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30、『悲しみの連鎖』ゲームワールド

ギフト『ゲームワールド』。

ホワイト博士がそう言うと、あたしの目の前にパネルが現れる。

電光掲示板みたいにも見えるものが突然宙に浮き、空いた口が塞がらない。


「私はテレビゲームが子供の時から好きでね。ギャルゲー、RPG、シミュレーション、落ちゲー。まぁ、なんでもやるわけだが……」


博士がそうやって自分の趣味について口を開くと、あたしの近くにあるパネルに目を向ける。


「君はゲームなんかやったことがないだろうから説明するけど、これはメッセージウインドウと呼ばれるものだ。ふふっ、今回の世界観はRPGにしよう」


ニヤニヤとパネル……、ではなくメッセージウインドウに目を向けている。


「【プレイヤーネーム:トゥリス。毒状態。30分後に死亡】」

「ガッ……」

「【クエスト発動。クリア条件:カカシに拷問し、30分以内にバッツからのメッセージを聞き出す】」

「うっ……」


突然心臓が激しく鼓動が鳴る。

同時にあたしの口から血が吐かれる。

経験したことのない出血に、頭が真っ白になる。


「ほら、メッセージウインドウを見たまえ。君はこのカカシへの拷問を成功させないと30分後、本当に死ぬことになる」

「…………っ!?」

「ふふっ、30分後に死ぬか。カカシを拷問してメッセージを聞き出すか」


ホワイト博士がナイフを指しながらあたしに宣言する。


「トゥリス。君は自分と他人であるカカシのどちらが大事だい?大丈夫、命さえあればディオが治してくれるだろ。なんたって、拷問は命を奪うことが目的じゃないんだから殺さないよね?」

「うわああああああ!ああああ!」


あたしは1581番の手の甲にナイフを突き刺す。

「いっでぇぇ!」と、いつも強気な彼からは想像も付かないほどに情けない声が出た。


「や、やめろよ1605番……?おま、お前にオレ様は後で仕返し確定だぞ……?」

「言え!バッツ教官に何を言われた!」


さっきより強い力で、勢いよくナイフを手の甲に刺す。

同じ位置に2度、3度と抉る。


「いわ……、言わねぇ」

「言ええええ!今すぐに言えええええええ!」


残り時間25分。

メッセージウインドウを視界に入れると手を止めてしまいそうになり、あたしは道具を持ち変える。


「指を潰すッッ!」


ペンチで右の親指、人差し指と順番に潰していく。

吐け、吐かないとお前が死ぬ!

そう彼に言い聞かせて、拷問をはじめる。


潰し、刺し、貫き、叩き、刺し……。


貫き、刺し、潰し、潰し、潰し……。


1581番を殺さないようにありとあらゆる手を尽くす。

死にたくない、死にたくない……。

傷を付けているあたしの方が死にそうになりながら考えられる拷問を繰り広げた……。
















「あした……、の天気、雨……。これがメッセージです」


気付けばすっかり怯え、あたしに命を取られないように泣いている1581番が涙を流していた。

残り14分と書かれていたウインドウメッセージが、バッツ教官のメッセージを伝えたと同時に消失した。

「ブラボー、ブラボー」と博士が楽しそうに手を叩く。


「見たまえ、あんなに君をバカにしていた男が今やあの状態だ」

「はぁ……、はぁ……、はぁ……」

「もし口を割らなかったらカカシ落ちを取り下げるとバッツに言われたのだろう。不可能なのにな、そんなこと」


「ほら、こいつボロ雑巾みたいだろ」と博士が指をさす。

そんなのどうでも良い。

ただ、こんな酷いことをあたしがやったことだと指摘され、混乱状態になる。



あたしはなんてことを……。



「気にやむことはない。君は脅されて、私の指示で、カカシを壊そうとした。ただ、それだけだよ」


博士はそうやって優しい言葉をかけ、拘束されている1581番を台車ごと移動させた。

部屋にはあたし1人だけが取り残された。


「…………げほっ」


口から吐瀉物が出る。

吐血して、吐いてと今日は散々な1日だ。


虫みたいに指を潰した。

野菜みたいに皮膚を切った。

モチのように腕を叩いた。


飛び散った血がまだ顔で熱い……。

焼けるほどに熱かった紋章の呪いより、よっぽど熱くて苦しい呪いと錯覚する。


「助けて……。お父さん……、おかあさん……。あたしを……、助けて……」


そのまま子供みたいに泣き崩れた……。













─────







「今日の夜、予告通り『白い部屋』を殲滅するっ!」


レジスタンスを束ねる男・十文字タケルは宣言した。

その言葉に周りから『おぉー!』と声が上がった。

高い士気のグループにタケルと美月が無言で頷きあった。


「全滅でも、壊滅でもない!殲滅させるんだっ!」


全滅という言葉は誤解されやすいが、全部を滅ぼしたという意味にはならない。

正確には3割程度の被害を全滅と呼ぶ。

そして、壊滅は5割程度。

その上に殲滅とくる。


「そして、捕らわれになっている子供たちも救出するぞぉ!」


タケルが宣言すると、周りも呼応するように一斉に手を挙げる。

レジスタンスのみんながタケルを信頼していた。


「…………秀頼」


タケルは目を瞑り、失くなった友の姿を思い浮かべる。

本当なら、自分の隣に置きたかった人物は誰も変わりにはならなかった。

秀頼は秀頼であり、タケルの1番の親友は彼しか考えられなかった。

いつの間にか、秀頼と出会ってから死ぬまでよりも、秀頼が死んでから現在までの方が長くなってしまった。

(俺の人生、秀頼と絡んだ時間が圧倒的に少ないのか……)とタケルは気付いてしまい酷く落ち込む。

こんなに秀頼のことを考えてしまうのも、今日『白い部屋』と一戦を交えることになるからだろう。

長い時間が経った……と、アリアの形見である銀色のペンダントを強く握る。


「タケル……、本当に今日やるんだな」


美月が目の前に本気かどうかを真剣な顔をして尋ねてくる。

当然だと言わんばかりに「あぁ」と頷く。





「俺は、ただ突き進むだけさ」





反撃の時間が始まる──。

『俺は、ただ突き進むだけさ』

タケルのセリフで使い道がなかったモノでしたが、ようやく披露出来ました。


第2章 禁断の恋愛

第18部分登場人物紹介2








トゥリスに告げられる真実。

そして、彼女はタケルと邂逅する……。


レジスタンスVS『白い部屋』

──開幕!

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