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35、上松ゆりかは犬になる

「本当に犬になるのかゆりか……?」

「はい。犬になります」


再度の忠告に躊躇わず頷くゆりか。

犬になるということは、俺の鬼畜な命令には絶対に従うってことか?

原作における佐々木絵美的な……?


「そっか……。犬になるのか……。まるで上松イヌ科だな」

「犬松ゆりかだ!上松イヌ科ってなんだ!?侮辱しているのか!?」

「犬松ゆりかも大概だと思うが……」

「も、もしかしたら犬松という名字くらいならジャパンに存在するかもしれないだろ!…………我にそんな知り合いはいないが……」

「俺だっていねぇよ」


ゆりかを犬にするって何……?

全然わかんない……。


「大体犬になるって何するんだよ!?」

「ワンワンって鳴きます」

「鳴くだけ?」

「ワンワンワン、ワンワンワンワン」

「説明の時はワンを抜いて!?伝わんないからさ!?」

「では……、秀頼を舐めます」

「ぅひっ!?な、な、な、な…………」


彼女の舌でチロッと右耳を舐められる。

舐められた後に、自然と右耳に左手で触っていた。

ちょっと濡れている感触に気付き、かぁぁぁと顔が火照ってくる。


「あとは師匠に抱き付きます!ダイィィィブ!」

「うわっ!?ちょ、ちょっと!?す、スキンシップが激しい!?あと、師匠になってる……」

「師匠って呼んだ方が犬っぽくないか?」

「知らないけど……」


ガバッと強い勢いで抱き付かれる。

本当に犬のように、胸に頬を当ててスリスリしている。

……………………どうせなら、俺がゆりかの胸に頬をスリスリしたいよ。

なんなら揉みまくってみたい。


「我はこう見えて体育会系だからな。スキンシップが激しいのだ!」

「…………因果関係ありそうでなくないか?」

「そうか?ギャル子は『お持ち帰りデートされて犬になるのが流行り』だと我に教えてくれた。これが若者のデートじゃないのか?」

「…………ギャル子ぉぉぉ」


『ごのめーん!』とふざけた態度をしたギャル子の謝罪が脳内に聞こえた気がした。

というかギャル子、絶対ドMじゃん!

確定ドMだよ!

経験談か願望・欲望かは知らないがドMでしかない……。

ギャル子・ドMのハットトリックである。

ゆりかの犬になると、ギャル子の犬になるは全然違うことだと口にしようか、気付かない振りをしようか躊躇う。

チワワと人狼くらい2人の思考に違いがありそうだ。

犬になれの意味を知っている者に犬になる宣言をさせられたのなら、大事なところでも舐めさせるくらいの欲が出ていたかもしれない。

ゆりかの将来を不安になりながらも、自分の気持ちを殺した。


「ワンワンじゃ俺の良心が聞かないから語尾に『ワン』程度にしよ」

「わ、わかった……ワン」

「照れがあるワンだな」

「て、て、照れるわ……ワン」

「取って付けたようなワンだなぁ」

「犬松ゆりか、がんばるワン!」


気に入ったのか、自分を犬松ゆりかと自称しだした。

上松イヌ科の方が俺はしっくり来るんだけどなぁ……。


「あ!」

「どうかしましたかワン?」

「そういえばなんかちょうど良いオモチャがあったな」

「ほ、骨かワン!?」

「違うワン」


「どこだっけかなー」と口に出しながら机の引き出しを漁っていく。

ゴールデンウィークで整理整頓した時にこの辺で見たオモチャを頭に浮かべながら探しまわる。

それから数秒して、「あった!」と口に出すくらいに目的の物を発見したのであった。


「何かありましたかワン?」

「これこれ。犬耳と犬の尻尾。どうせゆりかが犬になるなら本格的にしよう」

「どうしてこんなものが秀頼の家に……ワン。ハッ!?師匠は普段から犬に……」

「なってないから。もらいもんだよ、もらいもん。達裄さんから最新鋭のオモチャの試供品としてもらったんだよ。犬なりきりセットの他にも、猫なりきりセットとウサギなりきりセット、ドラゴンなりきりの全4セットあるんだー」

「ドラゴンが気になるワン……」


ギャルゲー世界に入り込むゲームハードを持ってきたりと、あの人のコネで持ってくるものはなんか変なオモチャが多い。

2年くらい使い道がなくて机の引き出しのオモリにしかなっていなかった。

その引き出しの底面にはガソリンに電流を流すことで火事にする前世持ちの証拠隠滅セットがあるので取り扱い注意である。


「これ、セットした人の気持ちやメンタルに連動して犬耳と犬の尻尾が動くんだって」

「無駄にハイテクだワン……」

「じゃあ、犬耳セット」


ゆりかの頭に犬耳をセットすると、ピョコピョコピョコと小さく動きだす。


「おー。凄い。じゃあ、お尻を俺に向けて」

「ワン」

「よいしょ」


ゆりかが履いているブレザーのスカートであるお尻の割れ目のスタート地点を狙ってセットをする。

こちらは、本物の犬のように尻尾をくねくねと動きだした。


「秀頼にセクハラされた気分だワン」

「セクハラされた気分なだけでセクハラじゃないよ。でもメチャクチャ可愛いじゃん!」

「ほ、本当かワン……?」

「ちょっと待て。写真を撮るから」

「や、やめろ!?恥ずかしい!?」

「でも写真に撮らないと自分の姿わからないだろ?」

「確かにワン」


鏡でええやん。

と、俺がゆりかなら突っ込んでいたが納得したのでスマホを向けて四足歩行をしているゆりかや、座っているゆりかなどの5枚の写真を撮る。

ガッツリ保存してからゆりかに見せると「は、恥ずかしい……」と語尾のワンも忘れて赤くなった。

犬耳も下に垂れ下がり、尻尾もブンブン振っていた。

ウチの弟子、可愛すぎない!?


「餌付けしよう餌付け」

「ひ、秀頼がノリノリだワン……」

「はーい、ゆりかちゃーん。チョコレートですよー。お手」

「ワン」

「お手では右手を出すんですよー。左手はおかわりですよー」

「逆張りだワン」

「お手」

「ワン」


右手を差し出したゆりかに「よしよし」と言いながら顎らへんを撫でてみる。

「くぅーん!くぅーん!」とゆりかが気持ち良さそうにしている。


「ペット欲しいって思ってた時あったけど、良いなーペット」


25年も前の思い出だけど。


「秀頼はなんのペットが欲しかったワン?」

「そりゃあペンギンでしょ」

「特殊ワンっ!」

「もう1回お手っ!」

「ワンっ!」

「いいねー!」


チョコレートの封を開ける。

キッドカッドのチョコレートをパキッと2つに割り、1本をゆりかの口元に見せるようにするとすぐに食い付いて、先っぽからモグモグと食べはじめた。

餌付けってなんか自分が必要とされている気がしてきて嬉しくなる。

腕を壊されたり、虐待されたりと自分が必要とされることの尊さを誰よりもわかっているので心が暖まる。


「おかわりは左手だぞ。おかわり」

「ワンっ!」

「よく出来ました。はい、こっちも食べて」

「ワンワン!」


ゆりかが俺の指を口に入れながらペロペロ舐め出す。

『なんでさっきと食べ方が違うんだよ!』と突っ込みそうになるが、指を舐められているのがこそばゆくて何も言い出せなかった。

2個目のチョコレートが食べられた時には親指と人差し指がゆりかの唾液と、溶けたチョコレートまみれになっていた。


「あ!?ハンカチ使いますかワン」

「いや、自分のハンカチある…………よ……」

「どうかしましたかかワン?」

「ゆりかの唾液を拭き取るのがもったいない気がしてきた……」

「ちょ!?えっ!?じゃ、じゃあ乾かすのか!?……ワン」

「んー。彼女の唾液を拭き取る行為ってさ、まるでバッチイものみたいになるのが嫌だなぁ。野郎の唾液ならすぐに石鹸で水洗いしたいが、ゆりかの唾液はもったいない」


とか言っている間も指に付いたチョコレート付きゆりかの黒い唾液が重力に従うように下に垂れていく。


「き、気持ちは嬉しいが……」

「まっ、いっか。舐めよう」

「うぇ!?」


あくまで指に付いた溶けたチョコレートを舐めるようにして舌で舐めとる。


「ひ、ひでよりぃぃ……」

「さっきからワンが抜けてる」

「さ、さすがの我も嫌ではないが……。恥ずかしい……ワン」

「ゆりかの唾液、チョコレートの味する」

「バカっ!やめてくれっ!?」


ゆりかが恥ずかしさを表現している。

しかし、メンタルを読み取る犬の耳と犬の尻尾は喜ぶような仕草をしていたのである。

可愛いすぎか。


「秀頼!お手ってしてくれワン!」

「え?お手」


ゆりかから謎のお手要求をもらい、右手をゆりかに向けた。

すると、彼女は予想外の行動に出る。


「えっ!?」

「ペロペロワン!ペロペロワン!」


お手を無視して、ゆりかが俺の親指と人差し指を舌を伸ばしながらベロベロと舐めだした。

尻尾がすごく元気に揺れている。


「な、なにやってんだ!?なにやってんだゆりか!?」

「仕返しワン!仕返しワン!」


俺の唾液をも舐めとるようにしてゆりかはペロペロと舌を何回も指に当てていた。


「秀頼の唾液もチョコレートの味がするワン」

「………………っ!?これ、恥ずかしい……」

「犬松ゆりかの逆襲だワン!飼い犬に噛まれるとはこういうことだな秀頼ワン」

「ゆりかが難しい言葉を使ってる……」

「ば、バカにするなワンっ!」


お互い頬を赤くしながらジャレあっていたのであった。


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