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12、明智秀頼は寂しい

結局、熱が下がらなかった俺は額に熱冷ましシートを貼り付けて、そのままベッドに寝ていたり、ギャルゲーを起動したり、スマホを弄ったりとごく普通の病人生活をしていた。


彼女たちのこと。

部活のこと。

タケルのこと。

島咲碧のこと。

ミドリのこと。

色々なことがグルグル回っていた。


叔父さんが仕事、おばさんが用事で家を開けて、完全に明智家の中で俺が1人になる。




「………………」




誰かに会いたいよぉぉぉぉ!

マジで寂しいよぉぉぉぉ!


ウサギは寂しいと死んでしまうなんて言われているが、こういうことなのだろう。

俺がウサギだったなら、今日が命日だったかもしれない。


昔はこんなんじゃなかったんだけどなぁ……。



腕を部長に壊されて以降、色々な人に励まされてきた。

来栖さんとか、家族とか、吉田とか。

その励まされたのが嬉しくて嬉しくて……。

人の暖かさが身に染みた。



(身に染みすぎて人間大好きな、1人だと禁断症状起こす奴になってんじゃねーか!お前にこんな弱点があるとは……)


1人では何するにしたってたかが知れている。

だが、2人3人と人が増えていくことでそれは無限の可能性が広がっていく。



絵美の、理沙の、円の、咲夜の、永遠ちゃんの、和の、星子の、ゆりかの、ヨルの、三島の、美月の、美鈴の、楓さんの、タケルの、山本の、マスターの、達裄さんの、サーヤの、スタヴァの姉ちゃんの……。

誰でも良いから会話がしたい!












『クハクハクハっ!例えそれが意地悪な神であったとしてもか人間?』

「概念さん!」

『エニアじゃ』


クハッと、人を見下した笑い声を上げながら褐色肌の白髪黒コート神様であるエニアが俺の寝ている毛布の上に座っていた。

神出鬼没過ぎるでしょ!


でも、誰か人と会えたからラッキー!


『クハッ!『人と会えたからラッキー』という顔をしているが、人ではないぞ小僧』

「はいはい、神ですよね。かみさまぁぁぁ!ちょっと重いんで毛布に座るのやめてくれませんか?」

『重いとかいうなアホ!』

「ご、ごめん……」

『体重35キロしかないのに重いって言われたぁ!くはくはっー!』

「本当にごめんって……」


そういえば、エニアのプロフィールに体重35キロとかいう印刷ミスを疑いたくなるような設定があったことを思い出す。



『情けない姿よのぉ、額にお札を貼りよって。まるでキョンシーみたいじゃ!ケラケラケラッ、クハックハックハッ!』

「キョンシーとか知ってるんだな」


エニアの口から出てきそうにない単語が出るだけで面白いのが不思議だ。


『クハッ、見舞いじゃ。これで熱でも冷ますのだな、脆弱な人間風情が』

「おぉ、ヒャーゲンダッツのアイスクリームじゃん!」

『人気1位のバニラ味じゃ』

「ベタだなー。ありがとう。溶けない内にいただきます」

『む?スプーンがない?あのビニコンはサービスが悪い。おい、スプーンくれ』

「コンビニをビニコンって呼ぶなよ」


無人になった明智家の台所に行き、スプーンを2本持って部屋に戻る。

部屋を空けて1分程度しか時間が経っていなかったが、エニアはベッドの上に座り興味津々でスターチャイルドの写真集を読んでいた。


原作のメタフィクションなことが書かれたノートを漁られる過去の経験より100倍マシである。


『うわぁ、神の上げたギフトをここまでノリノリに使いこなすとは。細川星子、天晴れなり』


変な感心すらしていた。

やっぱり自分の渡したギフトのことは把握しているんだなと、当たり前のことながら、人間に興味が無さそうなエニアにしては意外にも感じる。


『クハッ!スプーン来た!座れ座れ!ヒャーゲンだ、ヒャーゲン!』


写真集を横に置き、ヒャーゲンのアイスのカップを両手に持っていて足をバタバタしているエニア。

ここだけ切り取ると、近所の子供みたいに可愛いんだけどな。


彼女とスプーンとバニラ味のヒャーゲンを交換しあいながら、隣に座った。


「てか、お前。自分はリッチミルクかよ」

『クハッ、クハッ。人間如きは普通のバニラ、神はリッチなミルクよ』

「値段変わんないはずだけどな」


学校を休んでいるはずなのに、神様と一緒にアイスが食べるイベントが始まったが、これはこれで悪くない。


「おい、アイスの蓋舐めるのは行儀悪いって」

『クハハッ!お前と神で行儀を気にする仲ではなかろうて』

「確かにな……」


熱で火照った身体を冷やす意味でも、アイスはありがたいと感謝しながらアイスの蓋を開けたのであった。

前回のエニアの明智宅へお邪魔した話はこちら。

第226部分19、エニア

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