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41、明智先輩はゲーセンに行く

それから上機嫌になったサーヤが「無料で占ってあげるわ愚民」と言いながら、ベタベタベタベタと手を触ったり握ったりしてくる。


「あぁぁぁぁ!性器みたいに触っていて気持ちいい!」と相変わらずの筋肉フェチな占い師サーヤの本領発揮であった。


サーヤなりのアタックなのか、単に欲を満たしているのかはわからないが、俺の手を触りながら満足していた。


「これが妾のプライベートな連絡先。『暗黒真珠佐山』の公式ラインと一緒に受け取りなさいな」

「公式ラインとかあったのか……」

「追加特典として『占い料金10パーセントオフ:レディース専用クポーン』とか配信してるわよ。気軽に登録しなさい」

「俺使えないじゃん。ケチケチしないで男女兼用で使わせろよ。街コンとかマッチングアプリでも男料金ばっかり割高でよ!性別で金額変えるとか男女差別じゃねーか!」

「街コンもマッチングアプリも妾は関与してない……」


とりあえずサーヤのプライベートである佐山ゆり子と、義理で登録した『暗黒真珠佐山』の公式ラインの2つが俺のラインの連絡先に追加される。

フリー素材画像に出てきそうな女性の隣に『女性限定クポーン』とデカデカ表示された。


「次回、それ出せば愚民も割引するわよ。クポーン券の画像をおまかせで外注したら女性限定クポーンって書かれただけだから」

「まぁ、次回に使わせていただくけど……」

「では、いつかは妾を彼女にして大人の階段を登りますわよー」


誰からもされたことない接客をされて店を出た。

ちょっとサーヤとの童貞卒業を期待する反面、彼女のみんなとのそういう行為を妄想する。

ただ、それは彼女同士で優劣を付ける行動に思えてしまい本気で誘いに行けない自分がいる。

昨日、もしゆりかとだけヤってしまっていたら、ゆりかだけが特別みたいに思わせてしまう。

中々難しい問題である。

これは行為以前に、ファーストキスすら済ませられない原因でもある。

いっそ全員で大人の階段を登れれば良いのにな……。


「そういや、原作のタケルってハーレムルートってどんなんだっけ?確か……」


暗黒真珠佐山での用事を済ませた俺はブラブラと道を歩きながら、前世でのパソコンで行われたゲームを必死に思い出す。

確かヨルが特別扱いだった。

メインヒロインだし、それは仕方ない。

本命がヨルで、それ以外の子はそれでもタケルが好きって感じだったはずだ。

ヨル以外にも理沙、永遠ちゃん、美月、詠美、島咲さん、千秋、アリアと付き合うタケルという夢の詰まったファイナルシーズンのハーレムエンド。

10分程度のペラペラボリュームのオマケエンディングだが、よくよく考えるとギャルゲーの倫理観はどうなっているんだ……。

ちなみにド●ゴンボールや超●墓場、デス消●ゴムなどの死んだ人を蘇るような便利アイテムもなければ、便利ギフトも存在しない。

五月雨茜や赤坂乙葉など、死んだヒロインは蘇らないのでタケルハーレムに不在なのが変にリアリティーがあって気持ち悪かった。

裏ではゆりかや美鈴や絵美などのヒロインになれなかった人物も死んでいたはずだ。

なんかそういうのを考えちゃうと素直にエンディングを喜べないんだよなぁ……。

全員ハッピーエンドじゃないと嫌だと思う俺はワガママなのだろうか。

ゲームでも現実でもね……。


「……やめだやめ!パーっと遊ぶか!」


暗黒真珠佐山から駅側に寄り、中規模なゲームセンターが見えてきた。

理沙と遊んだり、美月美鈴姉妹とプリクラを撮ったゲーセン思い出が蘇る。

たまにはスカッとしたいよね。

ゲーセンの自動ドアが開き、意気揚々と店内に入っていく。


「とりあえずはスカッとしたいよね。よし、銃アクションするか」


中学時代、理沙がFPSがどうこうと言い合った系のゲームだ。

あれもFPSなどという意見もちらほらあるようだが、もう昔過ぎて忘れたし、発言を訂正や修正する気にもならない。

そういうのもう良いじゃないか。

銃でゾンビを倒すゲーム、殺し屋を始末するゲームなど銃アクションゲームにも敵が変わるやつがあるようだ。

どれを楽しむのか、優柔不断スキルが発揮して迷っていた時だった。


『明智せんぱーいっ!』と店内で俺を呼ぶ声がする。

「え?」と驚きながら振り返ると、中学生の後輩が目の前に立っていた。


「やっぱり明智先輩だ!僕のこと覚えていますか?」

「あ、あぁ!詠美の弟の……」

「そうです、そうです!」

「詠美の弟!」

「姉ちゃんの弟としか僕を覚えられてない!」

「冗談だよ」


「茂だよな」と言うと、「正解ですっ!」と嬉しそうにしていた。

佐木茂、相変わらず優男風の中性的な顔をした子である。


「明智先輩ってゲーセンとか来る人なんですねー。初知りです!」

「どう見てもゲーセン通いのヤンキーだろ……」


自分を客観的に見ると人相が悪いのでゲーセン通いなんか余裕でしていそう顔である。

なんなら茂みたいな子にカツアゲしている顔だし、未成年でタバコを吸っていそうな顔である。

後者2つはまったく該当しないけど。


「むしろ、茂がゲーセンとか来るんだな……。意外……」

「何を隠そう、僕は『ワル』に憧れているんです!」

「ワルぅぅ?」

「はい!学校で禁止されているアウトローな溜まり場であるゲーセンへ1人で来るという校則を破っているんです。チョイワルですね」

「チョイワル……」

「こないだは校則禁止なのにカラオケに行っちゃいましたから。しかもヒトカラです。学生証も出せなかったので大人料金で支払いました。チョイワルですよね!」

「チョイワル……」


俺は平気で小学生で破っていた校則を、自信満々に茂は破ったと自慢していた。

サーヤとは違う意味で大人の階段を登りたい系中学生である。


「あ!明智先輩の後ろにある銃ゲームもチョイワルですね!これで人を殺すゲームですよね!FPSだぁ!」


カラフルに染まった銃のオモチャを見て興奮する茂。

小学生に上がる前の絵美より純粋な天然中学生が目の前にいて、身も心も穢れている俺には眩しかった……。

白い水の出し方も味も知らなそうな子が詠美の弟なんて信じられそうにない。


「一緒に人を殺しましょうよ明智先輩!」

「笑顔で何言ってんだよ!?サイコパスだよ」


水色のガラクタ銃を握りながらワクワクする茂に突っ込みどころしかなかった。

「仕方ねーな……」と、茂の隣に並ぶ。


「せっかくだから俺はこの赤の銃を選ぶぜ」

「ん?明智先輩の銃も同じ水色ですよ?」


水色の銃を手に取って、200円を機械に入れていく。

「あ……」と茂が驚いていたが、「奢られろ」と言うと「ありがとうございます!」と頭を下げたのであった。

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