23、十文字タケルは激励を送る
「明智君に突然出来た妹です。可愛がるのは悪くないと思います」
「はい……、はい……」
スタヴァでスタチャ談義をする場は、いつの間にか趣旨が大きくズレてしまい、理沙から変な説教を受けていた。
可愛い星子なのもわかるが、妹離れの時期じゃないかと言うのである。
「でも我も弟は可愛かったなな」
「え?弟いたんですかゆりか先輩?」
「しかし、最近の明智君は度を越しています!……、そ、その優しさを彼女とか作ってそちらに与えてあげたら良いんですよ!」
普段会えないぶん、ちょいちょい星子には甘いが度を越したってなんだろう?
俺の気持ちはまだ3分の1も伝わっていないのに。
むしろ抱き付いたりしないだけ自制しているのだが、黙って頷いていた。
助けてくれ、タケルぅ……。
男が弱くて困っている場に来てくれタケル……。
普段のお前を育てている理沙が強すぎるよ……。
タケルを呼びだそうとスマホを取るか悩むが、今日は忙しそうにしていたしなぁ……。
俺はスマホをポケットにしまって立場の弱い男のようにしょんぼりと返事をするのであった……。
─────
女3人の数の差で秀頼が小さくなっていた頃……。
秀頼に助けを呼んだら白田が来たという自体になる。
「これは何の集まりでござるか?『星の一滴』のレビュー会でござるか?」
「ほ、星の一滴って何?」
「ギャルゲーでござるよ関氏」
「は?はぁ?」
一応軽くは自己紹介をした関と白田。
そして、関はRPGやアクションゲーなどありきたりなゲームしかしない男である。
秀頼のギャルゲー博士に話が付いて行けるのが、白田というホワイト博士なのである。
「もしかしてやってないでござる?義務教育だお?」
タケルと山本は最近教室で秀頼から『星の一滴』というギャルゲーを紹介され、貸されていたので内容は大体わかっていた。
……が、ミャクドナルドでもそのギャルゲーの名前が出るとは予想出来なかった2人である。
「や、やってねーよ。……そもそもゲームの話してねぇから!恋愛話だよ、恋愛話!」
「まぁ、そうだったな」
関の指摘に、タケルが同調する。
話が割り込む人がいると、話題が脱線するあるあるに山本は苦笑いをして、帰りたさがもっと増幅する。
「恋愛相談でござるか?乗るよ、リヤカーに乗ったつもりでビシバシ指摘するお」
「リヤカーは不安だなぁ……」
そもそも白田って彼女いるの?、と山本は堂々とした彼を見て疑問が尽きなかった。
「そ、その……。好きな人がいるんだけど、手応えがなくてよ……」
「関氏のバカ野郎!」
「えっ!?」
白田がブルブルと関を揺らす。
ハンバーガーを食べようとしていた関は必死に落とさないようにハンバーガーを死守する。
「モテないと嘆く暇があるなら、行動に移せよバカ野郎!これで話は終わり!『星の一滴』の話題に移るでござる!」
「お前のその性格でまともなこと言うなよ」
「後半が台無しにしてんだよ」
山本とタケルがあまりにも力技で恋愛相談を打ち切ろうとする姿に突っ込まざるを得なかった。
やたら迫力ある力説にギフト狩りの関も怯む。
白田が武器を持っていたら正当防衛と主張して殴り返しそうなくらい、圧が凄かった。
「大体関氏、女の心がわからないからモテないんでござるよ」
「なんだと!?白田にそんなことわかるのか!?」
「わかるよ。『星の一滴』のメインヒロイン・七夕射手ちゃんがNTR野郎の魔の手に落ちそうになった時に気高く言ったんだお」
「『あなたは女の心がわからないからモテないクズ野郎なの』」
「『だから電車に轢かれて死ねぇぇぇ!』」
タケルと山本は『星の一滴』の名シーンと名高い一幕を再現する。
「わかってるでないか!」と白田は惜しみない拍手を起こる。
ギャルゲー博士の秀頼も認めるざまぁな名シーンはタケル、山本、白田の胸にも熱く残っていた。
「ふっ……。これでわいらは『星の一滴同盟』を名乗ろうじゃないか」
「名乗らないよ」
山本はやんわりと拒否する。
彼は白田について、顔は笑っているけれど目が笑っていない時があり、なんかやべぇ奴オーラをひしひしと感じていて、積極的な関わり合いを避けたいのであった。
(なんか、こいつおかしいんだよな……)
(こいつ怖いな……。ギフト狩り要注意人物じゃねーか?)
タケルと関も、少なからず白田のオーラを警戒しつつあるのであった。
多分、何も察してない男は秀頼だけである。
「まぁ、でも言いたいことはなんとなくわかった」
「わかったでござるか!関氏もギャルゲーをして女心を知るでござる!友情の印にギャルゲーを進呈しよう!」
「は?『星の一滴』とかいうやつ?」
「いや、『マッチョフレンズ』でござる!ヒロイン全員レスラーや力士の武道派のゲームでござる!わいが同士の明智氏に貸したら『冒頭2分でゲーム投げた』と言わしめた伝説のゲームだお!」
「だ、誰だよ明智って!?しかもパッケージの女全員可愛くねーし!要らない!要らないよ!『星の一滴』とかいうの自分で買うからさ!」
関がイヤイヤと『マッチョフレンズ』の進呈をお断りする。
つまんないってシケた目を白田が向ける。
(将来の白田、なんかやばそうよな?)
(事件起こす気配しかないよな?)
タケルと山本が白田の目から、将来のヤバさをなんか感じていたのである。
「ちぇっ……。ボリーを瞬殺するシーンなんか名作なのに……。マッチョ、マッチョなオープニングも良きなのに……」
ふくれながら『マッチョフレンズ』のゲームを仕舞う白田である。
「とりあえずありがとうな、タケルに山本!俺なんか掴めた気がする!」
(何を掴んだんだ?)
関がタケルと山本に頭を下げる。
因みに山本は何を掴んだのかさっぱりわからない。
「あぁ!頑張れよ翔!」
タケルは惜しみない激励を送る。
自分の発言したことが、関に伝わったんだと信じて疑わない。
「ねぇ?わいは?わいは?」
自分の名前が無かった白田は関に疑問の言葉を投げ掛けるも華麗にスルーした。
「じゃあ、今から『星の一滴』買いに行ってくるわ!」
関のその言葉を皮切りに、ようやくミャクドナルドの野郎会談は終わりを告げる。
数日後、関はギャルゲーにどっぷりはまることになるが、それはまた別の話……。