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6、明智秀頼は馬にされる

『オラァ!馬!オラァ!馬!オラァ!馬!オラァ!』

「わかったから!太鼓の鉄人感覚でケツを叩くな!?」

『クハハハハハッ!人間を馬にするのは楽しいなぁ!走れ、走れ!はしれぇぇぇぇ!』

「あんまりはしゃぐな!ドンドンするな!おばさんに怒られるだろうが!おばさんは怒るとめちゃくちゃ怖いんだからな!」

「あのお前がそこまで切羽詰まるとはの……」


ただでさえ、肩身が狭い居候なんだから。

騒ぎ過ぎるとおばさんのマジ叱りが炸裂することになる。


『クハハハハハッ!安心せい!この部屋は完全防音領域!爆弾を投げられようが、ミサイルを放たれようが、核を落とされようが第3者には絶対に届きはしない』

「完全防音領域は確かにすげぇけど、これ俺がお前に殺されそうになり悲鳴を上げようが誰も助けが呼べないってことだからな」

『目ざといな明智秀頼。因みに神が窓から投げ捨てられても誰にも届かんぞ』

「悪かったって……」


結構根に持っているのか、いつまでもネチネチと反復するのであった。

なんかで機嫌を取った方が良いのだろうか……?


「いつまで俺はトウカイテイオーになってなければいけないの……?」

『馬じゃ!馬じゃ!敵は本能寺にあり!クハハハハハッ!』

「リアル本能寺の前でよく口に出来たなお前……」


時代劇の明智光秀の真似をしているのか、手を掲げてノリノリで演技をしている。

暇な神様の退屈しのぎはなんとこんなに幼稚なのだろうか……。

虚しさが広がっていき、エニアのはしゃいだ笑い声がずっと部屋中に木霊していた。






─────






2時間、意味もなく見慣れた部屋の中を四つん這いになりながらグルグルグルグルとまわりまくった。

この2時間があれば課題終わったのになぁ……と後悔が尽きない長い時間であった。

何やってんだろ俺?という惨めさだけが胸に残り続けていた。

数回程度では痛くもないケツ叩きも、何百回もされると痛い気がしてくる。

立ち上がるとケツを叩かれない違和感の方が大きくなり、物足りなさがある。


『クハッ!クハッ!腹減ったのぅ……』

「自由かよお前……」

『こんなに身体を動かしてたら腹減るのも必然じゃな』

「それ、俺のセリフだから。2時間も四つん這いでエニアを運びまくった俺がもう空腹過ぎて腹と背中がくっつきそうなんだから……」

『そうなのか?』


立っている俺の横にいるエニアが疑うような声を出す。

本当に腹と背中がくっついているのかの確認わしていて微笑ましいなぁとほっこりしていた時だ。


『クハハッ!ならばぎゅーっと押して腹と背中をくっつけてやるわ!』

「うげげげげっ!?やめろ!マジでやめろっ!強い!力が強い!」


小学生みたいな人形のような手で筋肉が悲鳴を上げる力が出るのかガチで気になることばかりな脳筋ファイトである。

解放された後は、腹を撫でて痛みを和らげていた隣でエニアは自由に振る舞っていた。


『よし!飯じゃ、飯!外食するぞ外食!』

「はぁ?外食すんの?」

『なぁに。馬になった礼じゃ。1000円程度は奢ってやるわい』

「なら行こう」

『クハハハッ!時給500円という底辺な自分に気付かぬとは!』

「なんか言った?」

『うまいものでも食べようぞ!』


『クハハハッ!』と高笑いをしながら外出させようと促す。

仕方なく上着を羽織りながら出かける準備をはじめた。


「って待て!?俺がお前と出歩いたらマズイだろ!?」

『クハッ?マズイ?』

「自分の姿を鏡で写せよ!高校生が小学生以下くらいな子と出歩いたらマズイって!肌の色も違うから妹なんて言い訳できないし」

『やれやれ。明智秀頼じゃわい』

「『明智秀頼じゃわい』ってなに!?」


失礼なことを言ったあとに、『これなら満足じゃろ?』と言ってヌッと姿を変えた。

褐色肌は白い肌へ、白髪から黒髪へと逆転した姿の概念さんは部活の部長まんまの姿である。

あとは制服から私服へと珍しい姿の披露目だ。


「クハッ!クハッ!あら、プライベートで会うなんて珍しいですね」

「概念さん!」

「これなら同い年で変な目では見れないでしょ。先に下へ瞬間移動してるから準備が終わったら来なさい」

「わかったよ」

「クハッ!」


その返事に満足すると、シュッと概念さんの姿が消失した。

いきなり現れたり消えたりする神様能力には拍手せざるを得ないほどに素晴らしい技術であった。

それから、一応財布を持って、家の鍵にスマホもポケットに詰め込む。

洗濯をしていたおばさんに声をかけて、家に出た。


「クハッ!素晴らしい早準備だ。褒めておくぞ明智秀頼」

「はあ……」

「やれやれ……。エニアたるウチとデート出来る幸せものめ」

「幸せもの、ねぇ……」

「行くぞ、明智秀頼!」


こうしてエニアの姿から概念さんに変わった彼女から引っ張られて街を探索することになるのであった。

どこかいつもよりも楽しそうに『クハクハ』と笑っている。


「とりあえずなにを食べたいんだ?」

「任せる、任せる」

「任せるが1番困るんだけど……。ラーメンとかどう?」

「クハハッ!ラーメン!良いではないか!良いではないかっっ!」

「めっちゃ食い付くじゃん」


ラーメンの文字に食い付く概念さんが可愛らしくて面白い。

「なら、明智秀頼のとびっきりオススメなラーメン屋を頼むぞ」と言いながら背中を叩いてくる。

「仕方ないなあ」と、こっちも決心したようにタケルと山本との男が本気で褒めるラーメン屋の方向へと誘導していった。

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