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29、明智秀頼は月曜日が苦手

「あー、だりぃ……。月曜日は目が死にかける……」


1週間で1番嫌いな日は月曜日。

学校好きな俺であっても、月曜日の魔力だけは弱点になっていた。

とにかく0時になって月曜日が来たという自覚を持って寝た瞬間から、ずっと後ろ髪を引っ張られた気分になる。


特に昨日は詠美と絡み、乙葉と出掛け、マスターと達裄さんと雑談を交わすという面白いことの続く1日であった。

日曜日が楽しいほど、月曜日は虚しさが強く残るものだ。


「なんか楽しいことないかなー……」


あくびをかみ殺しながら廊下を歩いていた。

いつか彼女たち全員と悠久といったバーベキューみたいな日がまた欲しいものだとちょっと前の出来事を思い浮かべていた。

また、そういった集まりをしたい旨を絵美や永遠ちゃんに相談しようかなー、なんて考えていた時であった。


「あ!見つけましたぞ師匠!」

「お?ゆりかじゃん」

「教室にもいなくて、ヨルに尋ねても『知らん』しか言われなくて困っていたところでしたよ」

「わりぃ、わりぃ」


単に眠気覚ましでトイレに行って用足しをしていただけである。

トイレではぼーっと1分弱程度突っ立ってただけなので、なんの眠気も取れなかったわけだが……。

水場にある蛇口を捻って出てくる水で顔を洗った方が遥かに眠気取りになっていた気もする。


「どうかしたのゆりか?…………っ!?」


ピチッとブレザーを身に付けているところに彼女の真面目さが垣間見れる。

……のだが、この学校の女子生徒のスカートの短さには毎日目のやり場に困りやすい。

膝にいかないぐらいの丈しかないのは、本当にギャルゲー世界だ。

前世との違いにグッジョブである。


「師匠?」

「いや、なんでもないよ」

「そうか。それでな師匠!我は自宅デートがしたい!」

「自宅デート……?自宅デートっていうのは、彼氏か彼女のどちらかの家でイチャイチャするという幻の……?」

「うむ!多分そんな認識だ!」


ゆりかは1回全員で明智家に来た時があったから行ったことはあるのか。

叔父の乱入でバタバタしていたが……。


「因みに、ゆりかの家?……部屋は女子寮だったな」

「そうだ。男子禁制だ。こないだ部屋がびちょびちょになったという例外から師匠が女子寮に入れたが普段は禁止されている」

「あー……。ゆりか以外にもヨルと五月雨の部屋水びたし事件なんてのもあったな。とりあえず部屋は直ったんだから俺は入れないか……」


残り2年弱しか寮に入れないのだから、もうゆりかの部屋が水漏れすることはないだろう。

残念ながら、女子寮に入ることは一生もう無さそうである。

残念……。非常に残念だ。

心のどこかでガッカリしている自分がいた。


「というか、ゆりかが俺の部屋に来る?」

「そうだ!クラスメートの彼氏持ち女子の間ではご自宅お持ち帰りデートが流行っているらしい。この波に我も乗りたい!」

「クラスメートの彼氏持ち女子とかいうコミュニティがあるんだ……。ご自宅お持ち帰りデートって女子から言わなくないか?そのニュアンスだと、女子の部屋に男子を連れ込んでいるように捉えない?」

「それはどっちでも良い」

「おおざっぱだな……」


まぁ、女子寮が男子禁制なら必然的に俺の部屋にゆりかが訪ねる選択肢がない以上、自宅デートがしたいなら俺の家にゆりかが行くしかないのだ。


「というか、ゆりかってトレンドとか意識するんだね」

「む?師匠、我はオシャレ女子だ」

「オシャレ女子……」

「絵美に化粧を教えてもらったり、円から流行を習ったりしている」

「へぇ」

「こないだはクラスメートの熊本に流行のハンドクリームを教えてもらった。見てくれ、このハンドクリームだ」

「確かにこれ、セナちゃん愛用ハンドクリームだね」


クラス変わってからロクにセナちゃんと会話していないなぁとふと彼女のことを思い出す。

ゆりかとも部活かプライベートが無ければ本当に会話する機会が減少してしまっている。

来年はみんな同じクラスになれると良いなー。


「ふふふ……。最先端オシャレ女子な我はこの流行に乗っかり師匠と自宅デートがしたい。…………とは口実で、たまには師匠と2人っきりでイチャイチャさせて欲しい!師匠、師匠!明智!」

「わかった!わかった!自宅デートしような!」

「ありがとう師匠。では、今日の放課後に迎えに来る」

「いや、むしろ逆だ」

「逆?」


ゆりかの意見に賛同出来ず、首を横に振る。


「俺がゆりかのクラスに迎えに行く」

「し、ししょおぉー!そういう積極的なところ、我は大好き!」

「うわぁ!?ゆ、ゆりかさん!?」

「師匠!好き!好き!可愛い!」

「っ!?」


ゆりかの大きな身体から抱き付かれ、頭を撫で撫でとされる。

絶妙な力加減と、ゆりかの甘い泡のようなシャンプーの匂いが鼻を付き顔面が赤くなる。

何人かの生徒がチラチラ見ていて、本当に恥ずかしい。


「は、離れてくれ……」と言うと、「仕方ない。続きは放課後デートにしよう」と残念そうなゆりかの声が耳に届く。


「では、迎え待ってますよ師匠!」

「じゃ、じゃーなー」


どぎまぎしながらゆりかを見送り、1人になる。

落ち着かない心臓の鼓動のせいでしばらく動けなくなり、意味もなく廊下の壁に寄りかかってしまっていた。

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