16、明智秀頼は仲良くさせたい
「にしても高校生だってー!若いなぁ、若いなぁ!」
「高校の時は1番若かったねー」
「お前は16歳で生まれてきたわけじゃないだろ」
「テヘッ!」
リーフチャイルドとしてではなく、遠野葉子としてのボケに達裄さんは淡々と突っ込みを入れていく。
ルアルアさんは慣れっこなのか、葉子さんよりも俺とタケルの制服姿に興奮していて、目を輝かせていた。
「ルアルアさんだってまだまだ若いですよ」
「えー?ほんとう?」
「悠久の1つ下ですよね?彼女より5歳くらいは若く見えますよ」
「お前は本当に学園長を弄るのが好きだな……」
「あー、悠久先輩の学校の生徒さんなんだー。イマシリー」
達裄さんの後輩というから悠久のことを振ってみたら見事に知り合いのようである。
ルアルアさんがちょっとギャルっぽく感想を述べた。
「というか、秀頼と悠久先輩って親しいの?今の感じ、『凄い仲良しです』っていうユキ兄みたいな空気があったね」
「出会ったらお互いを罵るような仲ですね。あとは、俺の情報を上の連中に売られたりしたこともありましたね!」
「あ、じゃあ悪友だね。悠久先輩、生徒と友達なんだねー」
「そうですね。友達感覚だから、教師とは見てないですね」
だからこそ、『バーベキューの引率してー』とか『肝だめしの引率してー』みたいなことが起きている。
担任の星野先生とかでは、そんな気安くは頼み事など出来ないだろう。
同級生では美人だし、良い匂いがするなど野郎ではオカズにしている猛者もいるようだ。
慕われているし、人気はある学園長なのだ。
タメ口で悠久と会話出来る生徒は俺とヨルの2人しかいないと、本人が叱っている時に呟かれたことがある。
「そっちのー……、タケル?も悠久先輩と友達感覚?」
「ちがっ、違いますよ!?俺は普通に学園長先生とは生徒と教師の仲ですから!指で数える程度しか会話したことないですし!」
「え?そうなの?」
「なんで秀頼が不思議そうな顔してんだよ!いつもそんなに会話しないだろ!」
……あれ?
『悲しみの連鎖を断ち切り』セカンドシーズンから本格的に登場するレギュラーキャラになる悠久は、ヨルの相棒としてのタケルを気に入って弄ってくる教師役である。
日常シーンでは廊下ですれ違ったところで雑談を交わしてきて、シリアスシーンでは善き大人として。
ヨルの過去編ではタケルを自分の息子のように可愛がり、導き、レジスタンスとして成長させていく。
攻略ヒロインではないけど、 津軽円や佐々木絵美などのように出番が多い。
シリアスな見せ場のない円、そもそも扱いが悪い絵美と比べると扱いが雲泥の差がある程度には準ヒロインポジションである。
そんなタケルの人生に大きく関わっている悠久が、彼とほとんど接点がないというのはいささかヤバいことのように思えてきて、焦りが生まれてきた。
おかしい……。
タケルと悠久の繋がり、絆はどこに行ってしまったのだろうか……?
彼ら2人の間を取り持つヨル・ヒルは一体なにがあったのだろうか……?
俺のこれまでの原作の進捗状況から、重大な歯車が取れていたということだ。
ど、ど、ど、どうしよう……?
「どうした秀頼?顔青いぞ?」
「達裄さん!」
「ん?」
俺の異変にいち早く察知した達裄さん。
彼にならこの異変がどれくらいヤバいか伝わるのではないだろうか!?
「タケルと悠久を仲良くさせるにはどうすれば良いでしょうか!?」
「知らんよ」
最近、師匠が冷たい……。
彼には原作事情など一切話していないのだから仕方ないかもしれないが、知っていても冷たい気がする。
基本この人、妹には甘々だが、男にはドライなんだよね……。
「ちょっと待て秀頼!?なんでいきなり俺と学園長の仲を取り持たせようと?…………ま、まさか学園長先生は俺のことが好き!?」
「いや、達裄さんが好きだよあの人。タケルのことは眼中にないよ」
ヨルの過去編でも、タケルは一切悠久とは肉体関係を持ってないと桜祭が明かしていたりする。
タケル×UQカップリングなんていうことに妄想を広げるファンもいたが、このゲームのファン層は中々に闇が深い。
「じゃあなんで俺が学園長と仲良くならなくちゃいけないんだよ!気まずいだけだろうが!」
「た、確かにそうだが……。ほら!悠久と仲良くなると、内申点上がるよ!」
「むしろ、文武両道なお前は内申点だけが悪い気がする……」
俺の性格の内申点については先生によって良い悪いの差が激しい。
永遠ちゃんとはじめて出会った中学1年時はすこぶる内申点が悪くて、おばさんから『弟みたいに不良になったんじゃないか』と疑われた時もあったな……。
「あの人、いつ達裄を諦めるんだろう……」
現・彼女のルアルアさんが遠い目である。
彼女として、人の彼氏を狙う女としてマークしているのはその落ち込み気味な態度でも明らかである。
達裄さんの性格上、女性に強く言えないだろうからなぁ……。
「因みに流亜ちゃん以外にもユキ兄の彼女枠を諦められない子で混みあってるのよね」
「…………」
「ど、どんまいっす達裄さん」
「お前、他人事じゃないだろ」
「…………」
俺と達裄さんは燃え尽きたように白くなりながらガックリと項垂れた。
離婚ハーレムよりも遥かに現実的である。
何回目かわからない未来の俺の姿を投影してしまっていた……。
「え?明智君も同じ状況なの!?」
「えー、秀頼ってそんなモテるのー?」
「こいつもヤバいっす」
ルアルアさんも、葉子さんも俺には酷く他人事であった。
大人3人との雑談は新鮮な気持ちになったまま時間が過ぎていった。