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10、深森美鈴は遊びたい

放課後、美鈴に誘われた通りに校門で深森姉妹を待つことになる。

美鈴が教室で準備をしている間、俺は先に教室を抜け出したので出遅れたなんてことはないと思う。

早く深森姉妹のどっちか来ないかなと考えつつスマホでも取りだそうとした時であった。


「やぁ、秀頼じゃないか。こんにちは」

「こんにちは、美月」


帰宅する格好の美月に遭遇した。

きっちりと長めのスカートを履いているのが彼女の真面目さが伝わってくる。


「こんなところで立ち止まって待ち合わせか?」

「え?ま、待ち合わせといえば待ち合わせには違いないんだが……」

「どうした?歯切れが悪くないか?」


美月も待ち合わせしているメンバーの1人だが、こうも不思議に疑問を投げ掛けると不安が過る。

朝の誘いは美鈴の嘘で、俺に恥をかかせようとするトラップなんじゃないかと不安になってきた。


「あっ!お姉様見つけました!秀頼様もご一緒ですね!」


朝の美鈴に不安になっているとようやく彼女のご到着であった。

「来たか美鈴」「はい!」と姉妹で会話している。

どうやら姉妹で待ち合わせをしていたのは本当であったようだ。

原作だと殺意を向けあった姉妹が仲良くしていて、なんか込み上げるものがあるな……。

もしかしたら彼女らにとっては美月エンドより、誰ルートを進んでいるのかもよくわからない宙ぶらりんな現実の方が幸せな結末になっているのかもしれない。


「じゃあお姉様も秀頼様も行きますか」

「待て、秀頼はお前が呼んだのか?」

「だって美鈴は秀頼様とも一緒に遊びたかったんですもの」

「うわっ……」


美鈴が左腕に抱き付いてくる。

絵美ともまた違う腕の感触に心臓の鼓動が早くなる。


「ここじゃあ人目に付きやすいです。移動しましょう」

「あ、あぁ……」


美鈴の胸の丸みがハッキリとわかるくらいに腕にくっついている。

大きい胸ってこんな風なのか……。


「ま、待て!?美鈴!?」

「美月……」


止めてくれ、美月!

お前の妹が……、俺に抱き付いてきて心臓を爆発させて殺そうとしてくるんだ!


「わ、わたくしもやってみたい」

「えっ!?」


美月からは右腕を抱き付かれる。

美鈴ともまた微妙に違う甘い匂いが鼻をくすぐる。

美鈴よりは小さいがそれでも彼女も胸が当たるくらいに右腕に密接している。


「ほ、ほぅ……。こんな感じか。秀頼、お前の腕は見た目よりずっしりしているな」

「そ、そう?」

「秀頼様が必死に努力している証なのが美鈴に伝わってきますわ」

「あ、ありがとう」


自分の努力が褒められると嬉しくなるのは仕方ない。

それを女性2人からというと嬉しさは倍どころではなく、10倍増しくらいに嬉しい。

美人姉妹が両腕に組んでいる光景が、自分のこととは思えなくて額から変な汗が出てくる。


「そ、それでどこ行くの美鈴?」

「どうしますかお姉様?」

「どこでも良いぞ秀頼」

「なんか1周したんだが……」


目的なく歩きながら、どこに行くのかを聞き出そうとしたがリレーが始まり、俺にまたバトンが渡された。


「いつも2人でならどこ行くの?」

「そうですね。……服見たりスタヴァ行ったりしてますわ」

「でも秀頼は服見たりとかは退屈だろう。スタヴァもよく入り浸っているみたいだしな。普段行かないようなところに行ってみたい」

「別にスタヴァでも良いんだけど……。美月たちが普段行かないようなところか……」


俺の普段のプライベート時間で何やってたのか思い出してみる。

タケルとマスターのところに遊んだり、達裄さんと修行と称して森とか行ったり、円と相談するために河原に行ったり……。

深森姉妹と行くのを考えると全部微妙だ……。

引き出しの無さに困る……。


「ならスタヴァにしますか?」

「いや、待て。わたくし、行ってみたいところを思い出した」


俺と美鈴で消去法でスタヴァに決まりかけていると美月から待ったを掛けられる。

「お姉様が行ってみたいところですか?」と美鈴が聞き返すと「ああ」と美月が頷いた。


「秀頼は行ったことあると思うのだが」


美月が真顔で俺に顔を近付ける。

美鈴も興味津々で美月に顔を近付ける。

ただ、その仮定で抱き付かれている俺から見て美鈴の顔もかなり近い。

一体俺は通行人になんて思われているのだろう……。


「ねぇ、ママ!あの3人何やってんの?」


あ……。

通行人の親子である5歳くらいの娘から俺たちを指して発言していることに気付く。

これお母さんから「しっ!見てはいけません」ってなる流れじゃん……。

リアルでこの初めて見たわと思いながらその親子へ視線を送ると娘と目があった。


「キモッ!槍朕がこっち見んな!」

「!?」


ゴミを見る目でキッズから暴言を受けた。


「こらっ、ユカ!どっからそんな言葉覚えてくるのっ!」

「だってママもパパに槍朕ってよく言うじゃん!だから真似した!」

「おほほ……。ごめんなさいね!」


お母さんが俺に慌てて謝りながらそそくさと逃げるように角へ曲がり、俺の視界から消えていった。

今のキッズは恐ろしい……。

そういえば絵美もキッズ時代からやたら発言が大人びていた気がする……。

ユカちゃんに槍朕呼ばわりされて心で泣いていた。


「わたくしはゲームセンターに行きたいぞ」

「ゲームセンター!確かに美鈴も行ったことありませんでしたね!」

「この辺にゲームセンターあったよな。今から行ってみよう」


美月と美鈴はユカちゃん親子に気付かなかったらしく行き先をゲーセンに決めていた。

もうなんでも良い……。

ゲーセンで悲しみの連鎖を断ち切ってストレス発散しようと決めるのであった……。

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[良い点] もはや進化キャンセルはできない、槍朕になるのだ! タケル・白田「「やめろー!そんなことしちゃいけない!」」 [気になる点] ( ゜∀゜)o彡゜きょぬう!きょぬう! [一言] イーブンにする…
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