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1、いにしえのドラゴン編

この地はドラゴンが奉られている土地と言い伝えられている。

そして、第5ギフトアカデミーのグラウンドが実際にドラゴンが眠っている土地と言われている。


本来はこのグラウンドに学校を建設する予定であった。

しかし、工事が始まる度にトラックが事故を起こして運転が死亡、工事現場の監督が通り魔に殺害される事件、工事を再開しようとすると台風が突如発生する災害、近所の老人が自殺を図った事件……。

この地に建物を建築しようとすると、まるで運命が妨害するように偶然が何回も起こった。

100回連続で工事が始まらないという曰くがあったので、グラウンドの土地に学校は作らないということが決まったらしい。


第5ギフトアカデミーのグラウンドはドラゴンの怨念が渦巻く呪いの地として、オカルトマニアには伝わっている。


そんなのはただの言い伝え。

古い古いおとぎ話。


「でも俺だけが知っている。この噂は本当だ……。このグラウンドにドラゴンは眠っている……」


第5ギフトアカデミーのブレザーに身を包む3年生の男子生徒が居た。

いつも周囲には溶け込まず、オカルトの本を読んではニチャアと笑う男・塩田である。


彼は霊感が強い。

幽霊を人間と同レベルでクッキリと見えてしまうほどに、塩田は見えてはいけないものがよく見える。


「この土地は呪われている……」


グラウンドには怨霊が溜まり、その怨霊が学校どころかこの土地全体に広がっている。


「前のハーフデッドゲームという恐ろしい殺人ゲームが起きたのは明らかにこの怨霊に当てられたと見て間違いない……」


第5ギフトアカデミーでいつかに起きたハーフデッドゲーム。

彼もまた、ハーフデッドゲームに巻き込まれていた。

24時間以内に体育館の人数が半分になるまで殺し合うという恐ろしいデスゲーム事件。

犯人はゲーム開始直後に、突然憑き物が落ちた様に改心してギフト管理局に捕まった。


塩田はこのことについて、犯人は霊に見離されて正気が戻ったのだと認識している。

急に自首をした姿はまるで操り人形の様に写った。


「怨霊が突然抜けたんだろうな……。この怨霊共が反逆し、街を支配するのも時間の問題だ……。そんなことさせねぇ……!俺がこの地を、いやこの世界をも支配するんだっ!」


グラウンドの上にはがしゃどくろ、かまいたち、火車、一つ目小僧、ろくろ首などの人ならざる者らが我が物顔で蔓延っている。

それもこれも、このグラウンドの地に眠るドラゴンが養分になっているのだろう。


「ふふふっ、俺がこのドラゴンを復活させてやる……!みんなみんなバカにしやがって!全ての人間を奴隷にしてやるんだっ!ドラゴンによる恐怖政治だっ!」


怨霊の反乱、ドラゴンがこの地に眠っていること。

塩田はこの話をする度に周囲の人に笑われ、嫌われていった。


「見えていないバカ共なんかどうなったって良い!俺はここで、ドラゴンを復活させるんだっ!ギフト使用!『伝説の復活』!」


塩田のギフトは、伝説を復活させるという能力だ。

彼のギフトさえあれば、アトランティスやオーパーツなどなんでも蘇らせるチート能力である。

それを昨日発現し、塩田は手始めにこの地に眠るドラゴンを復活させる。

ゆくゆくは塩田加茂という名を世界中に知らしめて、全てが思うがままの世界を創りあげる。


「ふはははははっ!蘇れドラゴンっ!この世界を滅ぼせぇぇっ!」


既に人々から忘れられしドラゴンの秘密。

この地に眠る『いにしえのドラゴン』は世界を滅ぼす力を持ち、神に匹敵する強さを持つと呼ばれていた。

長い長い年月が経ち、忘れ去られた邪竜。


それをこの塩田という男は復活させる。


グラウンドの地に蔓延っていたがしゃどくろや一つ目小僧などの怨霊は石になって砕けたのが塩田の視界に写る。

養分にしていたドラゴンから逆に養分にされてしまったのであろう。


──そして。





『グオオオオオっ!オオオオォォォォォ!』






いにしえのドラゴンが蘇った。

翼を生やした5メートルほどのドラゴンだ。


「凄いっ!凄いぞドラゴン!」

『グオオオオオッ!』

「さぁ、ドラゴン!俺からの命令だっ!この世界を滅ぼせっ!」

『ダマレ』

「ガッ……」


塩田の腹に風を斬った衝撃波が貫通し、血反吐を吐く。

何が起きたのか、全然理解できなかった。


「な、……んで……!?」

『フッカツサセテモライ、カンシャスルゾ!シカシ、ニンゲンゴトキガドラゴンヲアヤツレルトオモウナ……シネッ!』

「グフッ」


尻尾が塩田の心臓を貫き、塩田は絶命した。

それを確認したドラゴンは塩田だったたんぱく質の塊を捕食し、呑み込んだ。

世界中の支配を企んだ男の末路は、ただのドラゴンのエサに過ぎなかった。


『ウマイ!ウマイゾ!ダレニモ、ダレニモドラゴンハトメラレヌ!』


ドラゴンは復活に歓喜していた。

神への復讐。

ドラゴンの思考は自分を封印した神への怨みでいっぱいであった。


『カミヨォォォ!ユルサヌゥゥゥ!フッカツダァァァァァァァァ!』


ドラゴンは咆哮する。

その咆哮へ共鳴する様に、その神は現れた。




『クハッ!クハハハッ!』




楽しそうに、彼女は演技がかった笑いを浮かべる。

全ての神であり、概念。

エニアの登場であった。

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