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21、佐木詠美の助言

関翔は廊下に佇んでいた。

通りかかる人を見る度に違う、違うと人を見送る。

指では数を数えるのが難しくなった頃、待ってはいなかったクラスメートが関に通りかかる。


「君、黙ったままチラチラしてるとか普通に不審者なんだけど」

「うるせぇよ、詠美。ガキの頃からの知人だからって舐めてると潰すぞ!」

「いや、セキに潰される義理もないんだけど」


つまらない目をした佐木詠美が煽りに煽り返す。

彼女にとって、関翔という男は臆病な虎みたいな男だった。

図体だけデカイ、ハリボテの逞しさを持つ彼にはお似合いな表現だと詠美は心でコクコクと頷く。


「あー、ダメですね。この男は女にモテないですよ」

「オレ、詠美がモテてるとこも見たことないんだけどな!」

「私は女にモテなくて当然ですよ」

「なんでそこだけ条件同じなんだよ!?普通、お前は男にモテないって意味だろ!?」

「あら、失礼」


お互い『コレを異性には見れねぇわ』という共通認識によりズバズバと切り込める仲になっている。

中学以降、ほとんど接点が消えていたが、高校生になって同じクラスになり復活した接点だが、これもお互いが『復活しなくていーわ……』と認識している。


「だいたいっ…………!?」


詠美と話していると、関が探し人を見つけて詠美を素通りする。

面白くなりそうセンサーが反応して、詠美は視線で彼を追う。

そこに、関がたまに振られている元凶の女が歩いていた。


(見た目は美人でこれは中々に良い趣味してるわね)


詠美が上松ゆりかの全身をくまなく採点していくと、100点満点中91点。

なるほど、彼の片思いセンサーが腐っているわけでは無さそうである。


「よぉ!上松!放課後どっか出掛けない?」

「あぁ。我は今日友人と用事があるのでね。失礼する」

「…………」


ゆりかはついさっき秀頼と理沙とスタヴァに行く約束をしたばかりであった。

なんの脈もない返答を返し、長い髪を揺らしながら廊下の奥へ消えていく。


「…………む?」

「ん?」


そのゆりかが詠美の顔を見て、足を止める。

クラスメートである佐々木絵美と似た顔付きをしているのに気付き、一瞬足を止めた。


「いや、失礼。なんでもない……」

「あー、もしかしてあなた、エミと友達?似てるっしょ」

「あ、あぁ。……うん、やっぱり似てるな」

「へぇ……。私、エミの従姉なの。だから今度ゆっくり話そう」

「わ、わかった。楽しみにしている」


ペコリと頭を下げると、ゆりかは教室の方向へ歩いていく。

ゆりかもゆりかで、西軍の集まりで絵美と似た子がどうこうという話題があったのを思いだし、あの子がそうなのだと確信したのであった。


「…………て、ことはひぃ君と同じクラスか。なるほど、なるほど」


ゆりかが立ち去った後、関がまたショックが抜けない形で立ち尽くしていた。

それに詠美が近付いていく。


「……また、師匠とかいう男か?ぐぅぅ、いや、まだ付き合ってはねーだろ。流石にな……」

「…………」


ネチネチしている関を見て、『あっ、完全に脈ねーわ』って察した。


「なぁ、佐木。どういう男がモテる?」

「イケメンで、優しくて、イケメンで、ユーモアがあって、頭が良くて、強くて、包容力があって、ワイルドさがあって、イケメンな男じゃない?」

「イケメン3回くらい出なかった?てか、そんなのもうギャニーズ事務所じゃん」

「因みにセキは100点満点中12点ね」

「なんだとごらぁ!?」

「これでも知り合いボーナスで3点アップしてんだからね!」

「本来なら10点すら行かないのか……」


関は頭を抱える。

毒舌詠美の偏見も混ざっているに違いないと意地悪に気付く。


「どうすればモテる?」

「さぁ?そんなの彼女持ちの男に聞けっての。私に聞こうとしたからマイナス10点ね」

「あれ?オレの点数マイナス越した?」








その放課後、詠美のありがたいお言葉を頼りに、イケメンで、優しくて、イケメンで、ユーモアがあって、頭が良くて、強くて、包容力があって、ワイルドさがあって、イケメンな男を探すため、廊下にいるのかもわからない男のためにスタンバっていた。


あれはイケメンじゃない、あれは優しくはなさそう、あれは馬鹿そうと男を判断していく。

中々見付からず、ギャニーズ事務所にでも出向こうか探していると、1人貴重なイケメンを見付けた。


「おい、ちょっと……」そう言って初対面の男を捕まえる。

「え?」と振り向いた男はなるほど、イケメンだと納得する。


「俺は関だ」

「はぁ……。そうですか。山本っす」


部室に行こうとしていた山本は突然初対面の男に声を掛けられて困惑するのであった……。

なんで声を掛けられたのかいまいち良くわかってない山本だったがとりあえず名乗っておいた。


「な、なんかしたっすか?」


関が山本に声を掛けたのはイケメンながら全然怖そうな気がしなかったからである。

ギフト狩りをしている際はちょっぴり勇敢になれるが、プライベートでは積極的に怖い人に近付きたくないのである。

怖いから。


「山本、彼女いるだろ?」

「あ?あぁ。まぁ……」


山本が反射的に長谷川雛乃のことが頭に浮かび頷く。

関は、自分の目に狂いはなかったと確信する。


「頼む!モテる方法を伝授してくれ!」

「…………え?」

「今から!」

「今から!?今から俺部活なんだけど……」

「そこをなんとかっ!オレ、彼女にしたい人がいるんだが全然ダメなんだっ!部活休みの日でも良いけど……。なるべく早い内に……」

「いや、ほとんど部活ばっかりなんだけど……」


部活サボると先輩から目を付けられそうだなぁ、と山本は考える。

それは避けてぇなぁと山本はサボった未来をシミュレーションする。


「頼む山本!オレに彼女が出来るようにしてくれ!」

「いや、無理だって……」

「そこをなんとかっ!」

「だから無理だってばぁ!」

「なぁ、山本!オレとお前の仲だろっ!?」

「今、初対面じゃん!義理すらねーよ!頼むから部活に行かせてくれぇ!ボールは友達なんだよぉ!」


こうして、山本は折れてサッカー部をサボることになったのであった……。

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― 新着の感想 ―
[一言] そろそろシリーズ化してもいいかもね。 「山本の苦難」とか。
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