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26、サーヤ

「いらっしゃいませ!……、違うか。いらっしゃ……うーん。いらっしゃいませぇ!…………なんか違う」


店で1人、挨拶の練習をしている人を見付ける。

緊張しているのか、ガッチガチに堅い。


「いらっ、……いらっしゃ…………。接客ってムズ……」

「…………」


俺は一体、オンボロ占い店に来て何を見せられているのであろう……?

『いらっしゃいませ』の練習している人をはじめて見た。


「知り合いからお客さん紹介してもらえるなんて始めて過ぎてテンションがわからない……。しかも、そろそろ来るのに……。大丈夫?時間大丈夫?2分遅れてるけどもしかしてボイコットされてる!?まだ来てない!?…………あ」

「…………あ」


『暗黒真珠佐山』の店員さんとガッツリ目が合う。

女の店員さんが俺の顔を見て慌てだす。


「…………」

「あっ!?待って!お客さん、逃げないで!」


仕切り直しも込めて『暗黒真珠佐山』の扉を閉める。

あのテンションで『占ってください』なんて俺が言えない。

『接客苦手なら知り合いの笑顔が似合うスタヴァの姉ちゃんを紹介しますよ』と接客のプロを紹介をしてしまいそうになる。


「おっ、こんなところに占い師のいる店あんじゃん!せっかくだし行ってみよっ!」


偶然、たまたま占いをしてもらいに来た客が明智秀頼だというオリジナル設定を付与して、店の扉を開ける。

店主も俺が消えた意図を理解していたらしく、きちっと座りながら俺を出迎える。


「……おや?こんなボロ店にお客さんとは珍しい。人の子よ、何か人生に迷子になってしまったかな?」

「ええええぇぇぇぇぇ!?」


全く違う接客になっていてリアルで驚愕してしまう。

何、図々しくミステリアスさを演出してるんだよ。

さっきまで『いらっしゃいませ』の1つすら言えなかったじゃん!


「おやおや?こんなボロ小屋とて営業はしてますよ。ふふっ、妾は寛容だからな。笑って流してやろう」

「いやいやいや!こっちは笑って流せねぇって!」

「マスターが紹介したという常連客ですね。妾はここの店主を務めるサーヤと申します」

「世界観のごり押しが強い!」

「人生の迷子者をサービスカウンターに送っちゃうぞ☆」

「スタチャスマイル風に言われても……」


サーヤと名乗った女性は見た目のインパクトも凄い。

桃色のドリルツインテールである。

ほぼ二次元限定みたいな髪型であるが、目の前でコスプレでもなんでもなく、普通に美人でそこに存在している様は、この世界も二次元だとことを思い出させる。


ん?

桃色、ドリル、サーヤ…………あっ!?

思い出した!

これ、前世でプレイしたギャルゲーの悪役キャラクターじゃん!


確か『悲しみの連鎖を断ち切り』と同じメーカーの1作目前『わけわかめ恋愛』に登場する悪役だ。

というか、わかりやすい黒幕ポジションだ。

主人公の浩太に惚れて色々な手で誘惑するも、浩太が個別ヒロインとくっ付くことでハッピーエンドを迎える作品だ。


因みに悪役のサーヤは主人公の想いを叶えられることは出来ず、爆弾によりリアル爆死をしようとしたが浩太により救出される。

そして、爆発の影響で浩太やヒロインのことを忘れてしまいただの一般人として生きるみたいなラストで締められる。


明智秀頼や、佐々木絵美、エニアなどに比べたらかなりまともな最期である。


まさか、スカイブルー作品は世界観が統一している設定だったが、まさか別作品の悪役に会えるなんて夢にも思わなかったぜ。

すげぇ……、なんかタケルに始めて会った時の様な衝撃がある。


桜祭がツイッターで『美鈴はサーヤをモデルに悪役にした』ことを公言しており、『美鈴とサーヤはルートがない悪役だから輝くのであって、ヒロイン扱いにしたら凡百なヒロインと変わらなくなる』と投下し、色々炎上していた。


美鈴ファンは数少ないが、黒幕兼ラスボスなサーヤはファンも多く、『凡百なヒロインで結構だからルート作れボケ』とユーザーと日々プロレスをしていた。


それに影響され、新発売したハードに『わけわかめ恋愛』にルート追加と大々的に発表した際は『待望のサーヤルート追加!?』と話題になったが、蓋を開けたら2時間程度で終わる空気な追加ヒロインのルートが1人分だけであった。

因みにサーヤ関連は、バッドエンドが1つ増えただけ。

また叩かれる羽目になっていたのは記憶に新しい。


「あと、サーヤじゃなくて佐山ですよね?」

「サーヤです!サーヤ!」

「だって店の名前が佐山って……」

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

「ええええぇぇぇぇぇ!?怖いなぁ、この人!」


記憶を失っていても、ラスボスはラスボスだった。


「あ、それとマスターから今回は半額で良いとか聞いたんですが本当ですかね?」

「あら、当然じゃない。君には『暗黒真珠佐山』の占い師の佐山は世界一だって口コミしてもらうんだから!」

「え?佐山って認めた?」

「サーヤです」


にこっと妖艶に笑ってあしらわれてしまう。


「ん?」


佐山さんが接客している机に1枚の張り紙があった。


「え?あれ?『学生証提示で半額』……?…………俺が学生って聞いてました?」

「聞いてますよ」

「俺が学生証提示したらもう半額に……?」

「既にお客さんは学生割引している値段なので……」

「全然お得になってるわけじゃねーな。ただのサービスじゃねぇか」

「目ざといなぁ!もう!」


プリプリと佐山さんは不機嫌な声を出す。


「しかし、佐山さん占い師って割りに若いですね」

「おーほっほっほ!お肌のケアはきちんとしているもの!」

「大学生って言っても信じますよ」

「大学生だよ」

「え?大学生なの?店の店主してるからもう社会人だと思ってた」

「ただの思い込みぃー」

「……」


バカにしたようにクスクスと笑う。

髪型や態度を加味するとバカにしたようというか、バカにしているんだろう。

なんかイラッとする人だ。


「大学生なら普通です。特に若いって感じしないです」

「舐めてんのかキッズが!」


ちょいちょい言葉が悪い辺り、ラスボス時代の片鱗を感じる人である。

佐山サーヤが本名なわけではなく、本人は佐山という名字があまり好きじゃないのでサーヤと自称しています。


別にサーヤはメインキャラではないので、頭の片隅に残しておくくらいで十分です。

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