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52、仮面の騎士からのメモ

「達裄さーん!また決闘をすることになったー!どうしよーっ!」

「俺はドラえもんかなんかなの?」


ヤヒュー知恵袋の意見をあらかた頭にインプットして、次に頼ることになるのは案の定遠野達裄であった。

いかにも無理矢理染めてますという感じの金髪が、最近は完全に黒髪に戻りつつある。

金髪だとヤンチャなイメージがあるが、達裄さんの場合は落ち着きがありそうな黒髪の方が似合っているというのは俺個人の意見である。


「決闘ね。そりゃあ大変だ。対戦相手は?」

「仮面の騎士っていう背の高い女っす!175センチは確実にあるかな」

「仮面の騎士?あぁ、もしかしてアイリのこと?」

「アイリーンなんとかさんですよ!間違えないでください!」

「やっぱりアイリじゃん」

「なんでさも当然のように知り合いなの……」

「後輩だから」


どう考えても同い年ではなかったが、やはり結構年上らしい。

落ち着きある態度、大人っぽい風格とアイリーンなんとかさん視点では、アリアの年齢の男子なんかキッズ同然なのは言うまでもない。

アリアの護衛のためとはいえ、大変なお仕事である。

昔にアイリーンなんとかさんと会った時も刀を所持していたし、最低でも彼女の強さは織田の3倍は見込んでいても罰は当たらないだろう。

達裄さんや、悠久などを含めると奇跡の世代かなんかだろうか。


「でも、何で戦うかすら決まってないな……。修行のしようがない……」

「あの子は対戦相手の得意なフィールドで戦ってくれる子だからそこは気にしなくて良いかな。秀頼なら剣道になるかな。……向こうも剣道は得意なんだけどね」

「結局、竹刀を握ることになるか……」


それなら勝ち目はあるのかな……。


「後は俺と身体を鍛えたところで意味ないでしょ。俺と戦うわけじゃないんだから」

「じゃ、じゃあどうすれば?」

「いるじゃないか。こんな状況にピッタリな君の関係者が」

「?」


俺にピッタリな関係者?

バリアを素手で割る絵美。

ナイフで襲ってくるヨル。

忍のように素早い動きで翻弄するゆりか。

手伝ってくれるはずがない神様のエニア。

パッと頭に浮かぶのはこれくらいの人選か。

「とりあえず明日、こっちから依頼を出しておくよ。剣道出来る場所もまたどっか借りないと……」と言い、達裄さんはスマホの操作をしてくれていた。

どうやら、明日の学校が終わり次第時間を作ってくれるらしい。


「ところで達裄さん?アイリーンなんとかさんに俺のギフト教えた?」

「言うわけないじゃん。そもそもアイリなんて疎遠気味だったしね」

「でも、何故か俺のギフトが知られていたんだよね。しかも、学校の書類には覚醒していること自体を隠しているのにさ……」


俺のギフトを知る人物なんかそれこそ、円にマスターに達裄さん。

後は、おそらく星子たち1年のクラスにいる転生者らしき謎の人物くらいか。

しかし、謎の人物がアイリーンなんとかさんと知り合いではないと仮定すると、ギフト情報の出所がわからない。


「俺と秀頼の知り合いの中にいるんだよねー。ギフト知ってる奴」

「え?マジ?」

「そもそも、まだまだ若い彼女がなんで学園長なんかしていると思ってんの?金持ちなのもあるけど、もう1つの決定打があるんだよ」

「げ……。ま、まさか……」

「近城悠久。ギフト所持者のギフト能力を知るギフトを彼女が持っているからだよ」

「…………」


俺のイメージの悠久がどや顔をしていた……。

あいつ、そんなギフト持ってるのかよ……。

というか、生徒のギフト流出させんなや……。

しかし、よくよく考えると大人になったタケルが所属していたレジスタンスのリーダーを努めていたのも悠久だっけか……。

というか、ヨルが『人の顔を合わせるとその相手が所持しているギフトがわかる』とかなんか言ってた気がする……。

完全に忘れていた……。


「あの処女女ぁぁぁぁぁぁぁ!あの野郎!」


アリアの立場が明かされているなら悠久に拒否権なんかないのだろうけど、納得いかねぇぇぇ!

あー、ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!


「むしろ悠久も凄いね。秀頼のギフトがわかっていて普通に接しているんだから。俺が悠久の立場なら何してくるかわからない秀頼とは関わらないかもしれないね」

「え?達裄さん、普段俺のこと危ない人物扱いしてる?」

「俺は人となりを知ってたから秀頼のギフトを知っても仲良くしてるけど、ギフトから知ってたら近付きたくはなかったかな」

「このこの、ツンデレ男ー。どうせ逆でも達裄さんはこうなってたって」

「さぁ?もしもの話とか意味なくない?」


ドライさと優しさが両立している人であった。

にしてもアイリーンなんとかさん攻略は、今日では無理のようだ。





─────





次の日。

達裄さんからは『放課後にここ集合』という地図と住所の書かれたラインが届く。

今日も授業を頑張るぞと気合いをいれていると、とんとんと背中を叩かれる。


「うん?……って、うわっ!?仮面女!」

「…………これを」

「?」


封筒などの行儀の良さはなく、小さいメモ紙を裸の状態で手渡される。

周囲を見回り、絵美やタケルがこちらに気付いていないかを確認する。

アリアだけが俺を注視していたが、無視するように紙に視線を落とす。


『明日の放課後、剣道にて決闘を開始する』


必要最低限の情報が記載されたメモである。

なんて女っ気のないシンプル過ぎる文章であろうか。

あとは証拠隠滅のために8回に分けてビリビリに破りゴミ箱に捨てた。

びっちり修行が出来るのは、今日の夕方のみ。

焦る気持ちだけが苛立ちを生む。


「ん?星子?」


ふと、俺のシスコン探知が発動する。

後ろ側のドアに振り返ると星子がこちらの教室を観察している。

絵美やタケル、ヨルも円も気付かないし、声をかけている様子もない。

じゃあ、俺に用事があるということじゃん!

席を立ち上がり、猛ダッシュで星子に近付こうとした時だ。


「あら……?」


星子はくるっと身体を回転させてそのまま廊下の奥へと消えていく。

星子と久し振りに雑談をして愛でたかった気持ちが宙ぶらりんになって悲壮感が強くなる。


「星子ぉ……。星子ぉ……」


妹に捨てられたことで、ガチ泣きしながら机に突っ伏した。

星子の兄離れが深刻である。

コンディション最悪。

モチベーション皆無。

明日、本気で俺は死ぬのかもしれない。

今日の夜、アリアからもらったストッキングの匂いをかいで死を覚悟することを決めた。


悠久のギフトはこちらにて明かされていました。

第11章 悲しみの連鎖

36、『悲しみの連鎖』悠久

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