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47、十文字タケルはとっくに気付いていた

因みにこの場にいる4人全員が童貞である。

俺と茂は言わずもがな。

山本は長谷川雛乃という彼女がいながらも、進展が遅いタイプ。

タケルは何故か彼女がいないというギャルゲーとしては致命的なバグを持っている。

もしかしたらタケルは、ファイナルシーズンのキャラクター攻略待ちなのかはよく知らんが……。


「DDD……。同盟か。まぁ、楽しそうではあるな」

「佐々木は西軍作ったり、秀頼はDDD作ったりと幼馴染とはいえ、思考が同じ過ぎる……。お似合いだなぁ、こいつら……」

「タケル……?」

「お互いが大人の階段が登るために情報を共有するか。楽しそうだな。俺たちもシンデレラになろうじゃねぇか」

「ならないならない」


タケルの天然に否定しておく。

男たちの目指すべきはシンデレラではなく、王子様の方である。


「じゃあ、全員がDDD所属ということで」

「うわぁ!凄い!チームプレーですね!僕なんかが先輩たちの輪に入れて光栄です!」

「なんで『脱・童貞同盟』のメンバーに入れてそんなに嬉しいんだ?DDDなら誤魔化せるけど、正式名称聞くと抵抗ありそうだが……」

「十文字先輩の言うことも確かですが……。僕、学校ではボッチなので先輩方とワイワイ出来るのが楽しいんですね!」

「う……!?サッカー部のウェーイ系にはいない子犬タイプの後輩だ……。目がギラついてなくて、明智が可愛がるのもわかる」


早速、茂もタケルと山本に慣れたようで一安心である。

まぁ、きちんと茂に合うタイプの人選をこちらでチョイスしているというのもあるが……。

逆に白田のような穢れたタイプのような人に、茂を紹介する勇気はなかったが……。


「佐木。君の女性のタイプはどんなのだ?」


山本が満を持して茂に切り出した。


「ふっ。愚問だな、山本。指原タイプだ」

「なんで明智が答えるんだよ!?佐木に聞いたんだよ!?」

「ま、まぁ言ってしまえば指原タイプですかやね……」

「女のどういうところが好きだ?」

「腋と脚ですね」

「好みがまんま明智じゃねーか……」

「だから秀頼とこんなに息ピッタリなんかい!」


あれ?

俺、脚好きの趣味をタケルにも山本にも教えた記憶ないのに何故か知れ渡っている。

ドリップコーヒーを持つ手が震えている。


「秀頼が何故バレたって顔してるぞ山本」

「お前、クラスの女子を脚から上に眺める癖あるの気付いているからな」

「なっ……!?」

「お前、胸より脚の肉付き良い子好きだろ?」

「ヨルとか上松とか美月とか」

「…………お前たちがそう思うんならそうなんだろ。お前たちん中ではな」

「絶対そうだよ」

「それってあなたの感想ですよね?」

「メンドくせーっ!」


まさかタケルと山本に察しられていたとは……。

明智秀頼、一生の恥である。

俺がいない間にこの2人で『秀頼って絶対脚好きだよな?』と話題にしていたと思うとなんとも情けない話である……。


『ふーん……。秀頼君って脚が好きなんだぁ』

『知らなかった……。ひぃ君が脚好きなんて……。変態っぽいね』


…………ん?

なんか真後ろから知り合いの女子2人の声が聞こえた気がした。

いやいやいや、幻聴だよ幻聴。

そう!

これは俺の中にいるイマジナリー中の人がボイスチェンジをした呟きに違いない。

しかし、本人から(いや、してねーよ。そもそもそんな技術ねーよ)と否定されて、さっと顔を青ざめる。


「あ……。佐々木と佐木だ……」


タケルが俺の背中にいるであろう2人に声をかけて確信した。

…………なんでいるの君ら……。


「や、やぁ!絵美に詠美じゃないか!」

「あ、ほんとだ……。今、ひぃ君がスカートから見たね」

「見ましたね。わたしも足元から秀頼君の視線を感じました」

「違うんだってばーっ!」


ドリップコーヒーを1つずつ手に取った2人が引き気味な顔で俺を見ていた。


「まだ胸からの方が納得できるよね……」

「で、でもわたしは胸より脚の方が自信あるんでノーダメですけど」

「エミつえーっ!」


しれっと絵美の自慢話を聞かされていた。

「偶然だねー」と言いながら、2人は俺たちが座っていたテーブルの隣に座り込んだ。

DDDの説明中に2人が現れなかったのがまだ救いだろうか……。


「ってシゲル!?ひぃ君やジューモンジたちに混ざって何してるの!?」

「あ、姉ちゃんにバレた!?匿ってください明智先輩!」

「もう無理だよ」


「姉ちゃんにスタヴァに来てるのバレたくなかったのに……」と茂がボソッと呟きながら、俺の背中を盾にするように隠れた。


「シゲルったらぁ!中学生は寄り道禁止でしょ!?連れ出したのひぃ君でしょ!?」

「こら!茂!姉ちゃんを心配させるんじゃない!」

「なんで明智先輩も裏切るんですかぁ!?」

「なんかノリで……」


盾にしていた俺に叱られ、子犬のようにシュンと小さくなる茂。


「まあまあ詠美ちゃん……。先生にバレてないんだしそこまで怒るのも……。ね?」

「エミは優しいんだからぁー。まぁ、別にそこまで怒ってないよ」

「ほっ……」


茂が安堵の息を吐く。

それを見ていたタケルと山本が『弟は大変だなぁ』と言いたげな苦笑を浮かべていた。

特に山本は末っ子なので、より茂に感情移入しているのだろう。


「『そこまで怒ってない』ってことは『多少怒ってる』ぞ」

「うわっ!?た、助けて明智先輩!?」

「こら、そこっ!余計なこと言うな!」


詠美の言葉の裏を読んでしまい、それが図星だったのを察した瞬間だった。

「まあまあ」と絵美がフォローに入る始末だった。


「や、やっぱり絵美ねぇは優しい……」

「絵美ねぇ?……あぁ!詠美のいとこなら茂のいとこにもなるのか」

「むしろ絵美ねぇと明智先輩が仲良しなのに驚きなんだけど……」

「まぁ、長い付き合いだからね」


家がお隣さんだし、そりゃあ付き合いも長い。


「わたしも秀頼君が茂君と仲良しなのにビックリだよ!?一瞬目を疑ったんだからね!?『アレ!?なんか隣にいる子の弟みたいな子がいるんだけど!?』みたいなさ」

「本人でしたねぇ、絵美ねぇ」

「ガッツリ本人だったな」

「俺ら初対面だけど『あ!佐木の妹なんだ』ってなったし」

「なんかウェーイ系じゃない後輩と一緒にコーヒー飲むとかはじめてだよ」

「ひぃ君と仲良しだからってジューモンジにヤマモトもシゲルと一緒にいるのもよくわかんないからね」


俺たちにしてみたら絵美と詠美のいとこコンビが来るのもよくわかんないけど……。


「姉ちゃんのお友達さん、優しくて面白い人ばっかりですね!暖かいクラスで羨ましいです!」

「そもそも私、ジューモンジもヤマモトともそんなに会話したことないんだけど……」

「だな」

「右に同じ」

「え!?十文字先輩も山本先輩も姉ちゃんと仲良くないんですか!?」

「明智越しでしか会話しないよ」

「ひぃ君越しでもロクな会話ないよ」

「なんか悲しくなるから俺を窓口にするのやめない……?」


俺も詠美がタケルと山本と会話しているところなど見たこともないが、この場においては結構話せることが多いようだ。

ちょっと茂の相談に乗る程度だったが、いつの間にか賑やかになっていたのである。

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