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16、一ノ瀬楓の上目遣い

「あわわわわわ!兄さん!スタチャだよ、スタチャ!」

「拝め!拝むんだ理沙!」

「すげぇ、スターチャイルド!」

「凄い!凄い!か、感激です!」


理沙、タケル、ヨル、美月のスターチャイルド大ファンの4人は、突然現れたメイドスタチャに歓喜の声を出してはしゃぎだす。

この4人、既に涙目である。

全員、星子と知っているはずのメンバーだったと思うんだけど……。


「…………」

「…………」


咲夜と和は少し引いていた……。

和はともかく、以前にコーヒーチャイルドを名乗っていた咲夜は、特にスタチャへの思い入れはないらしい。


「ちょ、ちょっと!明智君!?本物!?本物のスターチャイルドなの!?」

「あの佇まい、スタチャスマイルの顔の角度、金髪とメッシュの割合。世界ナンバーワンのファン(自称)の視点からスタチャ割合を総合すると………………………………本物です」

「な、なんでっ!?」


4人のメイドがスタチャに屈服したように頭を下げる。


「た、タケル先輩、理沙先輩、ヨル先輩、美月先輩もやめてください!は、恥ずかしいんですからぁ!」


照れたスタチャが赤くなり、楽にするように促す。


「うぅ……、スタチャに先輩って呼んでもらえた……」

「良かったな理沙!」


タケルがお兄ちゃん風を吹かせて、理沙の頭をポンポンと叩く。


「やっほー、明智さん!元気?元気がないならスマイルだよ☆」

「はははっ!スマイル、スマイル、スマイル、スマイル、スマァイィィィル!」

「この人も壊れてんじゃん……」


スタチャの冷静な突っ込みをされて、「ありがとうございます!」と頭を下げる。

星子も大好きだし、スタチャも大好きな俺は顔を見るだけで元気になれる!


スタチャ大好き!

スタチャ大好き!

スタチャ大好き!

星子大好き!

星子大好き!

星子大好き!


推しアイドルと推し妹に、悲しみの心と誇らしい心がペンライトを持ちながら応援していた。


「一ノ瀬先輩!お久し振りですね!」

「え!?」


スタチャに声をかけられ、耳と頬が赤くなりながら楓さんはギョッと反応する。

お久し振りって単語に反応して、目を回している。


「………………、はわわ……」


病人である俺よりも熱を出したのか、床に倒れそうになる楓さんをスタチャを抱き止める。


「大丈夫ですよ、一ノ瀬先輩。緊張しないでください。ねっ?」

「…………!」


スタチャに優しく微笑みを投げ掛けられ、首をブンブンと頷くように動かす。

初コンタクトのスターチャイルドに、緊張していてときめいている楓さんの反応が可愛らしく、ニヤニヤしてしまう。

普段がサバサバ系の完璧お姉さんに見える楓さんの意外な場面が、ギャップ萌えを起こし、こちらもドキドキする。


「あ、明智くぅん……」


楓さんが助けを求めるように上目遣いでこちらを見てくる。

俺の前世での2000年代初期に大ブームを引き起こしたチワワっぽさがあり愛くるしい。

そろそろ助けるか。


「もう、楓さん。緊張しないで。俺の妹なんですよ」

「え?妹?せ、星子ちゃん以外にもスタチャが妹なの?」


『そうじゃなくて、星子がスタチャ』と訂正しようとした時に、会話を聞いていたスタチャが口を開く。


「いえ。スタチャに兄はいませんよ。スタチャは1人っ子です」


プロフィール上の設定を口にする。

しかも、小悪魔的な笑いをこちらに向けて。

あ、遊んでやがる!

スタチャが俺をオモチャにしてる!


「どんな嘘よ!明智君!?」

「あぁ!そ、そういうんじゃなくてぇ!す、スタチャぁぁぁ!」

「はぁ……。仕方ない。私、細川星子本人なんですよ」

「ほそカわ……、セいKO……?ほんニん?」


いつもサバサバなクールお姉さんの楓さんが片言になるくらいには混乱する事態が発生する。


「か、髪の色も身長も何もかも違うよね……?」

「声はほぼ一緒だよ」

「う、うーん?そうだっけ?」

「ちょっとだけ地声より高く演技してるけど。あー、あー。…………こんにちは、楓先輩。細川星子です!」


声だけはギフト『キャラメイク』を使用していない星子は声を戻して、星子っぽち演技を見せる。


「うわぁぁぁぁ!俺の妹の星子だぁぁぁぁ!」

「そこ、うるさい。というか、なんで明智さんが1番やかましい反応見せるんですか!」

「た、確かに星子ちゃんっぽい声!で、でもどういうこと!?」


スタチャのお兄ちゃん呼びはレアである。

普段は明智さん呼ばわりのスタチャであった……。


「ギフトですよ、ギフト。私、仕事があるとスタチャに変身するんです」

「ぎ、ギフトってすごっ……」


星子声のスタチャの反応に、ようやく信じたらしい楓さん。


ようやく話も一区切り付き、全員が居間に集まった。

16人の大所帯では、明智家で1番広い居間も小さく見えてしまう。


「明智君の看病側と料理側。どっちが良い?」


円が俺とタケル以外の全員を見つめながら尋ねる。


「そんなのとっくに美鈴は決まってますわ!」

「ぼ、ボクも決まってますよ」

「どっちかと言われたらそりゃああっちですよ」

「じゃあ、せーので言いますか先輩方!せーのっっっ!」


和に煽られる形で14人が口を開く。








────看病側!









「よし、じゃあ夕飯抜きでみんなで貴様の看病するぞ秀頼」

「勘弁してくれ……」


咲夜が真顔で恐ろしいことを言う。

冗談とはわかりつつも、嘆きたくはなる。


「皆さん、しかしですよ?ここで秀頼さんに料理をすることで胃袋を掴むチャンスがありますよ」

「っ!?」

「なっ!?」

「そ、そんなことが……!?」

「ゴミクズ先輩の胃袋を掴んだ人には、呼び出しがあってお泊まりコース?」

「それはない」


お泊まりコースがあるなら、せめて元気な時にしてくれ。

今日は抜く元気すら無さそうな日にお泊まりなんてされたら一生モノの黒歴史である。


「さぁ!それを汲みしてもう1回聞きますよ!看病と料理!さぁ、どっち!?せーのっっっ!」








────料理側!







14人全員が料理側の宣言を発表する。


「ちょ、ちょうど良くならないのかこのグループは!?」

「あはは……。美月さんも料理側選んだじゃないですか……」


美月と三島の突っ込みを聞きながら、ゆりかが「いっそくじ引きにしようじゃないか」と提案することになる。



それから5分経ち、ようやく料理側と看病側の振り分けが決まる。

数人が台所に向かうと、何人かが看病と称し俺に近付いてきたのであった……。

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