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1、決闘

『衝突した!クハッ、衝突したぞ』


エニアは目的の2人がぶつかったことに歓喜して震えていた。

見たかった画がついに実現したのだから。


人間でいうなら数ヶ月前から楽しみにしていた映画が公開された、そんな気分なのだ。

ワクワクして、ワクワクして、ようやく制作会社のロゴマークがババンとスクリーンに表示されたことと同意義。

ようやく、幕は上がった。


『こんなもの、勝利するのは明智秀頼に決まっている。人間の言葉で言うなら100パーセントだ。……わかりきった勝敗に神は興味なんかない。クハッ、神が興味あるのは勝利する過程が見たい』


歴史で言うなら『本能寺の変』だろうか。

明智光秀の裏切りにより、織田信長は夢半ばにして死亡してしまう。

そんなわかりきった結果に価値はない。

しかし、現代でも明智光秀が裏切りまでに至った過程は未だに謎が多い。

人間は過程を知りたがる。

謎があればあるほどに渇望する。

自分の人生にはなんの意味もないのに、求める。


神も結局は、人間と同じ思考で考えてしまっていたのだ。


『サクッとやっちまっても良い。じわじわと時間を掛けても良い。──あの優しくてお人好しな明智秀頼が因縁をどうやって断ち切るのか。なぁ、楽しみだろう?神たる我、エニアはあの男が大好きなんだ。あぁ……、初恋ってこんな感じなのか?なぁ、理知歩愛紗』


自分の右腕とも呼べるべき存在の女へ声を掛けるも返事がない。

『そうだった』と、神が彼女の存在を思い出す。


『あぁ、初恋が昂って消してしまったんだったか』


明智秀頼が前世でやっていたゲームのヒロインが理知歩愛紗だったということで切り捨てたことを思い出す。

だが、彼女は死んでいない。

消滅はしたのだが、死んでいないのだ。


『クハッ!クハハッ!チェスで言うなら理知歩愛紗は神の切り札のクイーンよ。まだまだひた隠しにするさ』


愛紗から奪い取った心臓はもう、エニアの手にはない。

なぜならもう既に近くに配置しているのだから。


『さぁ、足掻いて見せてくれ』


神はスーッと消えていく。

舞台挨拶から、観客席へと彼女は移動したのだから。

そして、時間は動き出す──。







─────






俺は、変な男に目を付けられていた。

なんだろう、本能的に嫌悪感がある男だった。

まとっているピリッとした空気は、前世のあの男に酷く酷似している。


「なぁ、おい。積もる話もあるだろう?2人っきりになろうぜ?な?」


ゲスくて見下した目で坊主の先輩は俺を見ていた。

有無なんか言わせない。

これは多分、強制だ。

そして、自分が引き連れていた後輩共を解散させた。

俺も、仕方なく助けた女子生徒に声を掛けることになる。


「あ、とりあえず俺が交渉するか…………あ、麻衣様だ」

「麻衣様って……。やっぱりあなた男になった頼子!?」

「あ……、やべ……」


素で麻衣様とか呼んじゃった。

恥ずかしい……、頼子の癖が抜けてない……。


「もしかして頼子って生えてる?」

「あ、ごめん。ちょっと後で説明するから頼子を忘れてくれない?あと、生えてる?とか聞くなよ」

「な、なんで頼子が男になってんのよ!?」

「頼子が女になってたんだよ!麻衣様にも後で説明するから待ってて!」

「クソ雑魚の癖に生意気!まぁ、良いわ。頼子について後で説明してもらうから!」


なんとか麻衣様を言いくるめご退場させていただいた。

全然会ってなかったのに頼子として知られたとか、よっぽど俺と頼子の姿は似ているらしい。


「それで?俺とあんたは初対面のはずですが?どなたでしょうか先輩?」


失礼な話、坊主頭の見た目がゴリラ……オブラートに包んでオランウータンみたいな先輩に向き合った。

なんか視線にイラッと来るんだよなこの人……。


「おいおい、初対面じゃねぇだろぉ?それとも、そっちは忘れてる?」

「な、何がだよ……?」

「一緒に剣道してさ、インターハイ出場とか目指して汗水流したろ?」

「はぁ?」


誰だよこいつ……。

剣道なんか達裄さんとしかしたことねーよ。


「だからぁ……。本当にお前ってあったまわりぃよなぁ……」

「……」


誰なんだよ、このゴリラ。


(このゴリラぶっ殺してやるか?)と、俺の中に眠る秀頼が問いかけてくる。

頼むからお前は引っ込んでてくれ。


「豊臣ぃぃ?お前の肩を扉でぶっ壊してやったこと忘れたかぁ?」

「あ……?あんた……、徳川か?」

「徳川先輩だろぉ?なぁ?お互い姿忘れちゃったからって前世のこと無しにすんのはちげぇよなぁ」


あぁ……。

この男の蛇みたいな狡猾な目は部長だ……。

なんで……。

なんでこんなところにこの男が……。

呼吸が重い……。


三島遥香の『エナジードレイン』をその身に受けていた時より、気持ちが悪い……。

自分が立っている姿勢すら崩れそうだ。


「お前が死んでからよ!俺の人生散々だったのを思い出してよ!生きてても、死んでてもお前は邪魔だったんだよっ!」

「…………」


知らない……。

知らない……。

今更お前なんか出てくるな……。





「オイッ!」

「!?」


俺の肩が捕まる。

やめろ……。

やめてくれっ!

壊さないで……。


突然、俺の身体がゴリラより引き離される。


「秀頼虐めて何やってんだてめぇ!」


でも違った。

肩に乗せられた力は優しく、俺を守るための物だった。


「た、タケル……?」

「お前は誰よりも強いっ!だからビビるなッ!」


わけもわかってねーのに、タケルが俺を叱責する。

そうだ。

こんな人間相手にビビったらエニアなんかどうしようもねぇだろうがっ!


「オイッ、なんだこいつ?ホモか?バイか?仲良しこよしの友情ドラマってやつ?」

「きめぇこと言ってんじゃねーよ、ゴリラがっ!」


やめろ、タケル。

こいつは蛇の目をしたゴリラだ。


「まぁ良いや。俺は織田家康だ。名乗れよ」


前世の剣道部・部長である徳川信長が織田家康と名乗る。

自己紹介しろと促しているらしい。


「十文字タケル!」

「てめぇじゃねーよ!茶髪男に言ってんだよ!」

「……明智秀頼」

「そうか。じゃあ、明智。生徒手帳を出せ」


そう言って織田は自分の生徒手帳を床に叩き付ける。

俺も自分のブレザーの内ポケットにある生徒手帳を床に叩き付けた。


「1週間後、決闘といこうじゃないか」

「あんたが、それで満足するなら」


原作で脈絡もなく唐突に出てくるギフトアカデミーの決闘システムが発動する。

お互いの生徒手帳を床に叩き付ける儀式をすることで、決闘の申し込みになる。




決闘とは。

相手がギブアップするまで叩きのめす。

ルールはプレイヤー同士が決める、死んだら死んだで事故扱いされる。




ギフトアカデミー内でも年に1回あるかないかくらいの頻度らしい決闘に俺が使命されたのであった……。



「嘘だろう!?何乗ってんだよ秀頼!?」

「これは、俺がやらなくちゃいけないことだから……」

「弱虫の癖に潔いじゃねーか!成立だ。決闘方法はギフトありの剣道勝負ってことで決まりだ」

「お好きにどうぞ」

「俺はお前が思っているより5倍は強いぞ」

「……っ!?」


つまり、前世より5倍強いと自己顕示をしているわけだ。

そうか、成長したんだな。


「ちょっと待てよ!?そっちが一方的にルール決めやがって!秀頼はギフトなんか覚醒してねぇんだぞ!?せめてそこのルールは取りやがれ!」


タケルが徳川の意見に食い付く。

当事者の俺より、タケルの方が頭に血がのぼっていて、俺の方が客観的になっていた。


「気にするな。むしろハンデだ。俺のギフトは『顔を見た奴の前世を知る』。それだけだ。俺のギフトは、常時発動状態のままだから一応の保険ってやつだ。そこにケチを付けて反則取られるのも困るからな。そんなに気に食わねぇなら決闘に有利なギフトを1週間以内に覚醒させれば良いだろう」

「そ、それならイーブンってわけか……」


タケルは頷いてしまっているが、この男がイーブンな試合なんかするわけがない。

試合に勝てそうにない相手の竹刀に細工するようなクズなのを俺は知っている。

もうちょい疑ってくれタケル……。


絶対に何かある。

でも、穴がわからない以上、指摘のしようがない。

それにギフト自体は俺だって使用可能。

支障はない。

でも、いつかは乗り越えたかった壁だ。


「やってやるよ。お互い、存在が邪魔みたいだからな」

「話がわかるねぇ。流石、明智さんだなぁ」


わざとらしく拍手して煽りながら徳川は消えていく。

そして、明智秀頼と織田家康の決闘の話題が学校中に広がっていった……。

原作世界の織田家康君はどんな人生を辿ったのか、一応既に語られています(名前は出してません)。

後でまた語りますが調べてみてね。



なんちゃらリベンジャーズみたいに殴り合いで解決する案もありましたが、やっぱり剣道で解決させたいですね。

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