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14、谷川咲夜は覚えていた

アイスのゴミを捨て、スプーンを台所で2本洗いながら、ついでに冷蔵庫にストックしてある熱冷ましシートを貼り変える。

エニアが部活で戻ったということは今は放課後の時間だろうか。

普段、学校にいると時計なんか気にしないからあくまで予想でしかない。


「あー……」


おばさんが今日に限って運悪く夜まで用事があるらしく、夕飯は絵美に任せているらしい。

朝に中の人が無意味に騒いだこともあり、顔を合わせ辛かったのでむしろありがたかった。


熱冷ましシートを貼り変えが終わり、スマホを見ると『部活が終わったら来るよぉ(*^^*)』の絵美のラインが来ていたので、スタンプを返しておいた。


風邪を引いたことが周りに伝わったのか、『大丈夫?』といった旨のラインを50人程度に返信する作業はかなり地獄だった。

とりあえずスタンプを送りまくる午前中であった。

昨日知り合った広末にまでラインが来るのだから、驚いたものである。


そんな寝た切りな1日も終わるんだなと寂しかったことを思いだしながら、明日には元気にならないとなと50人ぶんのメッセージのスクショを眺めていた。


『美鈴、1日秀頼様と会えないのは寂しいですわぁぁぁぁ( 。゜Д゜。)』というメッセージにはわかりみしかない。


『秀頼!なんでウチに風邪引いたことを昨日言わなかった!言っていたら今日1日看病したのに!(`Δ´)』という本気で咲夜にお願いした方が良かったかもしれないメッセージは、次風邪を引いたら依頼をしようと思う。


『お?なんだ?裸で過ごしたか?』という鹿野のメッセージには、チェーンメールのコピペを送っておいた。


色んな人に心配されたなー、と理沙、三島、山本などお馴染みのメンバーからのスクショをスライドさせながら心が暖かくなった。






それから、ベッドに横になりながら『小腹すいたなー』と腹の虫が鳴りそうな、鳴らなそうという微妙な空腹を感じた時であった。

中途半端にアイスを食べたことで、腹が減ってしまったらしい。


ピンポーンとインターホンが鳴る。

絵美が入ってきた音に混ざり、何人かの足音がする。

『誰か連れてきたか?』とちょっと驚きながらベッドの身体を起こす。

出迎えようと立ち上がろうとした時であった。


『秀頼くーん!部屋で待っててぇー!すぐ行くからぁ!』

「……?わ、わかったぁ!」


おばさんが家に不在だと声をかける絵美。

おばさんが家にいる状態でもこの気づかいが出来るとギャルゲーハプニングも減るんだけど……。


…………もしかして、絵美が昔からギャルゲーを嫌うのって俺がずっと好きだったから、二次元に萌える俺を見たくなかったからとか?


……いや、自惚れが過ぎる想像かそれは。


数人が階段を上がる音を聞きながら、誰が来るのかとちょっと怖くなる自分がいる。

タケルとか理沙とか円とかの近所に住む友人・恋人らだろうか?とか予想を立てる。


「……ん?」


いや、結構大人数な気配がある。

わざとらしく足音を立てないようにしているが、なんとなく気配が多い気がする。

…………待て、絵美。

お前、何人連れて来た?


怖い、怖い、怖い、怖い……!

絵美や同行者がニヤニヤ笑っているだろうことを想像し、気付かない振りをしてベッドで毛布にくるむ。


よし、どんと来い!錦鯉!


びくびくしながら、絵美らが部屋の扉を開けるのを待った。






「おらぁぁぁぁぁぁ!ふざけやがって、明智秀頼ぃぃぃぃぃ!」

「うるせぇぇぇぇ!急に大声を出すんじゃねぇ!」


予想通り、タケルが扉を開けた瞬間に大声を出し、ベッドで横になる俺に向かって突進する勢いで走りだす。


「この野郎!れんぞくパンチ!あちょ、あちょ、あちょ、あちょ、あちょ、あちょ!」

「あっ!?いたっ!?や、やめっ!?か、かたくなる!」


くるっと毛布に包みサナギになりきる。

そう、今のタケルがエ●ワラーなら今の俺はコ●ーンになっていた。


「ひぃぃぃぃん」

「へっ!『かたくなる』だぁ!?いきなり下ネタかよ!」

「全然違うよぉっ!?お前からの攻撃を防御してたんだよ!?てか、なんでそんなにタケルはお怒りさんなの……?」

「『おいなりさん』だぁ!?また下ネタ言いやがって!誘ってんのか!?」

「え?秀頼様誘ってるんですか!?美鈴ならOKです!」

「わ、私も全然いつでもOK」

「いや、お怒りさんをおいなりさんに聞き間違うお前がおかしい……。え?美鈴?円?」


俺の部屋に入ってきたのはタケルだけであり、絵美と美鈴と円が扉の前で待機しているのが、毛布越しにかろうじて見える。

どんな人選だ?と思いながら、包まった毛布から顔を出し、目の前のタケルを見上げる。


──そこですっげぇ変な違和感にたどり着く。












「なんでお前、メイド服着てるの……?いやぁ、…………似合ってますねぇ。」


お怒りなタケルが制服ではなく、メイド服を着込んでいる。


「どういうこと?」と口に出し、絵美らに尋ねるとなぜか3人共メイド服である。


「…………?」


夢なんかな?

いや、しかしタケルのれんぞくパンチが地味に痛かったので夢ではないと思う。

それとも、エニアの幻覚攻撃か?

あのアイスに薬でも盛られたのか不安になる。

その確信を持てないまま、咲夜がタケルの横に立つ。

当然、咲夜もメイド服。

どういうことなのかまったく理解していない俺に咲夜が口を開いた。


「久し振りだな、秀頼。いつかにウチが風邪をひいて貴様に看病をしてもらったことがあったな」

「あぁ、4年弱くらいになるか……?」

「その時に秀頼が言ったんだ。『メイドのコスプレ着てないと追い出すからな』って」

「…………言ったかも」


ん?

あれ?

俺の見舞いに来た人みんながメイド服を着ている理由を察してしまったかもしれない。


「秀頼君、わたしとおばさんにもメイド服着ろって要求したからね!だから、秀頼君のためにみんながメイド服になりました!」

「???????????」

「ウチは貴様のどんな冗談も本気にする。それが谷川咲夜という女だ」

「は?」


咲夜の今のセリフはノリで言っているだけだから突っ込みはしないが……。

自信満々な絵美と咲夜の言葉を聞きながら、『みんなって何?』とぞっとする。


「明智さん!ボクたち、総出でメイド服着て看病しにきました!」

「くっ、忍がメイドとは不覚っ……」

「まったく、学校違う私まで呼び出されたんだよ。元気そうだねー」

「か、楓さんまで!?」

「兄さんと明智君の付き合ってる子みんな居ますよ」

「理沙!?」


うわぁ、理沙が似合うってことはそりゃあタケルもメイド服が似合うわけだよ。

似ている兄妹を見ながら納得してしまった。


「どうだ、理沙。秀頼が俺もメイド服似合ってるってよ」

「どうせ私は男顔ですよ」

「残念、俺が女顔なんだよ」

「ほ、本当?ど、どう思いますか永遠さん?」

「十文字さんが女顔だと思います」

「ほっ。ちょっと安心」


いや、こっちはまったく安心することがない。


「おー、おー!ゴミクズ先輩が男女混合メイドを10人以上見舞いに来るなんて良い身分ですなぁ!」

「め、メイドの格好とか恥ずかしいぞ」

「う、動き辛いなぁ!敵が来たら反応出来るかな?」


とりあえず、星子の姿だけ見当たらないけど、和、美月、ヨルの存在も確認した。

おばさんが今日、家に居ないことに安心したと同時に、俺はこれから何をされるのだろうか?

メイド喫茶以上に集まったメイドを見て、再び頭が痛くなった……。


>>『メイドのコスプレ着てないと追い出すからな』

秀頼がこの発言したのいつ?


第5章 鳥籠の少女

21、踏み込んだ話題




絵美がメイド発言を聞いたのは?

第5章 鳥籠の少女

24、明智秀頼は日常を望む

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