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3、岬麻衣は変わらず呼ぶ

寂しい登校時間を終えると、三島と美月と美鈴の3人と出くわす。

いつもの感じで「おはよう!」と声をかける。


「あ、……おはよう明智さん」

「あ、秀頼だ。おはよう」

「あ、……おはようございます」

「…………」


素っ気なく、俺なんか眼中に入らないようにそそくさと去ってしまう。

みんなして会話の冒頭に『あ』を付けて秀頼に素っ気なくするゲームでも開催しているんじゃないかとすら思える。


「プププ、頼子クソザコ過ぎて笑う」

「麻衣様ぁぁぁぁ!ありがとう!」

「…………ドM?」

「いや、違うよ?全然違うよ、いや本当に」


麻衣様が普通に口を開いてくれただけで女神に見えてきた。

彼女のクソザコ呼びにも慣れてきちゃった。

優しくされただけで惚れそうになる。

単純な男心である。


「というか俺秀頼なんだよ。なんで未だに頼子呼びなんだよ!?」

「知らない。アタシにとってあなたは頼子であり、頼子でしかないの」

「暴論……」

「アタシに明智秀頼って名乗らなかった頼子が悪い」

「う……」


麻衣様は頑なに頼子呼びに拘るようだ。


「結局、なんで頼子は女になったり、男になったりしてるのよ?」

「浅井千姫って奴のギフトのせいだよ。あいつのせいで頼子になってたんだよ」

「浅井か。同じクラスだな」

「千姫と麻衣様に意外な接点が……」


ということは麻衣様も概念さんのクラスメートなんだな。


「なるほど、浅井に頼めば頼子になれるのか……」

「ちょっと麻衣様!?あんた何する気!?」

「いや、同じクラスメートだし浅井とも仲良くしようかと」

「頼子にはならないぞ!?」

「頼子はアタシの1番の親友なんだ」

「2回しか会話してねーじゃん。なんなら、男状態の俺と会話しているのも今2回目だし」

「頼子の顔で逆らわれるのイラッとくるわね。クソザコの癖に!」


なんか麻衣様は頼子専用友達のイメージなので、秀頼状態で彼女と会話するの新鮮だな。


「なんかね、今日みんな素っ気ないの……。だから普通の反応をしてくれる麻衣様に嬉しくなって……」

「もう、こんな時だけより頼子みたいな顔するのやめなさい……」

「頼子と親友なら、俺とも親友になってよ」

「えー、考えとく」


冒頭に『あ』がないだけで、なんか優しく見えるから不思議である。

麻衣様と雑談を終えて、そのまま教室へ戻るために廊下を歩く。

しかし、チロチロと視線を感じる。


『あの人、明智さんだよ』

『ゴリラブタで有名な織田を決闘で堂々と打ち破ったんだって!カッコいい!』

『ギャラリーの目撃情報だと剣道部最強の部長を圧倒したんだと!』

『俺は多重人格だって聞いたぞ!』


周りで色んな声を聞く。

多重人格って変な噂が流れてるな……。


(面白ぇな、主!モテモテじゃねぇか!)


嬉しくねぇよ。

秀頼にからかわれて脱力していた時であった。


「ヨリ君!ヨリ君!」

「あ?千姫じゃねーか」


特徴的な右目下の黒子が特徴的な浅井千姫が教室の出入口で待ち伏せをしていた。

麻衣様と同じく千姫は素っ気なくないらしい。


「今日のお昼に部室に来てくれない?タケルちゃんも混ぜてお話があるんだ!」

「お?もしかしてタケルと付き合う?」

「なわけねーだろボケ!あたしは高望みなの」

「はぁ……」


付き合うような好感度もないだろうし、そもそも浅井千姫なんか攻略ヒロインでもなんでもないモブ女だ。

付き合った方がルートから外れるし俺が困る。


「じゃあまた後でねっ!」


千姫はそのまま走り去った。

タケルがいるなら変なギフトも使わないだろう。

部活で全く使われない部室ってなんだよって心で今更突っ込んでしまうのであった。


「見ろよゆりか、こういうアプリがあるんだ」

「ほう……。これは健康に良いアプリだな。ただインストールする可能性は30パーセントくらいだな」

「それはする気ないだろぉ」


ヨルとゆりかがスマホの話題で盛り上がっている。

この2人に声掛けて『あ……』とか言われて気まずい雰囲気になりそうだと察して、見て見ぬ振りをして席につく。

モヤモヤしたまま、その日の午後まで授業を受けるのであった……。

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