58、平和の象徴【怠惰】
【原作SIDE】
「はぁぁぁ、つまんねぇーな……」
こういう時、今までは暇さえあれば絵美と飯食ったり、彼女から膝枕とかしてもらったりなにかしら尽くられていた。
しかし、もうこの世界に絵美が居ない以上、そういった暇潰しは不可能になった。
「………………」
失った存在は意外と大きかったようだ……。
スマホには100弱の女の子の連絡先が存在している。
上は34歳の看護師から下は12歳のテニスが弱っちいテニス部の少女までずらっとならんでいるが、絵美の変わりになる子を決めていないので、誰1人奴隷にしていなかった。
やっぱり、俺にとって絵美は彼女だけであり、絵美の変わりは誰にもならなかった。
絵美に飢えて、恵美って名前の違う女の子とも関係を作ったがなんか違う。
「はぁ……」
俺、絵美に甘えていたんだったなぁ……。
あいつがいない部屋にイラつき、広すぎる家で寂しさを覚えた。
自分で消しておきながら、やらなきゃ良かったという後悔が波のように押し流れてくる。
そんなたまにそんな濁流に呑み込まれて死にたくすらなってくる。
「けっ……。つまんねぇーな」
タケルからなんかわけわかんねぇラインのメッセージを受信する。
既読を付けて、文章も読まずにスタンプだけ送る。
1日意味もなく2回はライン送る男のメッセージなんかこれで充分だ。
今頃タケルが『いや!可愛いラインスタンプ送られてきたけど、質問の答えになってねぇ!』って騒いでいそうだ。
20秒経ったらまたタケルのメッセージを受信するが開く気にもならず、テーブルにスマホを置いた。
誰か、俺の側にいて欲しい……。
家族も、幼馴染の恋人も消した俺は、一生乾かない孤独というものを抱えて生きることになる。
最低な気分だ……。
コップに注がれたコーラを一気に飲み干し、「はぁ……」とため息を吐いた。
「ふふふっ……。秀頼ったら、今日は荒れてるわね」
「サーヤか……?」
「わかっていて聞いてくるんだから。い・け・ず」
ソファーに座っている俺を背中から抱き締めてくるサーヤ。
そりゃあ、勝手に家に上がって来れるように明智家宅の鍵を預けている唯一の存在だからわかるに決まっている。
本来は絵美に渡していた鍵を譲り受けた形になる。
「孤独になっちゃったかしら?」
「あぁ……。寂しいねぇ……」
タケルからジャンジャンラインが来ているらしく、スマホのバイブが止まらない。
俺の光はそこにあるが、眩しすぎて今はタケルとまともに連絡出来そうにない。
「うりうりうりぃー」
「今日はスキンシップが激しいじゃないか?」
「いつでも秀頼には激しくいたいの」
背中から首を伸ばし頬づりをしてくるのを黙って受け入れた。
俺は目を細めながら、その快楽に身を任せた。
何も考えたくない。
何も見たくない。
何も聞きたくない。
何もやりたくない。
何も動きたくない。
今だけは、怠惰に生きたい……。
「黙っている秀頼は可愛いわぁ」
「屈辱的だな、そういう言葉……」
いつの間にかソファーの後ろから移動して、俺の目の前に立ったサーヤがクスクスとサディスティックに笑っていた。
そういう振る舞いが好きなだけで、ベッドの上ではマゾっ気の方が強いのだから面白い女だ。
「普段が格好良すぎるから、たまに可愛いくらいでイーブンなの。ギャップ萌えっていうやつよ」
「ギャップ萌えねぇ……。低俗な言葉だな……」
「でも、妾はギャップ萌えは嫌いじゃないの。むしろ好き」
「物好きだねぇ……」
「ひでよりーっ!かわいいっ!」
サーヤから正面から抱き着かれ、お腹へと顔を踞る。
そんな仕草が愛らしく、彼女の頭を撫でた。
「…………」
でも、やっぱりサーヤが1番好きかと言われたらそうだと断言を出来そうにない。
円でもないし、絵美でもない。
古瀬でもないし、村沢でもないし、悠久でもない。
スマホにある連絡先が登録された女をざっと1クラスぶんの40人程度がパッと浮かぶがやはりピンと来ない。
何年も前からそうなのだ。
やっぱり俺が1番好きなのはあいつしか居ないっぽい。
同じクラスの佐木詠美が俺にとってナンバーワンだった。
「じーっ…………」
「なんだ、サーヤ?」
「秀頼……。今、違う女を考えていた……」
「考えていただけさ。今、見えているのはサーヤだけさ」
「相変わらず悪い男」
「でも、好きだろ?俺もサーヤが好きだ」
「好き。妾も秀頼好き」
昂った気持ちと欲望をそのまま従い、ソファーにサーヤを寝かせる。
「ねぇ、秀頼?今日は処●喪失する感覚でヤリたい。秀頼のことは憧れていた先輩という設定でシヨっ?」
「純粋だねぇ!年下を先輩という扱いにしたいとか歪んでる歪んでる。採用、そうしよう。すぐしよう」
いつものようにギフトを発動する。
女の認知を歪ませるように、俺は命令を口にする。
「【サーヤは自分を処●だと思い込め……。そして、俺を憧れていた先輩だと認知を変えろ】」
「…………はい」
「俺の名は?」
「あ、あ、あ、あ、明智先輩!?あれ!?なんで私、明智先輩の家に……?」
「良いんだよ、サーヤ。全部気持ちはわかってる」
「えぇ……!?」
「相変わらず太くて良い脚してるな。まずはキスからだ」
「ん……」
サーヤの認知を歪めたイチャイチャをソファーの上で1時間程度楽しむのであった……。
久し振りの補足。
連載初期ではセカンド以降、秀頼の暗躍を味方する雌豚役の女性を作る構想はありました。
本来は原作キャラクターとか、秀頼の親戚とか色々練っていましたが没になりました。
そのままセカンドからは秀頼単独で暗躍する予定でしたが、気付けばサーヤがそのポジションを担うことになりました。
原作でもクズゲスでも扱いやすく、都合の良い女として書きやすくて素敵なキャラクターになりました。




