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25、上松えりなの生まれ

車の助手席でシートベルトを付けると確認すると、上松さんは「シーベルしたわね」と確認する。

自分の身体のまわりにもシートベルトを装着すると、そのまま真っ直ぐに車が進行する。


「…………」

「…………」


初対面ではないが、ほぼそれに近いアイスを一緒に食べたお姉さんとの気まずい空気が流れる。

それに、後ろの席に目を移しても人の気配がない。

美月も美鈴もこの車にはいないのだ。

この人が深森家と関わっている人なのか疑ってしまいそうになるが、先ほど『深森』という単語は出していたから関係者なのは間違いない。


「上松さんは深森家の使用人かなにかとかですか?」

「いえ。我はどこにでもいる探偵です。佇まいからもわかる通り、使用人でもなく探偵ですよ」

「そうですか……」


ダメだ……。

こないだまでは上松さんという名字を知らない時は変わった人ぐらいの印象しかなかったが、名乗られた瞬間から変な固定概念に捕らわれてしまい彼女の1人しか思い浮かばない。

聞いても良いのか、悩んでしまう。


「おや?悩み事ですか明智秀頼さん」

「わかりますか?」

「とても緊張していますね。なにか緊張をほぐす言葉を掛けられるかはわかりませんが、良ければ我に相談や不安を吐露してくださればお答えしますよ。そりゃあ、いきなり美鈴さんに呼ばれて心ここにあらずな状態になるのも共感しますよ」


美月と美鈴に呼ばれたことは、一切悩み事とは関係ないが、相談をして良いと本人が言うのであればそのご好意に甘えても良いのだろうか……。

10秒ほど悩み、「では……」と切り出す。


「上松さんは兄弟姉妹はいたりしますか?」

「え?我への質問ですか?」

「ま、まぁ……。ちょっと気分を紛らわす雑談と思ってくださいよ」

「そういう意味ですか。我は1人っ子です」

「そ、そうですか」


だよね……。

そんな簡単に都合の良い話はないだろう。

ただの赤の他人だと知ると自ずと似ているという思い込みも無くなってくる。


「そういえば明智秀頼さんの付き合っている彼女リストに我と同じ名字の人がいましたね」

「っ!?そ、そうだったかなぁ?」


というか、美月と美鈴以外にそんな情報まで知られているのかい……。

俺のプライバシーはどこに行ったのか……。

せめて、身内のおばさんには伝わらないで欲しい。


「隠さないで大丈夫ですよ」

「そ、そうですか」

「美月さんと美鈴さんが言うには赤の他人らしいので気にしなくて良いですよ」

「そ、そうですか……」


いや、あの2人は考えるのを放棄しただけだろう……。

なんとなくそんな気がする。


「我の身内は母親だけの片親なのですが、父親の上松って名字を変えなかったみたいなんです」

「え?片親なんですか?」

「幼い頃に離婚した父親は新しく家庭を作ったみたいですが我には興味ないのでそれ以外は……。もしかしたらその顔も知らない父親の子供はいるかもしれません」

「複雑な事情がありましたね……。申し訳ありません、踏み込み過ぎました」

「気にしないでください。あなたに襲いかかった後ろめたさが残っているのでむしろこっちが謝罪したいくらいです」


お互いに謝ることで、この辺はチャラにしようということになる。

果たしてあの彼女と、この上松さんの繋がりがあるのかないかは気にしないことにしよう。

弟だけの姉弟だったようだし、無理に関連付ける意味もない。

それからは上松さんとは当たり障りのないような会話をして、目的地到着を待った。

20分くらい車に揺られていると、「もうすぐ着きそうです」と報告が入り、気を引き締めると彼女から疑問を尋ねられる。


「明智秀頼さんはあんまり人見知りしない性格とかですか?」

「結構人見知りしますよ。ただ、しゃべるのが好きなので、今みたいな初対面の人と2人っきりの場面になると人見知りより好奇心の方が強くなりつい絡みに行きたくなりますね。あまり理解は得られませんが……」

「なるほど。凄い人ですね。着きましたよ」


ちょうど彼女の疑問が晴れると、車の駐車をして外に出される。

目的地の立派な建物らしき場所(家?)を眺めると、なんとなくゲームで見た風景な気がするが、どこだったが思い出せない。


「ここはどこですか?」

「深森家の実家よ」

「…………デカ」


一軒家で明智家宅の2倍弱はありそうな立派な建物である。

そういえばタケルが美月の両親に会いに行く美月ルートアフターでこの建物が出てきたのだったか。

基本的にアフタールートなんかどのギャルゲーでも1回クリアしたら大体再プレイすることもないので忘れていたよ(永遠アフターのみ例外)。

深森姉妹が借りているマンションすら上がったことがないのに、まさか直接実家に来ることになるとは想像していなかっただけに衝撃はデカイ。


「あなたは美月さんと美鈴さんに呼ばれたというよりは深森家のご当主であり、この家の大黒柱に呼ばれたということを肝に命じなさい。では、我に付いてきてください」

「は、はい……」


あれだろうか。

『ウチの娘の交際など絶対にみとめーん!』的なアレだろうか……?

1歩1歩と進む度に重い重圧が襲いかかってくるようであった……。

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