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5、エニアは馬を操る

「はぁ……。まったく。ここ最近は忙しいな……」


ただでさえ考えなくてはいけない悩み事が尽きないのに、宿題の課題も多いときた。

そこに追加してギフトの講習会も開かれて、そのレポートも書けときたものだ。

内容も内容で、ギフトの説明の大半は『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズで登場した解説のコピペしたかのような内容。

今更、何を書けっていうんだ。

悠久が仕組んだレベルの低いギフトの講習会には失望しそうになっていた。

あの程度のギフトの猿知恵を自慢気に語るだけで月収がもらえるとか羨ましいな……。

原作の明智秀頼が独自にギフト研究していた資料の方が100倍役に立ちそうだが、それは手に入らない。

いっそ、ギフトの教師を目指す進路もありかもしれないなぁ……。

ただ、お茶汲みだけで給料をもらえる窓際族の候補も捨てるのももったいない。


「とりあえずコピペ講習会のレポートは伝えたいことをわざと長文化させた感じに書いておけば…………、よし!」


現場にいそうな某猫のようにピシッと指をさして、レポートは終了。

レポートをカバンに突っ込み、次は数学の宿題のテキストの準備をしていた時であった。






『クハッ、クハッ、クハッ!真面目に勉強をしている人間風情よ。今宵、神はきたる』

「っ!?」


ピクンとして、心臓が飛び出るような驚愕がして声の方向へ視線を送る。

するとそこには『クハハハハッ』といつもの如く人を見下したように嗤いながら、ベッドに寝っ転がっているロリ神様が出現していた。

白い白髪、黒い褐色、黒いパーカーと何から何まで見覚えのある格好をしたエニアである。


「こんのやろ!ノックしないだけなら許してやるが、扉すら開けないで勝手に入ってきやがって!虫かてめぇは!」

『クハッ、クハッ、クハッ!虫なら許すのか!ならば、神は虫だ』

「あっそ」

『ん?』


ひょいとエニアの身体を持ち上げる。

感覚的には体重30キロ程度しかない神様を抱き抱えるのは苦労しなかった。

それから窓を開け放ち、エニアをおもいっきりぶん投げるモーションをする。


『ま、ま、ま、待てお主!?神は神ぞ!どこの世界に神を2階の窓から投げ捨てる人間がいるのだ!』

「この世界に……。こんなクソ忙しい時に現れやがって!神じゃなくて虫なんだろ?ならば外に逃がしてやるっ!──さらばっ!」

『ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!』


ゴミ神様を2階の自室から投げ捨てた。

彼女は悲鳴を上げながらどこかへ飛んでいった。

さらば神様……。

お前のことは7分くらい忘れない。

ガラガラと窓を閉めると、再び机に向き合って宿題に手を付けようとした時だった。


──コンコン。

ノックをしたあとに『クハッ!失礼する』と言って部屋に入ってきた。


『クハハハハ!あの程度で神を殺せるとでも思ったか、明智秀頼!クハハハハハッ!今の神は虫ではない、──なんと、客だっ!』

「なんのどや顔だよ!?」


『客だっ!』とマウントを取ったかのような表情であるが、まったく格好良くない。

仕方ないから客としてエニアを迎え入れて、ベッドに座らせた。


『まったく!神を窓から投げ捨てる人間などお前がはじめてじゃ!この鬼畜!悪魔!畜生!邪神!』

「鬼畜も悪魔も畜生も邪神も全部お前だよ」

『っ!?』

「なんで自覚ないんだよ!邪神なんてお前のためにあるような言葉じゃねーかよ!」

『そんなに怒らなくても……。神はただ人間に喜んでもらいたいだけなのに……』

「しおらしく言っても、そこに『退屈しのぎ』があるだろうに」

『クハハァ!』


ダメだこいつ……。

いや、まぁ、行動原理はわからなくもないのが辛い……。


『だいたい最近、明智秀頼はかまってもくれんではないか!プンプン!』

「ご、ごめん……」


つい最近、サーヤにも似た理由でキレられたことを思い出す。

なんで俺の知り合いはちょっと疎遠になるだけで、毎回ブチぎられてしまうのだろうか……?


『だからこうして、部屋で1人籠っている時に遊びに来てやったのだ。遊びに行こうとしても佐々木絵美とか津軽円とかいて引き返すことになる神の気持ちわかるか?』

「そ、そうか。でも『部屋で1人籠っている時』の条件に『退屈な時』を入れて欲しかったかな……」

『神は一時の暇程度ではない。100年単位で退屈なのだぞ。贅沢な奴め。──はっ!?明智秀頼が死んだらまた退屈になってしまうではないか。…………よし、明智秀頼には神にはならなくて良いが永遠の命を授けよう』

「おい、いきなり残酷な仕打ちをやめろ!周りが死ぬ時には俺も死んでいたいよ!」


神ではないが、永遠の命ってあまりにもたちが悪い。

そういうところがナチュラル畜生なんだよなぁ……。


『ちっ、しょうがない。口説く時間はまだまだある。焦る時ではない』

「く、口説くなんてそんな!お、俺には彼女がいるんですっ!」

『何を照れているのか。窓から投げ捨てるわりに神に照れる程度の好意はあるのか。あれだな、『嫌いだ、嫌いだ』と言っておいて大好きみたいなやつ。──ツンデレとかいうやつじゃな!』

「い、いきなりツンデレなんて言葉を出すな!そんな単語が出てきて驚くじゃないか!」

『ならば横文字NGじゃな』

「なんかどっかで聞いたなぁ、それ」


普通に円とのお馴染みのやり取りをしてくる辺り、監視されている自覚が出て来てちょっと怖いぞ……。


『にしても、ツンデレかぁ!ツンデレめっ!』

「な、なんだよ。何ニヤニヤしてんだよ、気持ち悪い……」

『残像だ』

「なっ!?」


シュッとエニアの姿が消えたかと思うと、背中からいきなり軽い体重が乗っかってくる。

「うわっ!?」と突然の身体の変化によろめく。


『ゴロニャア、ゴロニャア!』

「うわっ!?や、やめろ!やめろ!」

『クハハハハっ!窓から投げた仕返しじゃあ!』

「うひひひひひひっ!?や、やめろ!?」


無駄なハイスペックを披露したエニアは、ネコのようにじゃれついてくる。

こちょこちょに弱い俺はエニアの素早い指の動きに耐えられなくて力が出なくなっていた。


「があああああ!」

『ほれほーれ!お馬になれば許してやらんこともないぞ』

「う、馬だと!?俺が、……馬なんかになるかぁぁぁぁぁぁぁ!」

『こちょこちょ2倍速!』

「あぁぁぁぁ!?いぃぃぃぃぃ!負けない!負けないぃぃぃぃぃ!」

『こちょこちょ4倍速!』

「バグっ!」

『こちょこちょ8倍速!』

「あ、あひぃ……」


俺はエニアの命令通りに馬のように地面に手を付き、膝を付いた。

そこに面白いとばかりにエニアがまたがってきた。


『馬なんかにならぬのではなかったのか人間風情がっ!』

「くっ……。今の俺は馬じゃない。トウカイテイオーだっ!」

『クハックハッ!動け馬!』

「わ、わかったからケツを叩くな……」

『部屋、セマッ!』

「うるせっ」


ケツをピシピシ叩かれながら馬役になって移動していたのだが、部屋がそんなに広くないので1周するのに1分程度であった。


『クハハッ。なんかあれじゃな。世界を統一した気分になるな』

「本当にただの気分じゃねぇか」

『お?首に黒子があるな。ちょっと舐めたい形してるの』

「舐めるなよ!絶対舐めるなよ!?」

『ペロペロ、ペロペロホクロ』

「ペロペロキャンディみたいな言い方すんなよ」

『レロッ、ロッッ、ギュウ、レロッ』

「あひっ!?ほ、本当に舐める奴があるかぁ!」

『馬ごときがうるさいわ』

「イデッ!?おもいっきりケツ叩くなや!」


パンパンとケツを叩かれながら馬の体勢のまま部屋を周回させられた。

馬だと思うとイラつくが、筋トレということにするとまだ許せた。

ぐっと腕に力を乗せて、エニアが満足するまで床を這いつくばっていくのであった。

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