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69、綾瀬翔子は公言する

「そもそも『宮村永遠は中古なのかどうか!?』ってなに……?そんなのどっちでも良い……」


円は『その議題はしたくないよね?』というニュアンスでアヤ氏の共感を得ようと彼女を見た。

しかし、空気を読めない彼女は円に食らいつくように元気な声を上げだした。


「円氏!どっちでも良いは聞き捨てならねぇ!この問題はな、織田信長の死体が見付かってない問題並みに重要な話しなんだよ!わかったかっ!?」

「待って!?なんで綾瀬まで敵対してるの!?」

「三つ巴という環境だな!痺れるーっ!」

「あんただけ勝手に痺れて感電しなさいよ」

「円氏、つめたぁ!?ちょっと明智氏!?円氏がオレっちに冷たすぎるんだけど!?」

「大丈夫。円はアヤ氏に冷たいんじゃなくて、みんな平等に冷たいから」

「それ、褒めてる?」

「ベタ褒め」


俺なんか妹の和と一緒にゴミクズ扱いされていたから、むしろ失礼しかしていないアヤ氏に対してもまだまだ優しくしている方である。

そんな冷たいクールなところが、円と来栖さんのギャップがあって素敵なんですけどねっ!

分かりにくい円の愛情である。

咲夜などと仲が悪い風に見えるが、仲良しなのを知ると本当に可愛いのだ。


「なーんか、先輩らの友情は歪んでるな。原作のあんたら並みに歪んでる」

「原作に秀頼と円の絡みなんて数えるほどしかないだろ」

「全然覚えてないわね。私、ゲームの明智君と絡みなんかあったっけ?」

「あぁ、ユーザーには伝わってない廃れた秀頼と円の関係性……!オレっちの妄想退廃推しっプルなのにっ!」

「妄想かよ……」

「原作の円が秀頼に恋心を押し付けて、それを見ない振りしつつ無下には扱わない絶妙な距離感であって欲しい!」

「知らないわよ」


アヤ氏の中の原作津軽円の解釈面倒過ぎない……?


「でもさぁ、明智氏?秀頼に襲われて中古じゃないはあり得ないっしょ」

「エイエンちゃんはヒロインだぜ?主人公のタケル以外から乙女を奪われる不名誉なんかあるかぁ!そんな悲しい現実嫌だろっ!?」

「お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中ではな」

「なんで急に突き放すのさ」


アヤ氏が目のハイライトを消しながら、酷い現実を投げ掛ける。

確かに秀頼に襲われて胸だけ揉まれて終わりみたいな可能性の方が低いけど……。

煮え切らない……。


「ん……。大体さ、明智氏は宮村永遠が大好きなんだろ?」

「あぁ。前世のギャルゲーのヒロインで1番推してたさ!こんな完璧なギャルゲーヒロインがいるんだって感動したもんさ」

「私としては中々複雑な話……」

「うーん!良いねぇ!オレっちの世界にどっぷり浸かってくれて最高のファンだぜ明智氏。もうオレっち、照れ照れだ。いや、もうデレデレだ」

「お前は誰視点なんだよ」


何故か顔を赤くして、眼鏡越しにニヤニヤしているアヤ氏にちょっと引いてしまう……。

別に綾瀬翔子の世界に浸かっているつもりは一切ない。


「おっと、脱線したな。なら、明智氏が宮村永遠が大好きなら別に明智秀頼がはじめてもらったとしたら光栄じゃないか?お前のその身体の持ち主がはじめてをもらったと思えば……。ノーダメじゃない?」

「ノーダメじゃない」

「えー?」

「だってタケルとエイエンちゃんは愛しあっているのに、そんな美味しいとこだけ秀頼が食べちゃったってことだろ?モヤモヤするなぁ……」

「(ほんっと、オタク商売はメンドくせっ。特に宮村永遠ファンはリアル本能寺といい、明智氏といいキメェ奴ばっかなんだ?)」

「なんか言った?」

「べっつにー☆スタチャスマイル☆」

「スタチャスマイルを逃げに使うな」


ボソボソっとアヤ氏が小声でなんか文句を言っていたことだけは確かである。


「そんなに明智秀頼を嫌ってやらないでくれよぉ!オレっち、秀頼ファンなんだから!」

「はぁ!?」

「はぁ!?」

「うわっ、ここでも理解されない秀頼好き……」


俺と円が同時に驚愕の声を上げた。

リアルで明智秀頼好きを公言する人をはじめて見たことにより、まるでネッシーやツチノコでも見た気分になる。


「なんか、こう、人間の溜め込んだ闇が全部詰め込まれていて最高じゃないか!?キャラデザもさぁ、タケルと対照的に凝りまくっててさ!オレっちが女なら犯されたいって欲望を詰まれまくり……!あぁ、秀頼ムカつくけど大好きなんだっ!秀頼死ねって思うけどヤンデレ的な理由で好きなんだっ!秀頼からヒロインたちを守らないと!と思いつつ、犯すならオレっちにしてくれっていう……。憎悪と好意がほどよいバランスにあるのっ!でも、秀頼死ね!でも、秀頼死ね!でも愛してるっ!」

「ほら、恋人候補から新しい告白されてるわよ」

「やめろ」


こんなロマンチックさも、エモさも、尊さも欠片も見当たらない告白もあるんだなぁとちょっと遠い目になる。

アヤ氏の暴走特急は癖が強すぎる速さである。


「お前、前世BLの気があったとか?」

「ノンノンノン。オレっち、実はノンケ」


BLだったとしても、一切偏見はなかったが、アヤ氏はノンケを誇らしそうにしていた。


「え?綾瀬って前世男なの?」

「当たり前だろ!自分をオレっちなんて呼ぶ女がこの世にいるかぁ!」

「男でもオレっちなんて呼ぶ人いるかなぁ?」

「オレっちだって前世では普通に俺って呼んでたっての!でも、今のオレっちに息子が無いんだよ!うわぁぁぁぁ!だから女になりきるために妥協してオレっちなんだよ!親の前では私って使い分けてんだからな!」

「わかったから落ち着いてくれアヤ氏……」


アヤ氏の男の叫び……、ではなく女の叫びが響いた。

おばさんが聞いていたら何事かとざわざわすると悪いので、もう少しボリュームは下げて欲しいものである。


「はっ!?やべぇことに気付いた!」

「うわぁ!いきなり落ち着くな!」

「んなことより、やべぇこと?」

「円氏……」

「ん?」


突然激しい動きが止まったアヤ氏は円を恐ろしい目で見てきた。


「もし……、もしかして円氏の前世って男……?」

「はぁ?んなわけ」

「よくよく考えたらしゃべり方も男っぽい!オレっちと同族だね……」

「一緒にしないで!違うわよ、女よ。ずっと女」

「えぇ?前世女ぁ?」

「めっちゃガッカリしてるじゃん……」


明らかにテンション下がったように大口を開けたアヤ氏。


「しゃべり方が男っぽいって失礼ね。小学生の低学年まで本物の津軽円として生きていたからこんなしゃべり方しているだけよ!」

「へぇ」

「なんで明智君が驚いているのよ……」


来栖さんとのしゃべり方全然違うじゃんと思ったらそんな秘密があったなんて知らなんだ。

純粋に感動した。


「女で『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズをクリアしてくれたのか!ありがとう、円氏!」

「だからなんであんたはスタッフ側の意見なのよ!」

「女には三島遥香がウケる。やっぱり男と女の感性は違うな」

「おい、三島を不人気扱いすんじゃねーよ馬鹿野郎!」

「えぇ……。なんで永遠ファンにブチ切られてるのオレっち……」


それは、三島が俺の愛しい彼女だからである。

なんか、今三島を下に見ていた気がして凄くイラっとした。

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