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68、明智秀頼の地雷

「はぁ!?私、津軽円ですけど!?」

「んーっ?いや、そういう意味じゃないんだけど……」


アヤ氏は困ったように俺の顔に視線を移す。

『そうなんやろ?』と言いたげに、こちらに眉をひそめた顔を見せてくる。

無駄に無駄に無駄に鋭いところがあるとアヤ氏のことについてわかったような気がした。


「津軽円氏?つまり、明智氏と同じでしょ?」

「ん?明智君と同じ……?なにが?どういう話をしたいわけ?」

「前世の記憶があるとかそういう話」

「え……?」


円は戸惑い、驚愕して「え……?」とまた漏れてこちらに視線を向ける。

『え……?』と言いたげだが、混乱して頭がまわっていないようだ。

あと、いちいちアヤ氏も円も俺に助けを求めるようにしてアイコンタクトをしなくても良いのにと、仲介人になっている小並感な感想が頭に浮かんだ。


「ちょっとちょっと明智君」

「ん?」


円が拉致が明かないと感じ取ったのか、部屋の隅に俺を追いやる。

「ちょっと待ってなアヤ氏」と、彼女に釘を刺して、円とこそこそ相談タイムに移る。


「(わ、わ、わ、わ、私、前世持ちってバレちゃった。ど、どうしよう?ツイッターとかユーチューブで晒されない!?)」


ガチガチにテンパってしまう円。

こそこそ小声で話しているのに、わりとボリュームがあるくらいには動揺していた。

クールに振る舞う円にしては珍しい姿が見れたものだと驚きながらも、なんとか安心してもらおうとこちらは緊張と動揺を見せないように務める。


「(晒されないよ……。俺も前世持ちってアヤ氏には教えてあるから)」

「(えっ!?ちょっと!?教えてしまって良いことなの!?)」

「(俺たちと同じ境遇なのよ)」

「(…………え?)」


円に彼女の真相を伝えると、ピクッと目を開けて丸くなる。

その一言ですべてを伝えられたけではないが、今回呼んだ動機くらいは察しただろうか。


「明智氏ぃー、円氏ぃー、こそこそされるのはオレっち傷付くぅぅぅ!心臓に釘が打たれたような痛さだぜっ!」

「藁人形で呪われるようなことしてるの?」

「え?えーっ、このアホっぽいのが私たちと同じ……」

「アホっぽいというか、アホだ」

「明智氏、オレっちをそんな目で見てたんだね!酷い!女として見てないなんてっ!」

「それはそう。両方肯定」

「今の覚めた感じ、ダウナー時代の豊臣君みたい……」

「誰だよ、豊臣って」


結構、アヤ氏に対しては魂が根っからの毒舌オタク仲間として素になりやすく、腹を割ったようなくだけた口調になる傾向にあった。

結果、最近はずっと明智秀頼として人と接してきた円からはすぐに違和感を感じ取れたようだ。


「もしかしてこの円氏、前世持ちだったりする感じ?オレっちと同じ?」

「あんたと同じではない。ただ、明智君と同じ前世持ちよ」

「ん?オレっちは明智氏と同じ前世持ちだ。なら円氏とオレっちと同じ前世持ちでは?」

「あんたと性別と人間であること以外の共通点があるのが耐えられない」

「オレっちの扱い酷くない!?明智氏ぃぃぃ……」

「まぁ、今までの流れでアヤ氏に対する円の好感度が上がるわけもなく下がり続けているのは間違いないよね」

「同じ境遇なのにっ!」


こうして、前世持ち3人が集結したことになる。


因みに、(織田はハブかよ)と中の人から茶々を入れられるが、あの人が今どこにいるかも知らないし、興味すらない。

彼、別に原作知識とか無いみたいだし、一般人扱いである。


「アヤ氏も俺らと同じく『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズをコンプリートしている」

「ふっふっふ!好きなヒロインはアリア様!圧倒的にアリア派な綾瀬翔子だぜっ!円氏は誰が好きなヒロインだいっ!?」

「私?……好きなヒロインは三島遥香の津軽円よ」

「へぇ!本編では全然出番ないのに推してくれてサンキューだぜぃ!」

「あ、そうなんだ……」


円と三島の絡みとかほとんどないから一切知らなかった……。

しかし、よくよく考えると円が仲が良いのは絵美や咲夜などヒロインから外されている子たちばかりなので、推理のしようがない。


「綾瀬の今の発言は誰目線の感想なのよ?」

「そりゃあ、製作スタッフ目線の感想だ」

「なんでそんなスタッフ目線の感想が真っ先にスパッと出るのよ」


アヤ氏の渾身のギャグを真に受ける円。

もう少しスルースキルを身に付けるべきではないだろうか……。

「面白いねぇ!円氏っ!」と、やたら元気なアヤ氏である。


「明智氏の好きなヒロインは誰だい!?推しを教えてくれよ、プリーズ!」

「あ!?バカやめなさい!」


俺にも好きなヒロインを尋ねてくるアヤ氏。

そんなの考えるまでもなく、口に出していた。


「エイエンちゃん!そんなの当然の如くエイエンちゃんに決まっているじゃないかっ!」

「ほーら、また始まった……」

「おう、来たな中古ヒロイン。エイエンちゃんファンはやべぇ奴しか居ないんだよなぁ」

「誰が中古だ、ゴラ!ライオンの檻に放り込むぞこのアマァ!」


一瞬で地雷を爆発させたアヤ氏にブチ切れた。


「こ、こわぁ……。ま、円氏……」

「明智君の堪忍袋の尾を一言で引き裂いたわね……。マジで彼に中古は禁句なんだから……。呪いの言葉のようにしつこくなるわよ……」


経験者である円が後輩にアドバイスをしている。


「大丈夫だ、円。俺は堪忍袋の尾なんか切れちゃいないさ」

「だ、そうよ。良かったわね綾瀬」

「ふぅ。明智氏を怒らせたのかと不安になったぜ……」

「今回アヤ氏を呼んだのは、この世界を生き抜くための原作対策のためなんだ」

「原作対策とな。なるほどなー」

「そして、最初に話し合うべき話題が決まった」


──自信満々に宣言する。


「ズバリ『宮村永遠は中古なのかどうか!?』これに決まった」

「綾瀬!この野郎がっ!」

「めちゃくちゃキレてるじゃん明智氏!?」


こうして、記念すべき3人トリオでの原作対策会議が始まった。

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