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29、『悲しみの連鎖』拷問

1605番からトゥリスに改名した次の日。

移動した施設にて博士の授業が行われていた。

生徒はあたし1人。

番人ことディオは近くに付き添いのようにしてあたしの近くに暇そうにして、口も開かずに佇んでいた。


「トゥリス、君には本日より拷問の勉強と修業をしてもらう」

「ごう、もん……?」


ごうもんってなんだ?

聞き慣れない言葉に、漢字すら頭に浮かばない。

意味もわからず頭を捻らせていたが「うー……」と声が漏れただけで答えが見付からなかった。

そんなあたしを見て、ついさっきまで暇そうであった番人はクスクスと笑っていて、ついムカッとした怒りの感情が湧き出る。


「拷問とはこう書く」とホワイトボードに漢字を2つ並べられる。

よくわかんねー、と漢字を見ても何もピンとこない。


「要するに、相手が秘密にしていることを無理矢理聞き出すのに手っ取り早い手段だ。君は今後、ギフト狩りと敵対する未来もあるのだからな。それに、人体とは神秘的なものだ」

「人体……。神秘的……」


なんかよくわからないまま話が勝手に進んでいるが『人体とは神秘的なもの』という言葉に心が惹かれる。


「質問をしたら爪を剥ぐ」

「動物や爬虫類、虫を使う拷問は邪道。道具と力をフル活用して拷問をしろ」

「拷問においての1番のNGは相手を殺してしまうこと」


拷問のいろはを博士が解説していく。

今までのつまんねー計算や漢字の勉強。

理不尽な暴力だけの修業。

それらより、何倍も楽しく拷問の授業に取り掛かる。

博士が必要と言うなら必要なんだ!と納得する。




それから数日間拷問の勉強をしていたある日、今日は何故か薄暗い部屋に集められた。

どことなく牢屋を思い出され、トラウマが刺激される。

そんな部屋に気を取られていると、博士が誰かを椅子に拘束した状態で台車に乗せて連れて来た。

拘束されていた相手は見覚えがあって、あたしが嫌いな男だった。


「せ、1581番……」

「お前っ……1605番……」


顔に紋章が残った1581番が怯えながらあたしを見ていた。

この扱いであたしは察した。

これがカカシ落ちなんだって……。


「彼女は既に1605番ではない。トゥリス、だ。君のような出来損ないとは違う」

「ふ、ふざけんな!オレ様がカカシとか、ありえねぇえだろ……」

「あり得ますよ。事実ですから」


1581番なんか眼中にないとばかりに軽くあしらう博士。

あんなに肉付きの良かった彼は衰弱しきったように、顔も身体も小さく見えた。


「トゥリス。このカカシにはバッツよりメッセージを与えられた。それを拷問で聞き出すのが君の使命だ」

「…………え?」


拷問って座学の勉強じゃないの?

ナイフで脅し、ペンチで爪を剥がし……みたいなのはあくまで知識だけだよね?


その考えを嘲笑うようにして、あたしの前に鈍器や道具が並べられる。

釘、果ては傷口に塗りたくると習った唐辛子まで用意される。


「トゥリス、これを使ってカカシを拷問しろ」

「………………」


博士があたしにナイフを握らせる。

何これ、あたしは何をしなくちゃいけないの……?


「む、む、無理ですよ……。え?だって、これで刺せば血がドバーって……。目も潰せるって……。博士が言いましたよね……?あた、あたし……。拷問をするなんて……」

「このカカシがギフト狩りだったとしても出来ないと?その甘えでトゥリスが死ぬことになっても?」

「そ、それは……」


ガチガチと震えが止まらない。

持たされたナイフはやたら重いのに、手に接着剤でも塗られてあるかのように離れない……。


「ギフト天才研究家、明智秀頼はメンタルが強い者ほどギフトを自由自在に扱いこなせると断言している。さぁ、あんなに拷問の授業を楽しそうに受けていたではないか」

「…………」


明智、明智、明智って!

誰なんだよ、明智秀頼って……。

顔も知らない男だが、あたしはこの男の名前に殺意が沸くほどに嫌悪感が増す。

博士やバッツ教官が尊敬する明智秀頼なんていう奴は多分ろくでなしだ。


「出来、……ません……」

「そうか。ならば、私が無理矢理君にさせるだけだ」

「え……?」


あたしに無理矢理拷問させる……?

そんなのどうやって?と、口を開こうとした時であった。




はじめて見る……、博士のギフト。

博士どころかギフトそのものがはじめてだ……。




「ギフト発動。『ゲームワールド』」


躊躇いなく発せられたギフト発動の狼煙。

あたしは身を持ってギフトの力を思い知らされることになる。

次回、『白い部屋』ぶっ壊す狼煙が上がる!

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[気になる点] 密室ギフトさんの上位互換っぽそう 美月世界ギフトとは…うーん、一長一短?
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