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54、ヨル・ヒルの嫉妬

「華子は料理も上手で、コーヒーも上手に淹れられて天才だ!君みたいな彼女で、俺も誇らしい」

「ふ、ふん……!及第点だな!」


ちょっと嬉しそうな、それでいて反発するようにヨルも胸を張りながらデレて見せた。

あー、ウチの彼女はツンが多めですが、デレるんですよ、なんて言い触らしたくなってくる。


「……なんかあったか?悩んでいるのか、明智?」

「…………」

「出会いからちょっとピリピリしてたよな?あたしはとっくのとっくに気付いているぞ」

「そ、そうか……」


そして、彼女は俺の微妙な変化を察していたようだ。

絵美や円からもそうなんだけど、俺は本当に気分の落ち込みを悟られやすいようだ。

だから、勘が鋭いみんなからはすぐに悩んでいるのを察しられてしまうようだ。


「どうした?それともそれは、お前が抱え込むべき悩みなのか?無理に聞き出しはしない。明智があたしに打ち明けたかったら、打ち明けてくれ。無理矢理には聞き出さねーから……」


それからボソッと「彼女なんだから力になりたいんだぞ……」と小さく呟く。

そういう義理堅い性格に、自分の親友の十文字タケルと重なった。

本当に彼が親となり、ヨルを育て上げたことをより痛感させられる。

だから、俺はヨルに悩みを伝える覚悟をした。

彼女に悩みを打ち明けるためにどんな切り出しをしていくのか。

「じゃあ伝えるよ」と言いながら、悩みの種のことを頭で整理していく。


「ズズズズ……。ズズズズ……」


コーヒーで口の中を苦さでいっぱいにして、考えをまとめていった。


「華子……。いや、ここからはヨルと呼ぶか」

「どうした?というか別に今さらどっち呼びでもいいよ」

「そうか。や、やっぱり華子にする?使いなれたヨルにする?」

「お前、たまに呼び方こだわるよな……。面倒だからヨルでいいよ!無理して慣れない呼び方すんな」


ヨルからはやはりヨル呼びを推奨される。

真面目な話をするので、ここはやはりヨル呼びで説明をしていこうと決める。

「ヨル、話をする」と切り出した。


「どうした?若干シリアス顔になってるが?なんだー?」

「ギフト狩りに狙われている……とは断定出来ないが、狙われるかもしれないという相手がいる。その子を助けてあげたい」

「ギフト狩りっ!?おい、どういうことだ!?」

「まだ確信は持てないが……。一応、保険として、な……」


原作をなぞる可能性が100パーセントでない以上、断定はしない。

しかし、起こりそうということは事前に明かしておく。

俺の身にも危険な目に遇わない保証はどこにもないのだから……。


「それにギフト能力も結構大物みたいなんだよね……。ギフトランクが高いってやつ。狙われるには十分って感じ」

「ギフトランクが高いか……。確かに狙われるかもしれないギリギリのラインかもな……」


ヨルが顎に手を添えながら考え込んだ。


「なるほどな……。よし、このことはゆりかと一緒に調べてみる。あいつも元ギフト狩りだし、パイプはあるはずだ」

「ありがとうヨル」


ゆりかも巻き込まれたら、彼女にも謝罪と謝礼はするべきだろう。

ゆりかのクラスか、部活か、はたまた街で遭遇した時かはわからないが、彼女へのフォローも入れておく必要はありそうだ。

やらなければならないことがだんだん固まっていく。

茂を護る算段を見付けられそうだ。


「な、なぁ明智……」

「どうしたのヨル?」

「お、お、お、お前の……話に出てきた『助けてあげたい子』というのは……。その……」

「ん……?」

「女の子なのか!?」

「え……?」


佐木茂。

まぁ、確かにタケルみたいに中性的な顔付きであるが男である。

考えるまでもなく男だ。

…………ちょっとは妬いてくれているのだろうか?

嫉妬をされるのも、なんか嬉しさがあるな。


「違う、違う。男の後輩だよ」

「本当に男か!?名前はなんだ?」

「し、茂だよ!茂君!」

「ほっ。男か……。なら良かった」

「やきもち妬いてくれたか?」

「嫉妬の炎を熱く燃やしたぜっ!」

「いや、カッケェーなオイ!?」


メインヒロインのヨル語録が炸裂していたのであった。


「…………」

「おい、なんだその目は!?」


ヨルに対して微笑ましく笑っていると、気にくわないとばかりに噛みついてくる。

たまに狂犬ヨルちゃんに早変わりである。


「いや、なんでも……」

「明智に助けられた女はみんな明智に惚れるから正直男で安心したなんて思っちゃいねぇぜ!」

「聞けよ!?てか、思ってないんかい。なんの宣言だよ!?」

「助かったー!男で良かったぁぁぁなんて思っちゃいねぇぜ!」

「わかったって。そんなに連呼していると本当に心の底から安心しているみたいだぞ!?」

「じ、……実はな……。安心してる」

「してるんかい」

「明智の恋人が増えると、あたしで抜く回数減りそうだし……」


そんなことを言われると今日の夜はヨルで抜いた方が良い気分になる。

今日は島咲さんで抜く番であったが、ヨルの順番と入れ換えた方が良いなと、変更を余儀なくされる。


「と、とにかく!シゲル?とかいう男と付き合うのは禁止な!」

「安心しろ。俺、ノンケだから。それにDDDメンバーで付き合うとか、抜くとかもないから」

「DDDメンバー?」

「それは関係ない!なんでもねーよ!」


危ない危ない……。

脱・童貞同盟の情けない正式名称を曝してしまいそうになっていた。


「ふーん……。DDDって?」

「ああ!それってドラゴン・ダイス・ダンジョン?」

「そ、そうなの……か?」

「そ、そうなの……?」


とりあえずヨルへDDDについては嘘の情報で誤魔化したのであった。

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