番外編、いつもの元旦
明けましておめでとうございます!
今年もボチボチ連載をしていきます。
新年開始ということで、番外編を挟ませていただきます。
今回の時系列は、話の展開上すっ飛ばした秀頼たちが1年~2年に進級した際の年末年始になっています。
新年からいきなり原作SIDEを描くのはちょっと辛いので、息抜き回をやらさせていただきます。
「今年の紅白性癖暴露大会を見ていると年末って気がしてくるなぁ……」
テレビにかじりついて見ているわけでもなく、ただテレビを流しながらスマホを弄り、いつも通りな年越しを部屋でいまかいまかと待っていた。
転生する前は歌の大会だったが、シナリオライターの桜祭の趣味が反映されたのかよくわからん番組を毎年放送しているようである。
『スタチャスマイル☆来年のスタチャもあげあげでいくぜぇ!いぇい、いぇい!』
『ちょっと、ちょっと、スタチャ!早く順番が来たんだから積み上げて!』
『スタチャ、超迷う』
俺のスマホに映るのはリーフチャイルドのユーチューブチャンネルで、年末スペシャルゲストとして招かれたスターチャイルドと一緒に年越しまで遊ぶ配信を眺めていた。
今は、ジェンガをしながら2人で駄弁りながら遊ぶという内容でスマホが映っている。
「これ、達裄さんの家やんな……」
見覚えのある壁を背景に、近所の遠野家から配信されていることをスマホで眺めているという事実にちょっと面白くて頬が緩む。
遊びに行こうと思えば行ける距離での配信を、わざわざWi-Fiを通してスマホで見る贅沢さ。
最高である。
「スタチャとリーチャを目にしながら年越すとか幸せ過ぎて来年死ぬかも……。尊い……」
涙目になりながら、世界で1番の楽園の映像を視聴しながら感動していた。
幸せ過ぎて死ぬというより、死亡フラグを踏み抜いて死ぬことになりそうではある。
『あー!崩れたぁ!』
『スタチャスマイル☆スタチャWINNER!』
スタチャとリーチャのジェンガという遊びが終わると年明けまで残り3分を切った。
それに気付いたリーチャがスタチャと一緒にカメラの前でトークを語りだす。
コメントを広いながら2人が笑ったり、質問に答えていたりとその3分も惜しみなく視聴者へと向き合った。
『3、2、1…………、スタチャスマイル☆』
『あ!?ずるっ!?』
スターチャイルドの笑顔であるスタチャスマイルを目にしながらスマホの日付が0:00を表示した。
『アーカイブには残すよー。それでは良いお年を。リーフチャイルドでしたー』
『ゲストのスターチャイルドでした』
『今年も応援よろしくっ!』
リーチャの挨拶で締め括られた。
そして、動画は終わりになり視聴画面から追い出された……。
「…………なんかあけおめライン山ほど来てる」
一気に30通以上のメッセージがドシドシ送られてきた。
返信しなきゃと指を動かしていくと、最初の送り主は深森美鈴だ。
美鈴のトーク画面を開いているだけで5通のメッセージが送られてくる。
「…………俺、寝れる?」
恐ろしい事態に気付いた瞬間だった……。
─────
「おっはよぉぉぉ!秀頼きゅぅぅぅぅん!」
「…………おは」
「元気がない!」
次の日の朝8時過ぎ。
いつものようにおばさんの報告もノックもなく、俺の部屋が開けられてツインテールにした佐々木絵美が元気に部屋へとやって来た。
「明けましておめでとうございます秀頼君!」
「おめでとう……」
「元旦から元気ないなぁ」
「12時ちょうどに来たラインの返信で3時間持っていかれた……。まだ5時間も寝てない……」
「不健康だなぁ……。やっぱりそうなってたのね……」
「あけおめライン送らなくてありがとう絵美」
「複雑な感謝のされ方!?」
絵美なりの気遣いに気付いていて、のそのそとベッドから起き上がる。
まだスウェット姿の寝起きなので、絵美にこの姿を晒すのが恥ずかしい。
「年賀状は送ったからねー」
「俺も絵美に年賀状送ってるから、昼くらいに届くかも……」
隣の家ならば、ポストと郵便局を経由しなくても直接届けることが出来るのだが、それでは風情も何もないので毎回ポストに年賀状の山と一緒に絵美のぶんも混ざっている。
「とりあえず飯にしよう。飯」
「おばさんがお餅焼いてくれるって。わたしもおいでって誘われてたから朝食取らないできたから」
「よし、一緒に行こう」
毎年同じ流れで、絵美と元旦の朝を過ごす。
寝癖を直し、顔を洗い、歯磨きを済ませて私服へと着替えていく。
毎回着替えを見たがる絵美は部屋の外へと追い出して、廊下で待ってもらっていた。
簡単な支度を終わらせて、居間へと向かう。
「明けましておめでとう秀頼に絵美ちゃん」
「おめでとうございます!」
「おめ……」
おばさんから出迎えられて、自分の席へと座り込む。
「朝から元気やね絵美ちゃん。今年もよろしくな」
「おじさんもよろしくお願いいたします」
おじさんも絵美とそんな新年の挨拶を繰り広げていた。
見慣れない2人のやり取りに、幻覚かと思い頭が痛くなった。
女大好きおじさんが絵美にちょっとデレデレしているのが、最高に気持ち悪い。
本当にいつもの元旦である。