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6、一ノ瀬楓の戸惑い

永遠ちゃん、島咲さんが喫茶店に来たのを皮切りに俺の恋人たちが続々入店してくる。

一応、『OPEN』の札が掲げられているが『貸し切り』の張り紙もあるので部外者は中には入れないような注意書きもある。


『あっ!見てサーヤ!『サンクチュアリ』は午後からしかやってないって』

『なら別に千夏のバイト先のスタヴァに行けば良いでしょ。考えればわかるでしょ愚民が……』

『なんでプライベートでバイト先行かなきゃいけないのよ。それは普通に気まずいよ……。気になる人がスタヴァに来てサーヤと一緒に見られるの恥ずかしい……。とりあえずミスドォーにしましょ』

『気になる人の前で妾と一緒では恥ずかしいのか?』

『素で妾とか呼ぶから恥ずかしいのよ……。楓とかなら良いんだけど……』

『妾の呼び方1つで恥ずかしいとは。愚民は愚民じゃな。ミスドォー行くぞ』


ちょいちょい扉から見える影から、数少ないマスターの客を追い払うことになってしまい心苦しい。

……のだが、なんとなくシルエットが知人に見えなくもなかった。

マスターの常連の8割とは会話したことあるか、顔だけは知っている人だから知人でも間違いないはずである。

そんな中、一ノ瀬楓さんが喫茶店の扉を開けて入って来たのを主催者として出迎える。


「明智くーんっ!久し振りーっ!」

「楓さん、お久し振りです」

「お姉さん、明智君に会ったら存分に楽しむって決めてるから」

「ははは……」


詠美の恋人発表が果たして楓さんが楽しめるのかは、不明であり渇いた笑いが出る。

マスターと咲夜、何故かキッチン側から突き刺さる視線を受けていた……。


「私以外のみんな揃ってる?」

「まだ何人か……。美月と美鈴が来てないですね」

「ビリはどっちだろうね?」

「仲良しだし、2人一緒に来るかと……」


いつの間にか絵美や理沙たちも合流していて、残り2人という人の集まりになった。


「そうだねー、仲良し双子姉妹だもんねー。可愛いよねー!」

「はい、可愛いですね。美月の真面目に振る舞いながらもちょっと抜けているところとか、美鈴の健気でみんなで頑張ろうとしているところとか。お互いシスコンなところがわかりみ深いし、キュートブーストしてますよね」

「キュートブーストってなに?」

「そ、そんな……。シスコンにわかりみが深いなんて……」

「星子ちゃんめっちゃ喜んでる……。それで良いのか、君達兄妹は……」


大学生である楓さんは大人らしく、色々と俺の不安を心配してくれている。

中々ここまで踏み込んでくれる人もいないので、大事にしたくなる。


「相変わらずゴミクズ先輩は……おっと、秀……ゴミクズ先輩はせーちゃん大好きシスコン野郎ですからね」

「なんなの?そのまわりくどいゴミクズ批判……?なんで2回もゴミクズって言った?」

「最近の私、秀頼先輩をゴミクズって呼ばなすぎて優しすぎたなって……。ここで原点に帰ろうと思いまして」

「良いんだよ、別に初期のキャラ設定思い出さなくて」


昔はもっとトゲトゲしていた和も、大分落ち着いてきたところにこれである。


「ところで、なんで和ちゃんは明智君をゴミクズ呼びしてるの?好き、なんだよね?」


俺と付き合っている楓さんも和の態度に戸惑いを隠せないでいる。

因みに長年の付き合いになる理沙や咲夜なんかはもう俺のゴミクズ呼ばわりに突っ込みも無くなってしまっている。


「大好きですよ、このざーーーこっな先輩。好きな人ほど虐めて監禁したくなる小学生のアレの表現を私はしているだけです」

「虐めては理解できるが、監禁するは理解できないから」

「因みにゴミクズ呼ばわりは姉者の影響です。姉者が明智先輩をゴミクズって紹介したのが原因ですから」

「…………え?呼んだ?」


蚊帳の外で絵美と理沙と雑談していた円に急な飛び火が向かっていく。

和が「ゴミクズ呼びの元凶」と、円を差し示す。


「え?ま、円ちゃんが……?普段はクールだけど、あんなに明智君の前ではデレデレになる円ちゃんなのに……?」

「初期姉者を知らない者もいようとは……。むしろ、全人類の中で1番明智先輩に冷たかったまである」

「や、やめなさい和!?ベラベラベラベラ姉事情語ってんじゃないわよ!?」

「そういえば、初期姉者はシスコンだったが、いつの間にか雑に扱われていった私……」

「私が優しくなくなっていったのはあんたの性格が悪いせいでしょうね」

「…………」


あんまり初期初期と言わないで欲しいものである。

俺と出会った辺りを指しているのはわかるが、ヒヤヒヤする。


「私と姉者が仲良くないみたいなイメージあるかもですが、初期の深森姉妹と比べたら全然マシっすよ。ね、トワパイ」

「トワパイ……。和ちゃん、私をトワパイって呼んだ?」

「あ、あれぇ!?反応わるぅ!?な、なんか私、永遠先輩の地雷踏んじゃったでしょうか!?」


あーあ……。

和の奴、やっちまったなぁ……。

永遠ちゃんの心境をすぐに理解してしまった。

和が態度を急変させた永遠ちゃんを見ながらあわあわと誰かに助けを求める視線を向ける。


「は、は、は、遥香先輩でガード!」

「はぇ?ぼ、ボクですか?」

「甲冑に追いかけまわされた時のようにタンク役とかヘイト役似合いますよね」

「嫌ですよぉぉ!?そんな生け贄みたいな扱い!?」

「こないだコモドドラゴンに襲われてたし。ヤヒューニュースに掲載されてたの見ましたよ」

「まったく関係ないじゃないですかっ!」


近くにいた三島を引っ張ってきて、彼女を盾代わりにして自分の前に立たせた和。

永遠ちゃんというと、プルプルと震えている。


「和ちゃん!」

「は、はいっ!」

「はいっ!」

「いや、三島は呼ばれてないよ」

「ふぅ……。つい条件反射で。ありがとうございます明智さん」


自分にヘイトが向いたわけじゃないのを教えてあげると、三島はため息を吐いて安心した顔を向けている。

「やっぱりボクが前じゃおかしいですよ」と、盾にしていた和の前から離れた。


「トワパイって良いですねっ!私をあだ名で呼んでくださいっ!」

「…………え?」

「エイエンちゃんはあだ名付けられたい願望あるんだよ」


「めっちゃ平和じゃん」と、静かに観戦していた楓さんも問題が解決してボソッと呟いた。


「それで、美月と美鈴のことですよね。彼女らとは幼馴染ですが、確かに美鈴が美月が苦手で……、嫌そうな顔をしていた時はありましたね」

「め、めっちゃ意外なんですけど……」

「ボクも、その頃の美鈴さん知らないからビックリするんですよね……」

「ツキパイ、美鈴先輩に弱そうだもんなー」


永遠ちゃんのオブラートに包んだ美鈴から美月への憎悪についてを、楓さんと三島と和がそれぞれ口に出していた。

まぁ、ぶっちゃけ俺も彼女の不仲な場面はゲーム知識でしか知らないんだよね……。

リアルで美鈴が美月を殺したいほどに憎んでいるところは見れず仕舞いである。

こじれたシスコンのすれ違いを別に見たいとはまったく思わないが……。

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