4、上松ゆりかのジト目
「と、とりあえず流石に恥ずかしいからみんな離れて……」
「もう、みんな美鈴の真似するから!」
「それは美鈴が元凶ということになるのでは?」
鹿野が去った後、ジロジロジロジロ見られている感覚が気持ち悪い。
彼女たちは不服みたいだったが、全員俺から離れてもらう。
「今日クラス替えだからね!わたし、秀頼君と同じクラス目指します」
「我も師匠と同じクラスが良いぞ」
またクラス替え談義が始まってしまう。
円が「わかったから、早くクラス見に行こう」と手を叩きながら全員の注目を集めていた時だ。
俺たちの後ろ側から見覚えのある原作キャラクターがこちらへ歩きだすのが見えた。
その姿を見て、ようやく今日行われるイベントを思い出した。
奴らの狙いは…………タケルだ。
「どうした秀頼?」
そうか、ギフト狩りか……。
関翔の姿を認識して確信する。
タケルのギフトである『アンチギフト』の確認のために……。
そして、原作の流れに沿って、彼は自分のギフトを使用し、火の玉をタケル目掛けて投げつける。
ここで、ギフト狩りに『アンチギフト』の確証を持たせてはならない。
火の玉がぶつかった瞬間にアンチが発動しないように、俺がタケルを庇うように前に立ち、ポケットに手を突っ込みポケットティッシュを投げつけた。
火の玉とポケットティッシュが空中でぶつかり、俺と関の中心で灰が舞う。
セーフ!
タケルの『アンチギフト』を使わせるフラグをへし折った。
「秀頼……?俺を守ったのか?」
「まぁ。多分そんな感じ」
ティッシュ3枚くらい入っていたのに勿体ねぇと、今やどこに行ったのかわからない黒い灰を死んだ目して悼んだのであった。
「あんた、いきなり火の玉ぶん投げるなんて趣味悪いぜ」
「わりぃわりぃ。手が滑ってよぉ」
『視界に入れたギフトをコピーする』ギフトを持つやべぇ奴。
関翔は、今、確信を持ってタケルに『アンチギフト』を使わせようとしたのだ。
当然、これは俺──明智秀頼の死亡フラグになるのでバッサリとへし折らせていただきました。
「お前……、関か」
「ごめんなぁ。ちょっと俺のギフトが暴発してまさか十文字目掛けていたなんて知らなんだ」
「…………え?」
なんでこの2人既に面識あるん?
セカンドの冒頭で事故装ってきた関がタケルと知り合うところからセカンドって始まるんだったような……。
関翔の顔を見て、ようやくセカンドのプロローグの内容を思い出したが、既に剥離が生まれていてマジでわけがわからなかった……。
「何やってる関」
「いやぁ、ごめん…………って、上松!?」
「なぜ我を見て驚く?」
ゆりかがジト目で関を非難する目を向けている。
その渦中の彼は他にも人がいるのにも気付いたようだ。
「しかも、三島に深森まで……」
「というかこの人誰ですか?」
「ボクたちの1年生の時のクラスメートの関翔さんですよ。詠美ちゃんからオモチャにされてる人です」
「あぁ、詠美ちゃんに……」
「てか、なんかこの子詠美に似てるな……」
髪を下ろす絵美は、身長以外は詠美にクリソツだからね。
似てるのも仕方ない。
「と、とりあえずごめん」
「俺じゃなくて秀頼に謝ってくれ」
「え、えっと……」
「明智秀頼……」
「あ、明智か。本当にごめんなさい」
「えっと……、関って言うんだっけ?まぁ、いいよ。気にすんな」
初対面を装いながら、ギフト狩りの本格的な始動が始まり、嫌な汗をかく。
五月雨茜の入学も、星子と和と同時だからな。
ギフト狩りだと知っているのを悟られない振りをするってのも大変だ。
「そっか、悪いな。この埋め合わせは今度するよ。また会おうな、明智」
「あぁ」
お互い、腹の探りあいのようなファーストコンタクトを終えて、関は1人で学校の校舎内に入っていく。
「まぁ、気にすんな秀頼。関はちょっとぐいぐいくるけど、悪気はない奴なんだよ」
「あ、あぁ。てか、どんな仲?」
「前に何回かマスターの喫茶店に行ったダチみてぇな奴」
「え?あいつとウチに来たことあるのか?」
「あぁ。マスターと、山本とも面識あるぞ」
「山本も面識あんの!?」
山本と関とかいう組み合わせ……。
そ、想像できねぇ……。
タケルが鹿野を知らないのと同じで、俺もタケルの交遊関係なんか知らないところがあるんだなぁと考えさせられた出来事であった。
「とりあえず秀頼さん。早く、クラス見に行きましょうよ」と永遠ちゃんに急かされながら発表されたクラス替えを見に行く。
「あ!わたし、秀頼君と同じクラスだ!」
「お?明智とタケル、あたしと同じクラスじゃん」
「ま、当然同じクラスだよね」
「へへっ、やっぱり秀頼と同じクラスだぜ」
絵美、ヨル、円、タケルと、絵美以外は完全に原作の秀頼と同じクラスメートであった。
因みにそれ以外は……。
「ま、またボクは明智さんと違うクラス!?」
「み、美鈴は認めたくありませんわ。そんな事実」
「秀頼さん……」
違うクラスという無慈悲な結果になっていた。
「てか、また山本と同じクラスじゃん」
山本大悟の字も発見してしまったのであった。
「てか、俺らのクラスにすげぇ名前の奴いるな。ターザン・スルスル・メータンって誰だよ!?名前濃すぎじゃね!?」
「ワイルドな人ですよ」
「すげぇ、ターザンさんと同じクラスだぜぇ!」
俺の横でタケルと三島とヨルがよくわからないことではしゃいでいたのであった。