6、明智秀頼は自制したい
よしっ!
切り替えよう!
俺とエニアは何もない。
何もなかった。
(そりゃあ、お前がロリ神とセッ●●した夢を見ただけで何もないよ)
お?ロジハラ?ロジハラ?
(余計な言葉覚えやがってよぉ!舐めてんのか貴様!?)
ペロペロキャンディ。
(お前、俺にだけ態度ちがくねぇ!?)
なんで自分にまで明智秀頼の仮面被らないといけないんだよ。
俺の精神は豊臣光秀なんだよ。
俺はそういう性格だ。
中の人にはちょいちょい素でふざけたくなる前世の性格が現れたりしてしまうのであった。
(おー、おー。彼女持ちの余裕ってやつですか。もう一切原作とやらに関わろうと考えていない人間は余裕ですな)
これからの原作でのヤバいことは俺の親友のタケルがどうにかしてくれるんでね。
モブ人生最高。
(いや、タケルちゃんに過大な期待し過ぎじゃね!?)
中の人を論破しながら教室に戻ろうと廊下を歩いていた時である。
──嫌な声を聞いてしまった。
『お前、マジで気持ち悪いんだよ。ギフトの影響がどうとか知らないっての。クラスがお前と一緒ってだけで迷惑なんだよ』
うわ……。
ガチ虐めの声がする。
『……ごめっ、ごめんなさい』
あぁ、そんな理不尽な言い掛かりに謝罪すんなよ……。
あぁ、気分わりぃ……。
自分のことじゃないのに歯を食い縛り、握り拳を作る。
落ち着け、落ち着け……。
エニアとほにゃららな夢を見ていただの、ついさっきまで中の人と軽口言い合っていたことだの、そういう楽しかった感情が飛散していく。
「…………」
前世の部長から受けた理不尽。
叔父から受けた理不尽。
胸の中で、自分と重なり渦になる。
本当に、マジでそういうのやめろっての。
小さく舌打ちしながら、頭をガシガシかく。
ストレスばかりがたまっていく。
「…………やめろ。これは赤の他人の話。俺は関係ない……」
ぶつぶつと呟きながら自制する。
虐めなんか見て見ぬ振りをしろ。
わかってる、わかってる……。
助けたいって思うな……。
これがきっかけで、俺へ虐めの対象が移る可能性だって考えられるじゃないか。
学校ぐるみで、俺の居場所が無くなることもあるかもしれない。
だから、干渉するな……。
見なかったことにするのが正しい。
今教室に戻るとタケルや山本と馬鹿な話をする日常に戻れる。
今期アニメ『異世界転生したら焼き鳥職人になったので頑張ります!2期』の話で盛り上がりたい。
それとも、絵美や円やヨルとスタヴァの新メニューの話などをしながら癒されたい。
『ごめんなさい……、ごめんなさい……』
周りにたくさん人がいるのに、見ない振りをしてるじゃないか。
……俺だって見捨ても構わないよな。
『ごめんなさい』
理不尽に謝るなよ!
なんで、理不尽に謝ることが正しいことだって思うんだよっ!
「っ……!」
本当に最悪だ!
いつの間にか、教室へ戻るルートから離れていた。
「おい、あんた。そんな暴言はもうやめろよ」
「はぁ?なんだよ、あんた?」
これが絵美や円たちだったら……。
俺は絶対に許したくない……。
だから、干渉する。
「あんた確か明智とかいう問題児だろ!?しゃしゃってんじゃねぇよ!」
「あ、俺のこと知ってますか?明智です」
虐めていた女が俺を問題児と非難する。
まったく否定出来なかったので、俺を知っているという方へ話を誘導していく。
「なんだよ、お前?虐めは恥ずかしいからやめろとかいう先生ごっこか?あぁ!?」
「いや、そういうつもりはないけど……」
悠久と同じ先生に見られるのは、それはそれでぞっとしない。
「理由もなく虐めはよくないと思う。あ、ほら君も涙拭いて」
「あ、ありがとうございます……」
廊下の端っこで泣いていた女子生徒にハンカチを渡す。
それを虐めていた女が面白くないって顔で睨み付けてきた。
「理由だぁ!?あんだよ、理由!こいつのギフト気持ち悪いんだよっ!」
「またまたぁ!ちょっと盛り過ぎじゃない?気持ち悪いなんてことないでしょ。可愛いじゃん」
「ぅえっ!?」
ヘドロに変わるギフトとか、ハエに変身するギフトとかなら気持ち悪いと思うけど、絶対そんなんじゃないでしょ。
あの概念さんがそんな気持ち悪いギフトを配ることはないだろうという信頼くらいはある。
「マジで目障りだしよぉ!男の注目浴びようと必死でむかつくんだよ!」
「あ、好きな人取られたとか?」
「…………え?」
なんだ、嫉妬から虐めに変わったのか。
初対面のタケル大好きなヨルが俺に向ける敵対心と似たものがあったけど、そういうことか。
鈍感、鈍感と馬鹿にされ続けた俺はようやく鋭くなってきているらしい。
「…………っ!?ち、違う!私が男取られたとかそんなわけ……」
「どうしたの?話聞くよ?男のことは俺、誰よりも知ってっから」
「………………そ、その!わたっ、私が片思いの人に告白したのに島咲が好きって……。そんなの、酷くない……?」
「はぁ?なんだその男?女を悲しませるような男なんかむしろお断りって感じで振ってやれ!」
「明智……」
「人に当たらないでさ。君も失恋引きずらないで、ね。告白出来る実行力もあるし、問題児に問題児って言い放つ度胸もあるし、若い頃の広末みたいに美人だし、魅力的な性格もあるんだから自信持って!」
「え?私若い頃の広末に似てる?」
「似てる似てる」
ちょっと機嫌が良くなったのか広末が満更でもないように前髪を弄る。
まったく……、男なら女の5人や10人受け入れるくらいの器量が欲しいもんだろ。
「ふぅ……。なんかスッキリしたよ。ありがとうね、明智!島咲もごめん。もう虐めないよ」
「あ、はい……。こちらこそ、失恋の原因作ったみたいで……」
「いや、別に良いよ。良い出会いもあったしね」
…………あれ?
段々俺、槍朕な原作秀頼に思考が近付いてないか……?
その後は広末とラインのIDだけ交換して、彼女と別れた。
あ、名字は木瀬さんなんだ。
広末ではなかった。
「あ、ありがとうございました!本当にありがとうございました!」
「いやいや、良いよ全然」
虐められていた少女が深々と頭を下げる。
えっと広末が名前呼んでたっけな。
島咲さんだっけ?
…………島咲?
あれ?
名字に心当たりが出たと気付いた瞬間、なんか彼女の姿に見覚えが出てきた。
…………冗談だろ?
「また明智さんに助けられました……。覚えてますか?小学生の時もこんな風に虐めから助けてくれましたね……。ありがとう……。ありがとうございます、明智さん」
「ははっ……。ひ、久し振りだね島咲さん」
島咲碧さん。
『悲しみの連鎖を断ち切り』セカンドシーズンのヒロインのその人である。
(なんだよ、なんだよぉ!原作干渉しちゃったかぁぁぁぁぁ?ザマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)
やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
秀頼は最近山本と悠久のせい(?)で、ロジハラ弄りにはまっている。
第16章 セカンドプロローグ
5、津軽円は忘れてる
8、細川星子は緊張する
『異世界転生したら焼き鳥職人になったので頑張ります!』とは?
バトルホテルに行く際に秀頼とバスの運転手で語り合っていたアニメ。
焼き鳥職人の主人公が、勇者に成り上がっていくシナリオ。
チート過ぎる焼き鳥職人がアニオタに受けている。
第15章 初デートはホラーゲーム
5、ヨル・ヒルは胸を張る
Q.ギフトアカデミーは顔面偏差値高過ぎない?
A.エニアが積極的にギフトを配るのはイケメンや美人。
必然的にギフト所持者は顔面偏差値が高め。
広末もギフト所持者……なんだと思うけどキャラ設定ないから知らん。
エニアは面食いである。
第9章 連休の爆弾魔
28、エニアは始末する
こちらでの描写でも、エニアは顔でギフト所持者を決めている。
織田は一切タイプじゃない。