1000円ほどの安物サングラスだが、スタチャの彼氏としてならいくらでも役割を果たせる。

こうして、お互いサングラスとマスク姿で手を繋ぎながら明智宅を飛び出した。


「えー?に、似合うかな……?」

「ワイルド系で良いと思うよ!ちょっとヤンチャな感じ。普段の明智さんは見た目に反して優男なんだからギャップが1周してる感じ!」

「褒めてるのかそれ……?」


そんなお互いのサングラス姿デートに新鮮味を感じながら絵美の家の前を通った時だった。

ちょうどガチャという音がした。

絵美のお母さん辺りが買い物でもするのかな?と思いながらそちらに振り返った時だった。


「あ……」

「あ……」

「サングラス付けてなにやってんの秀頼君……?あと、隣の手を繋いでいる女の人は誰かな?誰かな?」

「お、落ち着きましょう絵美さん!?」

「あ、やっぱりさん付けになってる」

「呑気かよ!?待って待って!?話せばわかるから!」

「わかりたくないから弁明要らない」

「それは酷いよ絵美ちゃん!お願いだから話を聞いて!?」


いきなり暴君っぷりを見せた絵美はニッコニコであった。

流石に俺がサングラスを付けたところで、親しい人には一発で気付かれるのを知ってしまった……。


「ほら、見てくれよ絵美!俺、秀頼」

「わかってますよ」


サングラスを外しながら、目を露出すると絵美は冷めた目をしていた。

ヤバい、ヤバい……。

隣の女子が星子だと気付いていない。


「ちょ、ちょっとサングラスを取って!」

「しょうがないなぁ。ハロー、絵美先輩!なんちゃらスマイル☆」

「す、スターチャイルドだ!」

「正解!スタチャスマイル☆」

「白髪ではわかりませんよ……。茜ちゃんかと思いました」

「プライベートで五月雨と会う仲ではないんだよ」


多分一生俺と五月雨が2人っきりでプライベートな用事のせいで会う機会など無いと思われる。


「てことは、星子ちゃんですよね」

「星子でもあるし、スタチャでもあるよ」

「そ、そんなに自由に髪型も身長も弄れてズルですよ!ズル!わたしだって……!わたしだって!ギフトさえあれば……っ!」

「いや、絵美もギフト持ってるでしょ……」


『想いを力に変換する』ギフトだっけか。

なんという脳筋ギフトである。

まさか原作絵美の化物っぷりがギフトのせいだったとは、原作やりこんだ俺も知らなかったことである。


「暇してたんだよー!遊び行くなら連れて行って!」

「うん。一緒にお昼食べに行こうか」

「デートなのに!お兄ちゃんとデートだったのに!」


こうして絵美も合流する流れになった。


「あ、待って!?わたしもサングラス持ってくる!」

「え?絵美もサングラス付けるの?」

「スタチャがバレたらいかんでしょ!」

「スタチャがバレなければ絵美がサングラスを付ける必要性は……」


ない、と言い切る前には絵美の姿は自宅に引き返したところであった。

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