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番外編、ギフトへの探求心

とりあえず昼休みに給食を完食した後、絵美のクラスである5年5組にずこずこ入っていく。

顔も名前も知らない冴えない男がこっちをじろじろと見てくるので「あ?」とガン飛ばして威圧すると「ひぃぃ。ごめんなさい」と謝られた。


「人にされて嫌なことはすんのやめようや兄ちゃん」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


平謝りするダサ男をそのまま素通りする。

三下なんか相手にする時間はない。

絵美のいる席へ視線を向けると、緑色の髪をした少女と一緒に下を見て俯いている。

そこにはまるでブタゴリラとでも表現出来そうなガキ大将がネチネチネチネチと言い掛かりをしていた。


昨夜の絵美から聞いた情報を思い返す。


『円ちゃんが廊下を歩いた時にぶつかってから目を付けられて……。それからしつこいぐらいにわたしたちのクラスに来る……』


別に誰が誰を虐めていようがどうでも良い。

ただ、俺の所有物である絵美にくだらない時間を割かせるクズというだけでイライラが収まらない。

俺はふつふつとした怒りを溜めながら、絵美のところへずかずか歩いて行く。






「お前がぶつかってきたところよぉ、まだ痛いんだわ。はぁぁぁ、いってぇ。毎日治るまで俺に謝り続けてろよ」

「……ごめんなさい。もう、二度と竹本君にはぶつかりません」

「おい、チビ女。お前さっきからどこ向いてんだよ!?ちゃんと謝る姿勢を見せろや!」

「あ、秀頼君」

「誰だよそいつ!?だから、俺は竹本シン──」

「おめぇこそ誰だよ」

「あぁ!?」


真っ先に俺の存在に気付いていた絵美とは、ガン飛ばし少年が謝ってきた段階でアイコンタクトをしていた。

『そいつ?』と合図すると、無言でコクコクと首を縦に振り肯定したのであった。


なんか、視界に入れているだけでムカついてくる奴であり、三下以下のクズ雑魚なイメージしか抱かなかった。


「な、なんだよお前……?お、俺に逆らうのか?」

「勇ましい言葉遣いじゃねぇか。デカイ体格して口でしか勝てないーってか?」

「あぁん?んだと、ゴラァ!俺は柔道最強の俺様は言葉より暴力の方がつえぇぞコラ!」


俺に向かって突進をしてきて、身体に全体重を乗せて怯ませようとする。

柔道最強とか知らねぇんだよモブが。

俺はブタゴリラ以上のガチゴリラの理不尽な痛みに耐え抜いたんだから効くわけねぇんだよ。

構える必要もなく、黙ってそのまま体当たりを受けた。


「へっ、ヒーロー気取りが引っ込んでろよ!てか、次はお前を虐めのターゲットにしてやるよ」

「お前の攻撃、全然痛くねぇな。その女がぶつかったところで痛くも痒くもねぇだろ?あ、もしかしてクソ雑魚だから女にぶつかっただけで捻挫でもしたか?あぁ、ごめんな俺強くて」

「っ!んなわけねぇだろうが!」

「あぁ、俺デリカシーないんだわ。煽るようなこと言ってごめんな!捻挫じゃなくて骨折か。女に骨折させられたブタゴリラだ」

「っっっ!こんのっ!!」


俺はわざと奴の地雷を踏み抜く。

1つじゃない。

雑草を刈るかの如く、複数の地雷が埋まった地雷原をぐちゃぐちゃに踏み荒らす。

尊厳を壊す。

──そして、俺が格上というのを示す。


「おっせ」

「っ!?」


拳を振り抜こうとしていたが、俺の2本指は既に目を抉る準備をしていた。


「どうする?今パンチをしようとするとその反動で失明するぞ?ひゃは!」

「ぐっ……」

「散れ。2度と俺の前とこの女の前で目障りな姿を晒すんじゃねぇぞ。」

「わ、わかったよ」


竹本は逃げ帰るように教室から出て行く。

その逃げっぷりは、無能であるタケルよりも情けなく見えた。

ギフトすら使う必要のない雑魚である。


「あ、ありがとうございます秀頼君」

「別に。またあいつが来たら報告しろ」

「わ、わかった」


絵美が慌てて頭を下げる。

垂れ下がるツインテールを弄りたくなるくらいには可愛い。

可愛い絵美の姿を見れたことで満足した俺はきびすを返す。

そのまま立ち去ろうとした時だった。


「待って!」

「あぁ?なんだ?」


絵美かと思ったが、少し低めの声に絵美ではなく一緒にいた津軽円ということを察する。

正直、どうでも良いのだが呼び止められたから自然と足が止まる。


「あ、あの……。ありがとう」

「礼を言われることはしてねぇ。嫌いな奴を脅しただけだから」

「わ、私は津軽円!」

「別に名前聞いてない……」


いつ名乗れって口に出したが思い返すが、そもそも名乗らせようとすらしていない。

これまで数人抱いてきた女とも違う名乗り方に対応に困る。


「名前、何ぃぃ?」

「十文字タケル」


テキトー言った。

絵美は大好きでも、絵美の友達とか全然興味ない。

抱きたいとすら思わない。


「絶対違う!理沙ちゃんの兄貴の名前じゃん!」

「…………」


即バレした。

面識あったのか、お前ら……。


「絵美ちゃん!あいつの名前何?」

「明智秀頼」

「何ちゃっかり聞き出してんだよ。絵美も余計なこと言うなよ」

「で、でも口止めされてない……」


流れで気付くだろ……。

まだまだ絵美を縛るギフトの力が弱いようだ。

もうちょっと自分のギフトを思うがままにコントロールをすることが必要のようだ。


「OK、秀頼。今度お礼させてぇぇ!」

「死ね」

「じゃあ、絵美ちゃん!今度あいつ連れて来て」

「わかった」

「わかっちゃうのかよ」


面倒くせぇ人の繋がりが出来てしまったようだ。

まぁいいや。

何かあれば絵美みたいにギフトで縛って奴隷にしてやれば。

いや、奴隷は1人で充分か。

とりあえず、津軽円と面識を持った。






─────






「まぁ、とりあえず結果オーライってやつだな」


ミッションコンプリート。

後は教室に戻ってタケルちゃん弄りでもしてからかってやるかと残りの昼休みの時間の使い方を考えていた時だった。





『俺、マジで今機嫌悪いからよぉ!あのうざってぇガキの姿を出すんじゃねぇぞ』

『わ、わかりません……。ぎ、ギフトの力をまだコントロール出来ないんです』


ギフト?


ギフトの単語が知らない教室から聞こえて立ち止まる。

なんか面白いギフトが使える奴を発掘出来たかと心を踊らせながら教室を覗くと嫌な男を発見した。


「…………げ」


またブタゴリラかよ。

彼が腹いせに女に八つ当たりしている姿を目撃する。

どうやらその罵倒されている女がギフト所持者のようだ。


「むかつくなあいつ……」


ギフトを知りたい。

ギフトを知りたい。

ギフトを知りたい。


ギフトを求める探求心が沸き上がる。

あのブタゴリラをボコボコにしてやろうかと決めた時だった。


「わかる。俺もあいつむかつく」

「あ?誰だよお前?」


廊下から覗いている教室の内側から、白髪の男がうんうんと頷いていた。


「あ、俺は鹿野な」

「ふーん」

「いや、君も名乗って!?」


なんかよくわからん男に絡まれた。

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