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11、明智秀頼は学校に行きたい

「絵美……」

「あ、起きた?秀頼君?」


寝かせ付けた秀頼君が、数時間経って起床する。

「今何時?」と聞かれ、素直に19時前というのを教える。

約1時間、ぐっすり秀頼君は眠っていて、わたしはその手を握っていた。


「…………ありがとう絵美。ずっと手を握っていてくれて嬉しい」

「そ、そう?うん、ありがとう」


秀頼君から感謝されると、心がポワポワとして暖かくなる。

素直に、わたしはこの人が好きなんだなぁって思う。


特に永遠や美鈴みたいに秀頼君が大好きってなったきっかけはなかったと思う。

ただ、いつも近くにいてくれたこの人が愛しい。


ほんのちょっと、彼が見せてくれた手品の姿が格好良かった。

ほんのちょっと、彼が周りの子供よりも大人びて格好良かった。

ほんのちょっと、彼がわたしの運命の人だって思った。



そんな『ほんのちょっと』が重なっていき、大好きになったんだ。



「そろそろ帰らないと親御さんが心配するぞ」

「そうだね……」

「その……、絵美がずっと付いていてくれて嬉しかった。大好きだよ」

「…………!?うん、うん。わたしも秀頼君が大好きだよ」


秀頼君の頭を軽く撫でる。

普段が彼の手に届かないだけに、寝そべっていて頭が低い位置にいる秀頼君はレアだ。


あ、ちょっと固くてツンツンした茶髪なんだと撫でながら、10年以上知らなかった事実を知る。

たまには、撫で返したくなるよね。




「ちょっと恥ずかしいな……」


秀頼君が赤くなり、戸惑ったような声を出す。

数少ない髪撫でチャンスを堪能して、彼に別れを告げる。

「明日は熱下がらないと学校休み!」と強く注意すると「わかった!」と拗ねた声を出す。


基本的にこの人、学校で誰かと雑談するのが好きみたいだから不服なんだろうなと気付き、可愛くなる。


そんな、別れたくない気持ちに引っ張られながらもわたしも帰宅する。


彼だって風邪もひくし、弱い姿を見せる。

完璧な超人じゃない。

そんな当たり前の事実がなんかおかしくなる出来事だった。






──────






「あー、クソッ……。しくったぁ…………」


朝になっても熱が下がらずおばさんから学校禁止が言い渡された。

学校に行けないなんて、そんなの寂しいじゃないか!


学校大好きな俺から学校を取り上げられ、外出も禁じられ、本気で1人になる。


「自分に『命令支配』の使用は不可能か……!」


いつぞやの咲夜の風邪を治した『命令支配』であるが、残念ながら俺には自分で自分に命令を下すのが不可能であった。


(当たり前だろ。それは『他人をゴミのように扱い家畜に、奴隷に、下僕にする』ギフトだぞ。命令者は家畜にはならんさ。命令者は命令者らしく王らしくあれ)



俺の命令が打ち消されたとでもいうの?

命令者であるこの俺の……!!



中の人の人聞きの悪いギフトの解説に、どうにかならないのか頭をフル回転させる。

基本的に『1人』嫌いな俺は学校に行きたいのである。



「よし、お前」

(あ?なんだよ?)

「俺の身体を乗っ取って、鏡を見ながらギフトを使用しろ。ギフトが放たれた瞬間俺に入れ換える」

(良いのか?俺に身体預けちゃってぇぇ!?俺様が素直にお前の命令に従うと思うのかぁぁ!?)

「俺の命令に従わない時はこの机に施した発火装置を起動させ、俺ごとお前を殺してやるさ」

(学校行きたいだけで躊躇無さすぎじゃね!?もう、お前サイコパスじゃん!)


織田との決闘の時は意識を失っていたが、俺の意識がある内に身体を乗っ取られたら腕や手くらいは操作してやるさ。


こうして、意識を中の人と入れ換えて『命令支配』をやってもらう作戦に出る。


よし、来い!、そう命令すると中の方の暗黒秀頼へ意識を切り替える。






「ひゃははははははは!身体ゲットだぜぇぇぇ!あひゃははははははは!」


興奮した秀頼が高笑いをしながら髪をかきあげる。

もしかしたら織田との決闘時にこんなハイな俺を見せられた絵美らはなんて思ったのだろう……。

厨二な自分に恥ずかしさが込み上げる。






『ちょっと秀頼っ!朝からうるさいっ!病人なんだから寝てなさいバカっ!』

「あ、はい。ごめんなさい」


別の部屋にいるおばさんのマジギレにしゅんと大人しくなる。

これ、後で俺が怒られるパターンじゃないか?

大丈夫か?

秀頼の野郎……、いつかこの復讐を果たしてやる……。


「んじゃ、ギフト使うぞ」


早くしてくれ。

俺の家の立場がドンドン悪くなる前に。


「【熱よ、下がれ】」


ギフト使用の瞬間、入れ替わる。

再び、意識が自分の身体に入る。





「はぁはぁはぁ……。ダメだな、額が熱い……」


風邪を引いていて、体力も落ちているのか、息切れを起こし、呼吸が早い。

どうやっても1日、2日程度は寝てなくてはならないらしい。


「ちくしょぅ……。マスターの店もスタヴァもミャックも行けないとか……」


(大人しく病人は寝てろってんだよ)


こうして、不本意ながら家から出れない病人になってしまったのであった。

泣く泣くふて寝をしながら、ケータイ機でギャルゲーを起動する1日が始まった。

Q.咲夜の風邪とは?

A.こちらを参照。


第5章 鳥籠の少女

15、明智秀頼は看病を依頼される







「俺の命令に従わない時はこの机に施した発火装置を起動させ、俺ごとお前を殺してやるさ」


Q.なにこれ?

発火装置って何?


A.こちらを参照

第9章 連休の爆弾魔

19、エニア

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